掴みかけていた手応えを、ようやく形で示せた。
11月19日におこなわれた関西大学リーグの第6節で、摂南大は立命館大を42-38で破る。
前節まで大学選手権争いを続けていた相手を下し、関大戦(第5節)での今季初勝利に続く2勝目を手にした。
リードが6度も入れ替わる、目まぐるしい展開を制した。モールの核となり、接点での強さで光ったLO徳永リオ吉平は喜ぶ。
「やっと勝てた、という気持ちです。今シーズンは勝ち切れない試合が多かった。勝ち切ることがどれだけ難しいかを感じていた中で、80分間最後まで諦めずにできた試合でした」
今季の摂南大は開幕戦の近大戦から力の片鱗を見せていた。同試合では後半途中までリードを奪い(19-33)、第3節の同志社大戦(12-25)、第4節の天理大戦(27-47/前半リード、後半15分には一時逆転)でも競った試合を展開できた。
手応えを感じていただけに、勝ち星を掴めないもどかしさに悩み続けた。
特に同志社大戦は「勝てる日だと思って臨んだ」試合も、勝利には手が届かなかった。試合後、徳永の目には涙が浮かんでいた。
「勝てると思っていても勝てない。どれだけやったら勝てるのかと。今までやってきたことを少し疑いました」
勝利経験の乏しさは、3季目の瀬川智広監督も就任当初から繰り返し話していた課題だった。
徳永は言う。
「天理や京産は勝つために何が必要かを分かってるけど、僕らはこれまで勝ってないのでそれが分からない。どれだけ頑張れば勝てるのかも分からないので、とにかく頑張るしかないんです」
いわば出口の見えないトンネルを走り続けていたわけだが、接戦を繰り返して分かったこともあった。立命大戦ではそれが活きる。
「相手(ペース)の時間が来た時に、チームがバラバラになることが多かったけど、立命戦では15人でまとまろうと声をかけました。でないと勝てる試合も勝てないと。まとまれたからこそ、逆転されても摂南の流れが来ると信じてましたし、そこでトライを取り切ることもできたんだと思います」
その試合では背番号5をつけたヴィエティ・トゥポウが、後半39分の決勝トライ を含む4トライの大活躍だった。徳永は「本当に頑張ってくれた」と仲間を称えるも、同じLOとしては「自分は今シーズン、1トライもしてないので、悔しい気持ちも半分あります」。
「今年はフィールドプレーで思うようにいかないことが多いです。自分が想像していた4回生のパフォーマンスではない。もっと存在感があるプレイヤーになりたいと思っています」
名前の「リオ吉平」の「リオ」は、ブラジルの都市、リオデジャネイロに由来する。「お父さんがちょっと変わった名前にしたいということで、リオをつけていただきました。リオの人たちは血気盛んで、ハングリー精神がある。そういう熱い人間になって欲しいと。でも本人はリオに行ったことがないんですけどね」と笑う。
東住吉中入学後に楕円球と出会った。「なんとなく」ラグビー部に入部した。
「部活動紹介で当時のキャプテンが、ラグビーは運動神経が悪くてもできると話していたので。自分にもできるかなと」
高校は公立と私立を併願で受験したが、無念にも希望した公立校に落ちてしまい、私立の上宮高校に進学する。しかし、それが競技を続ける理由になった。
「なにか一つでも私立に行ってよかったと思えるようにと思って続けました」
花園予選では1、2回戦で負けてしまう「弱小校」だったけれど、3年時は副将にもなり、真剣に取り組んできた。
その努力は実を結び、摂南大の練習会参加時に、伊藤太心 元コーチの目に留まる。ここで声をかけられなければ引退するつもりだった。
入学直後こそ、強豪校出身者に「ちょっとビビった」けれど、「同じ摂南大学に入ったのだから、出身校はあまり関係ない」と次第に思えるようになった。
入学した時は184㌢、78㌔とやや華奢な体躯も、2年時には95㌔まで増量(現在は100㌔)。あとは「試合中にどれだけアピールできるかだと思ってました」。
2年時から出場機会を掴みはじめ、3年時には先発入り。最終学年の今季はFWリーダーを務めるまでになった。
12月3日には関西リーグの最終節を迎える。相手は選手権出場をかける関西学院大だ。
摂南大は現在7位で勝ち点8。自力で入替戦を回避することはできないが、6位の立命大は勝ち点9、5位の同志社大は同11と射程圏内にいる。
「(関学戦を)最後の試合にしたいと思います。絶対に勝ちたい。最後は根性比べだと思っているので、そこでは負けたくないです」と力を込める。
今季の摂南大のスローガンは「ALL OUT」。徳永は最後まで力を出し切ることを誓った。