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東大、対抗戦Bの3位に。初心者が多くてもやれる。「1か月後の定期戦まで、もっと強くなる」

2022.11.28

相手ボールを奪取して盛り上がる東大。(撮影/矢野寿明)

チームを牽引するFB國枝健主将。(撮影/矢野寿明)



 骨太だった。
 東大が関東大学対抗戦Bでの2022年シーズンを3位で終えた。11月26日( AGFフィールド)におこなわれた学習院大学戦に21-12と勝ち、4勝3敗と勝ち越した。

 調布・AGFフィールドでおこなわれた試合は、スイカジャージーの力強さが序盤から感じられた。
 スクラムで押し込む。ブレイクダウンで前へ出る。それぞれのプレーが力強かった。

 先制は前半4分だった。東大は好ディフェンスで相手の反則を誘うと、PKで前進。ラインアウトからのモールを押し込んでHO安富悠佑がインゴールに入った。
 17分には追加点を挙げる。相手ゴール前でFWがボールを前に運び、LO岩下大斗がトライ。WTB大山修蔵のゴールキックも正確で、14-0とリードした。

 32分、反則から学習院大にチャンスを与えてCTB田中直音にトライを返される(FB荻田直弥)。14-7で後半を迎えた東大は、なかなか追加点を奪えなかった。
 運動量を上げる相手FW、積極的に仕掛けてくるBKの抵抗に合う時間帯もあった。

 しかし後半20分、ふたたびモールを押し切ってトライを奪う(NO8松本暢広)と、大山のキックも決まって21-7。
 学習院大の反撃を試合終了間際の1トライだけに抑え、21-12のファイナルスコアを刻んだ。

 東大FBの國枝健主将は、「最終戦でベストゲームをしようと臨みましたが、イージーミスが出た。スクラム、モールで圧倒しながら点を取り切れない課題が修正できなかった」と振り返った。

 前年は同じ4勝3敗と勝ち越しながら4位。一歩前進した結果を手にした。
 今季は「例年上位に入る成蹊、明学に勝って全勝する」ことを目標にしていた。そのターゲットには届かなかったものの、チーム力の上昇を示すことができたシーズンだった。

 神戸製鋼の黄金時代に主将を務めていた大西一平ヘッドコーチ(以下、HC)が指導に当たるようになって3年目。
 チームはトップレベルを知る人を得て、肉体改造を進めた。結果、体をぶつけ合うことに自信を持つ集団に成長した。

 大西HCは、「フィジカル的、ラグビー的なボディー、動き、強さに関しては、丁寧に、丹念にやって(積み重ねて)いくしかない。それをできる文化が東大にできてきた」と話す。
「フィジカルなゲーム、タフなラグビーができるようになりましたが、(この日の試合のように)なかなか点数に結びつかない」と改善点はあるものの、選手たちの意欲の高まりを評価する。

 理解力の高い選手たちが揃っている。同HCは、もっと賢く戦えるはずと言う。
「その上で、もうひとつ上のフィジカルを手にすれば、Bリーグの1位、2位になれる。今シーズンの成蹊戦、明学戦も負けはしましたが、試合内容は戦えているシーンがいくつもあった。6割が初心者のチームでもやれることを証明したいですね」

 國枝主将自身も大学でラグビーを始めた。
 中学・高校時代(筑波大附属駒場中・高)はサッカー部。大学では「サッカー以外で熱中できるスポーツをやりたい」と志し、「雰囲気に惹かれ、タックルが格好良かった」とラグビー部入部を決めた。

 この日の先発中4人、23人中8人が大学でラグビーを始めた選手たちだった。主将は入学時から体重を20キロ増やした。
 後半16分からピッチに立ったPR河内拓仁は、高校時代(東海高校)は帰宅部。この部で体重を30キロ以上増やし(56キロ→93キロ)、強力なスクラムを組むようになった。

 一人ひとりの成長は確実にチームの上昇に直結している。
 國枝主将が1年生のときに2勝5敗で6位だったチームは、大西HCを迎えた後に成績を伸ばした。コロナ禍初年度だった2年生時こそ変則シーズンの末に6位となるも、昨季が4位、今季が3位だ。

「大西HCは、経験者も少なく、サイズも小さいチームは、フィジカルとコンタクトの強化は避けては通れない、と。(弱点を修正するだけでなく)そこを強みにしていこうと言われました。強化に取り組み、特に今年は春からサイズアップを図り、動ける体にもしました。たくさん試合もできたので、ゲームプランをみんなで理解することも、ディフェンスの規律を高めることも進められたと思います」(國枝主将)
 リーグの中でいちばんきつい練習をした自負がある。

 対抗戦Bの日程こそ終了したものの、定期戦2試合を残している。
 12月18日に名古屋大(名古屋大G)と戦い、12月24日の京大戦は静岡・エコパスタジアムが舞台だ。
「伸びしろがあるチーム。これから1か月、もっと強くなれる」とキャプテンの言葉に力が入る。

 ラグビーを始めて4年目。このスポーツの理解が深まるとともに、魅力を深く感じている。
「思い切りコンタクトできる。そこがおもしろい。力がみなぎる。相手を倒した時の快感も好きです。チームがひとつにならないと勝てない難しさもありますが、普段から一緒にハードワークを重ねていると、試合中に仲間の存在が頼もしくて、言葉がなくても、絆を感じる。そういうところが気に入っています」
 学生生活の最後の最後まで、仲間との時間を楽しむ。

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