活き活きとした口ぶりだ。ラグビー日本代表の坂手淳史主将は、11月20日のフランス代表戦を翌日に控え、会場のスタジアム・ド・トゥールーズで言った。
「やることを100パーセントやる準備はできた。あとは試合をやるだけです」
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12日にはロンドン・トゥイッケナムスタジアムで、来秋のワールドカップ・フランス大会でもぶつかるイングランド代表に13-52で敗れた。相手防御の圧力で組織的な攻めをかき乱された。
「自分たちが、きれいにラグビーをしてしまった。それで理想の形になっていなかった。僕たちのラグビーにはもっとスピードがないといけないし、タフに行かないといけなかった。(攻めの)回数を重ねるなかで、キックとランのバランスを考えていかないといけなかった」
最前列の真ん中で組むスクラムにおいても、しばらく後手に回った。具智元の入る右側から崩れた序盤の1本で、日本代表がわざと塊を落として危険を招いたと判定された。ペナルティキックを与えた。以後、軌道修正が難しくなった。
大人数でぶつかり合うスクラムが崩壊するわけは、はた目からはわかりづらい。
イングランド代表戦の日本代表には、自分たちが起因となって崩した感覚はなかったという。後列に入っていた元主将のリーチ マイケルは証言する。
「まだ、イメージが…。日本のスクラムが弱いと思われているのが、よくない。それで、相手に有利に見られて」。レフリーには『相手(の状況)を見ろ』って伝えるようにしています」
その他にもスクラムでは、相手との距離感、互いにつかみ合うタイミングの調整と、細かい駆け引きが生じる。それを第三者の目で判定するレフリーへの印象をよりよくすることもまた、各チームには求められる。
坂手は日本代表で、主将とスクラムの舵取り役を同時にこなしている。次のフランス代表でのスクラムについて話す流れで、レフリーとの駆け引きについて言及する。
「レフリーにスクラムが落ちたところ(どちらに笛を吹くか)の判断を任せないよう、まず落とさない(自立し続ける)ようにしていきたいです。落ちたところの(悪い印象を与えない)見せ方などについても多々、勉強することはあるのですが、僕たちは落ちないスクラムを組む。レフリーとのコミュニケーションは、テストマッチですごく大事になる。(レフリーには英語のわかる)リーチさんと一緒に話しているんですけど、ここも改善していく。どういった声掛けをしていくか、どういうタイミングで話していくかというところは、2人で話しています。(代表主将になる前は)外国人出身の方とコミュニケーションを取る機会がなかったのですが、シンプルな英語で、シンプルな言葉で、とは思って(意識して)います。相手のしてくること、何か現象が起きた時に、言う。そういうことを、リーチさんと一緒にやっていきたいです」
身長180センチ、体重104キロの29歳。これまで在籍してきた京都成章高、帝京大、現所属先の埼玉パナソニックワイルドナイツでも主将を任され、今年から日本代表でも船頭役を担う。
7月の対フランス代表・2連戦は全敗し、10月の対オーストラリアA・3連戦も1勝2敗と負け越した。29日にはワールドカップ優勝3回のニュージーランド代表に31-38と迫ったものの、続くイングランド代表戦では大敗と望む結果を得られずにいる。
主将として白星をつかめないジレンマについて、今回のツアー中にこう明かしている。
「まぁ、結果が出ないのはしんどいですし、チーム全体としてちょっと、悪い空気が流れてしまうこともあると思うんですけど、そこで落ち込んでいても仕方がないことなので。自分たちで前を向いて、自分たちのやるべきことをやる。(結果にかかわらず)ゲームで足りない部分を補い、次に向けて成長する」
イングランド代表に苦しめられた直後のフランス代表戦に向けても、このように意気込む。
「(大敗を受け)少し面食らったところはありましたが、自分たちが攻めればアタックできた。(フランス代表戦に向けては)オーバーシンキングにならず、次の試合でどう戦っていくかを考えました。そこまで『(イングランド代表に)やられたから後ろを向いてしまう』というところはないです」
強豪国とのゲームで検討課題を浮き彫りにさせながら、手ごたえをつかんでいる。
「自分たちのラグビーが進化していくなか、プレーの質、精度、ディテールが落とし込まれてきました。それがゲームで出せて、勝つか負けるかのギリギリのところで戦えるまでに来ました。そこで、勝ち切る…というところがまだまだですし、もっともっと精度を上げないと、もっともっとキャパを増やさないと…とは思いますが、成長は実感しています。自分たちのラグビーは間違っていない」
海外遠征を含めた今秋の活動を通じ、もっとも成長できたと感じる瞬間はいつか。最終戦前日のスタジアムでそう問われると、こう即答した。
「まだ終わってないので。最後、成長したところを見せられるようにしたい。このゲームが終わったら自分のプレー、リーダーシップを総括したいと思いますけど、まずは明日のゲームに100パーセント、フォーカスしたいです」
来秋のワールドカップ・フランス大会を見据え、「やってきたことをチェック、チャレンジできる場。大事に戦いたい」。チーム作り、プレースタイルの定着化に注力しながら、目の前の白星をつかみに行く。