失点してもなお、鍛錬の跡をにじませた。
東京サントリーサンゴリアスは11月26日、本拠地と同じ府中市にある敵地で東芝ブレイブルーパス東京と練習試合をしていた。
7点を先取して迎えた前半15分頃。グラウンド中盤で対するFBの松永拓朗のラインブレイクと好パスを許すも、攻め込まれた自陣22メートル線周辺の左端へ黄色い大群が一気に圧をかける。
相手のミスを誘い、自軍スクラムを得た。
その後もしばらく自陣の深い位置で守らされるが、なかなかトライを許さない。
走者を仕留め、時に押し戻し、接点では向こうの走者と援護役との間に背中や腕を滑り込ませる。球出しを遅らせる。大外への展開にも網を張って耐える。
最後はブレイブルーパスのSHの小川高廣共同主将による得意のサイドアタックなどで7-7となったが、24分、攻守逆転からのキックを交えた攻めで12-7と勝ち越した。
再び2点ビハインドを背負った前半36分頃には、敵陣22メートル線付近での攻めからわずかな穴を突く。
WTBの尾崎晟也が右の狭い区画へ駆け込み、パスをもらって前進。勢いづいたサンゴリアスは、間もなく19-14と再びリードを奪った。
競技の根幹をなすぶつかり合いでは、ブレイブルーパスも好感触を得ていた。同部のFLの藤田貴大ゲーム主将はこうだ。
「僕たちも春先から強度の高いトレーニングをしていたので、(サンゴリアスに対して)『すげぇ強い、無理だ!』とは感じなかった」
しかしサンゴリアスは、ボールを持たぬ人の勤勉さ、反応の速さで際立っていた。後半も一貫性を保ち、CTBのイザヤ・プニヴァイ、トニー・アロフィポのラインブレイク、対するブレイブルーパスの反則過多と相まって後半21分までに40-21と差をつける。
LOで先発のトム・サベッジは、攻めては先制点につながったモールをドライブ。守っては相手を押し戻すタックルで魅した。
そのサベッジと入れ替わる形で入ったツイ ヘンドリックは、ラックの後方からよく突進した。
新人で左PRの小林賢太はカウンターラック、SH周辺でユニットを作っての攻めで存在感を示した。
45-28という最終スコアを生んだハードワークについて、田中澄憲新監督は言った。
「小さなディテールを大事にして勝ってきたチームなので。人に依存しないのがサンゴリアスのよさ。そういうチームを作るというか、取り戻す過程なんですよね、いまは」
今季から指揮官が代わった。
契約期間内と見られていたミルトン・ヘイグ前監督から、明大監督を経て昨年からチームのゼネラルマネージャーとなっていた現指揮官にバトンタッチした。
一昨季の旧トップリーグ最終年度、昨季のリーグワン元年ともに準優勝。いずれも決勝で埼玉パナソニックワイルドナイツに屈した。トップリーグ優勝5回と頂点に立つのを至上命題とするクラブは、決断すべき時期に決断したようにも映った。
就任の経緯について、母体企業の社員でもある田中監督は「やれ、と言われたから。サラリーマンですから」。ただ、やるからには真剣だ。
「覚悟を決めないと、選手に失礼ですし」
現役生活の最後を飾った2010年度は、いまのクラブにある「アグレッシブ・アタッキングラグビー」という哲学を生み出したエディー・ジョーンズ元監督(現イングランド代表ヘッドコーチ)の下でプレーしていた。
引退後はさまざまな立場のスタッフを任され、採用としては大学選手権で2017年度まで9連覇の帝京大から、V5、V6時代の主将だった中村亮土、流大のリクルートに携わった。
入社6年目でFLの飯野晃司は、現体制が醸す緊張感に「(練習は)きついですけど、やりやすい」と喜ぶ。
「自分のなかでは、(いまのチームは)ひとつひとつの(プレーの)質にこだわっているように感じます」
昨季、2015年度以来の4強入りを果たしたブレイブルーパスでは、昨季LOとして大ブレイクしたジェイコブ・ピアスがNO8として奮闘。途中出場した右PRのタウファ・ラトゥが突破力をアピールし、途中からSOに入った森勇登も小気味よい走りとキックを披露した。
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチは、「規律をよくしないといけない。そしてチャンスは最後まで決めきる」と反省しながら、前向きでもあった。
「開幕してから(の動き)が重要。そのための準備としてはよかった。シンプルなところのプレーをしっかりすれば、皆さんにいいラグビーがお見せできる」
勝者、敗者でそれぞれ9、3名の日本代表選手、それとは別に一部の海外出身者を欠くなか、開幕から約3週間前の現在地を再確認できた。新シーズンは12月17日以降、各地でスタートする。