ワールドクラスへの道を歩む。
日本代表として秋のテストマッチ全3戦に先発(4番)、活躍したワーナー・ディアンズが、11月29日に開かれた東芝ブレイブルーパス東京の取材機会に登場した。
12月17日に開幕するリーグワンでのフル回転を宣言した。
201センチの巨漢は、まだ20歳。2021年3月に流通経済大学付属柏高校を卒業した若者だ。
リーグワン2022開幕前の昨年11月の欧州遠征、ポルトガル戦への途中出場で代表初キャップを獲得した。
2022年に入ると、ウルグアイ戦、フランス戦との2テストマッチに出場し、秋はオールブラックス、イングランド、フランスと戦う。
獲得キャップ数は7になった。
昨季のリーグワンには、プレーオフも含めて15戦に出場した(チームが戦ったのは全17戦)。
すべてが先発出場。ピッチに立った時間は1037分に達した。
9月からの合宿、10月の豪州A代表との3連戦(3戦出場中2先発)も含め、長く、ハードな代表活動を終えたばかりだというのに、「(ブレイブルーパスでも)全試合出て、できるだけ多くの時間出場したい」と意欲を口にする。
もっと強くなって、来年9月開幕のワールドカップ(以下、W杯)に出場したい。
自分自身、成長を実感している。リーグワンで実戦を重ね、代表合宿でも鍛えられた。結果、インターナショナルの舞台で「相手に当たってもケガをしないし、ダメージはあっても、リカバリーがはやくなった」と話す。
「それが自信になりました。もっとぶつかれると思っています。世界のトップクラスとの試合は、W杯に向け、すごくいい経験になりました」
空中戦、ボールキャリーの両面で輝きを放った。
オールブラックス戦ではキックチャージからボールを手にして独走トライ。イングランド戦ではブレイクダウンからボールを持ち出して前進し、SH齋藤直人のトライを呼んだ。
「ラインアウトやキックオフボールの競り合いで自信を持てました。ボールキャリーも、チームのアタックシェイプの中で動いたものです。チームにモメンタムを与えるプレーをするのが自分に求められていること」と任務を果たした。
地道なハードワークの先に、ファンを沸かせるプレーがある。
「代表FWの仕事をすることに集中した上で、ボールがきたら前に出る」を実践する。
オールブラックス戦でチーム上位だったタックル数は、イングランド戦ではトップになった。ワークレートを上げることを念頭に練習に集中した成果だ。本人は、「やってきたことを出せたと思う。もっとできると思う」と体感を口にする。
世界トップクラスといっても、それぞれに色があるから、対戦を重ねるたびに経験の幅も広くなる。
イングランドのコンタクトは、オールブラックスより強かった。そして、白いジャージーは激しくプレッシャーをかけてきた。
「一つひとつのタックルがいちばん強かったのはフランスでした。でも、イングランドほどプレッシャーをかけてくることはなかった」
世界のラグビーは進化と変化を繰り返している。
「イングランドはラインスピードを上げて(ディフェンスして)きた。以前のヨーロッパのラグビーは、もっとゆっくりしたスピードで体を当てていたと思いますが、変化してきています」
そんな世界のラグビーの潮流の中でも、ジャパンのスタイルは通じると感じた瞬間はあった。
「良いボールキャリーと、ブレイクダウンへのはやい寄りでテンポを上げられたら、自分たちのラグビーをやれた。そのスタイルは間違っていない。そう信じてプレーできました」
大事なのは、強いプレッシャー下でいかに精度高く、自分たちのプレーを遂行するか。試合をコントロールし、ランとキックをバランスよく使い分けると道が拓く。
強いプレッシャーを受け続けている中で、どう判断をするか。チームとしてW杯までに高める必要がある。
「オールブラックス戦は、バランスよくプレーできたからいい試合をやれた。フランス戦は自分たちのミスからトライを取られたけど、こちらからプレッシャーをかけるとうまく戦えた」
一人ひとりがもっと強くなることが、チーム力を高めることに直結する。
ケガなく試合に出場し続けられる強靭な体躯について、S&Cコーチを務めている父・グラントさんの存在が大きいと話す。
「12歳の頃から体作り、筋トレなどに取り組み、ベースとして強い体を持っているので自信はあります」
確かな体幹に加え、試合前の準備、試合後のクールダウンも怠らない。肩の可動域を広げたり、膝のトレーニング、そしてリカバリー。父からの教えを活かしてコンディショニングに励む。
この日のように、ラグビーから離れればメガネをかけている。訥々と話す姿は、試合中の豪快な姿とは程遠い。
憧れの人、オールブラックスのLOブロディー・レタリックも普段はメガネで静かなタイプ。
現在7キャップの自分に対し、レタリックはちょうど100キャップ。テストマッチデビューはワーナーが19歳で、あちらは21歳のときだった。
追いつくことは、きっと不可能ではない。