ラグビーリパブリック

日本代表・李承信、次のワールドカップには「出たい」ではなく「出る」。

2022.11.20

フランス戦前日のキャプテンズランでの李承信(撮影:松本かおり)


 ワールドカップに出たいのではない。出るつもりでいるのだ。

「自分が出て当然というか、出るべきだというマインドになってきていて。(大会のメンバーに)入れたらいいなぁ、ではなく、入ってどう勝っていくかという考えに変わっていきました」

 李承信。コベルコ神戸スティーラーズ所属の21歳だ。

 今夏、初めて日本代表に入った。身長176センチ、体重85キロのサイズで冷静さと鋭いラン、グラウンド内外での積極的な態度が買われ、司令塔のSOとして存在感を示している。

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 7月の対フランス代表2連戦はいずれも先発。現在おこなわれる秋のツアーでも出番を増やした。

 10月に「JAPAN XV」名義で挑んだ対オーストラリアA・3連戦では、2試合目から2戦連続で10番をつけた。同29日に東京・国立競技場でオールブラックスことニュージーランド代表を31-38と追い込んだ一戦、さらには11月12日のロンドン・トゥイッケナムスタジアムでのイングランド代表戦にも途中出場を果たした。

 そして20日、今回のツアーのラストゲームとなるフランス代表戦に先発出場する。

 場所はスタジアム・ド・トゥールーズ。日本代表が来年のワールドカップ・フランス大会の試合を2度、おこなう場所だ。

 2019年のワールドカップ日本大会でこの位置に入った田村優、松田力也が不在のなか、28歳の山沢拓也、27歳の中尾隼太とポジションを争う李。秋のツアーで切磋琢磨するうち、4年に1度の祭典たるワールドカップへ「自分が出るべきだ」と決意するようになった。

「オーストラリアAとの3連戦が終わったくらいから、そう感じ始めました。ゲームタイムも積めて、代表でどうやったら勝てるかを10番としてずっと考えてきて、それが明確になってきた。あと、このチームで勝ちたいという思いが強くなったのが大きいです」

 次の試合で「勝ちたい」を果たすべく、失敗を肥やしにする。

 イングランド代表戦では13-52と撃沈。来秋のワールドカップでもぶつかる相手の激しい防御に苦しみ、「マイボールの時も守りに入ってしまった」。素直に振り返る。

「まずは接点、フィジカル(ぶつかり合い)のところでプレッシャーを受けていて、9シェイプ(接点周辺の陣形)への相手のラインスピード(防御の出足)も速くて…。自分たちはボールを動かそうとはしているんですが、動かせられなかった」

 今度はいくら圧力を受けても冷静かつ、果敢に攻めたいと李は意気込む。念頭に置くのは「2フェーズマインドセット」。秋のテーマにしていたアタックでのキーワードだ。攻め始めから2つの局面で、一気に勢いをつけたいと李は語る。

「トランジション(攻守の切り替え)の多いラグビーのなかで、マイボールになってからの2フェーズが大事になってくる。そこでしっかりモメンタム(勢い)を作り、どこにスペースがあるかコミュニケーションを取りながらアタックしていくのが大事になります。まずは自分たちのラグビーを信じ切って、自分たちの形をやり切る。やりたいことができない時は、状況に対してアジャストしながら意思統一を図る」

 特に、自身の周りに規則的に並ぶFW陣を活かす。

「FWに対して早くコミュニケーションを。早くプレーコール(次の動き)を伝える。あとは細かいところですが、ラインの深さ、幅(を自ら調整する)。FWでドミネート(前進)してモメンタムを作らないとジャパンのラグビーはできないので、そこが、大事かなと」

 チームを勝たせると同時に、ワールドカップに向けたセレクションにも好影響を及ぼしたい。個人的な課題を「1対1のディフェンス」「イングランド代表戦時のようにプレッシャーがかかるなかでどうチームをリードし、コミュニケーションを取るか」と具体的に認識しながら、こうも述べる。

「チャンスをつかむかどうかは、自分次第。ただ、(目標には)近くなっているなと」

 国外では自身初となる代表戦の先発機会を、無駄にはしない。

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