東京・江戸川区陸上競技場にやってきた4大学は、それぞれの想いを胸に必勝を期していた。
11月19日に快晴の江戸川でおこなわれた関東大学対抗戦Aは、筑波大学×立教大学が43-17、青山学院大学×日本体育大学が52-12で決着。筑波大は今季対抗戦に与えられている大学選手権出場5枠の最後に入り、青学大は待望の今季初勝利を手にした。
ともに1勝4敗、選手権行きの切符を懸けた戦いとなったのが第1試合の筑波大×立教大だ。
「日本一へ向けて、大学選手権に出場できる対抗戦5位の枠は絶対に勝ち取らなければいけませんでした。必ず勝たなければいけないゲーム、ということは全員が認識していました」(筑波大・PR木原優作主将)
「勝たなければいけない試合でした。選手達は今季過去最高の雰囲気、最高の準備で臨んでくれました」(立教大・元治裕一監督)
まず序盤のキックゲームで筑波大の1年生、18歳のSO楢本幹志朗が的確なキックを連発。エリア合戦を優勢になるが、最初の得点機でノックオン。この日の筑波大はエリア両端でハンドリングエラーが続いた。
一方、士気の高い立教大は、武器のディフェンスで粘り強かった。LO手塚一乃進、CTB福壽佳生、1年生WTB佐藤侃太朗も激しいヒットで前進を止める。
筑波大は嶋﨑達也監督が「選手は勝利という最低限の部分はやり切ってくれましたが、チグハグな場面も多かった」と振り返ったように、立教大のファイトもあって会心の出来ではなかった。
ただ不調でも26点差で勝ちきる地力が筑波大にはあった。
まずは堅実にモールで攻勢。前半14分にはスクラムでのPKからエリア右奥へ入り、FL楢本鼓太朗がモールでフィニッシュ。同31分にもモールで押し込んでからの右展開でWTB植村陽彦が2トライ目を挙げ、10点リード(ゴールは2連続で失敗)となった。
立教大もブレイクダウンのバトルで激しく戦い、攻撃回数を伸ばして猛攻。前半35分には手堅くPGで3点奪取した。ただ筑波大に前半終了前、ディフェンスの読みも鋭いSH白栄拓也に3トライ目を奪われ、筑波大が17-3とリードして折り返した。
前半はPGの3点のみだった立教大だが、後半は2トライを挙げて追撃。チーム目標である選手権出場への執念を見せた。
筑波大は後半開始早々、この日プレイヤー・オブ・ザ・マッチ受賞の筑波大LO八木澤龍翔が、相手キャリアーをねじ上げて攻守交代。直後のスクラムから後半3分、WTB大畑亮太をフィニッシャーとしたサインプレーが見事に決まり、リードは21点差(24-3)に。
教大は後半開始早々に一発でトライを獲られたが、闘志は消えていなかった。
「後半頭にスクラムから一発でトライを獲られたあと、ハドルを組みました。そこで『選手権に出るぞ』と意思統一して、士気が高まりました」(立教大・NO8紀伊雄介)
チーム最初のトライは後半6分、敵陣に放り込んだロングキックをSH北川時来が単独で猛チェイス。
ここでターンオーバーを誘発すると、直後の相手ゴール前スクラムで、主将のNO8紀伊が虚を突いて単独キャリー。相手フランカーがスクラムにフルコミットした一瞬を見逃さなかった。
立教大は粘った。後半18分には、窮地でのジャッカルもあった筑波大NO8谷山隼大にトライを奪われるが、同27分にはCTB中優人が技アリのヒット&ターンでチーム2トライ目。
ふたたびビハインドを14点差に縮めたが、筑波大が終盤にモールなどで連続トライ。平石颯ら途中出場組のインパクトも大きかった。
この敗戦により筑波大との勝点差が逆転不可能な7となり、大学選手権出場を逃した立教大。NO8紀伊主将は「自分たちの時間帯もあったが、最終的にはベーシックな部分で負けた印象」と語った。ただ手応えもあった。
「これまでの立教大学とは違うところは見せられたと思っています。良いポイントも見つかりました」
勝利した筑波大のPR木原主将は、勝って兜の緒を締めていた。
「なかなか思い通りに試合が進みませんでした。身体を張るエリアはチームの根幹としてブレないので、選手権へ向けてそこを反復していくだけです。目標は日本一で決まっています。一戦一戦、闘っていきます」
2試合目は5敗同士の対戦。入替戦出場を回避する対抗戦6位スポットを視野に入れ、青学大と日体大が激突。それぞれ必勝の想いがあった。
「2週間前に筑波大学さんに負けて選手権への道がなくなりましたが、選手たちは2連勝して勝点10を獲ることを目標に掲げ、4年生を中心にまとまってくれました」(青学大・清水孝哉監督)
「ここまで統計的に見ると、後半に気持ちが切れて大量得点を獲られてしまう傾向にありました。この試合へ向けては、すべての物事に妥協せず、気持ち、メンタルで負けずに戦い抜こうと話していました」(日体大・FB田中大世主将)
この日大きな存在感を放ったのは青学大のバックス陣、特にゲーム主将を務めたCTB金澤春樹だった。
CTB金澤はハイレベルな長短のキックで好機を演出。特大キックでエリア獲りを優位に進め、後半には敵陣22m内でマイボールラインアウトになるキック「50:22」も披露した。
前半はそんな青学大の展開力が炸裂。
序盤に大外へのクロスキックを連続成功。前半6分にキックパスからWTB大村知意の先制トライが生まれた。
日体大も優勢だったスクラムなど起点として反撃したが、青学大には「昨シーズンからの積み上げで良くなっている」(清水監督)という堅守で前半無失点。
日体大の猛攻を押さえ込むと、バックスで獲るというプラン通り、前半は両WTBで4トライ。26-0で折り返した。
後半最初のトライ(4分)はCTB金澤のショートキックが決め手。鮮やかな再獲得からWTB榎本拓真がフィニッシュした。
日体大、待望のチーム初得点は後半13分だった。
スクラムで諦めず押し込むと、エリア左隅でWTB鈴木颯が抜けだし、前半3分の交替出場ながらゴール前のトライセーブなど好プレーもあった、辰己一輝がフォローからゴール中央へ回り込んだ。
しかし青学大はCTB金澤の足技によるトライなどで、後半20分頃から3トライを追加。日体大も後半36分にモールで一本を返したが、40点差(52-12)で青学大の今季初勝利となった。
初勝利を逃した日体大。対抗戦最終戦は12月4日の筑波大戦だ。
「今日はセットプレーを中心に組み立て、コンタクトでも上回れればと思っていましたが、思ったようなゲームができませんでした。青学さんの展開力にスピードがありました」(日体大・米地徹監督)
これで1勝5敗となった青学大。2週間後は、勝点5で並んだ立教大と、入替戦回避をかけた決戦が待っている。
「4年生として最後、(12月4日)立教大学さんとの試合に勝って、6位で対抗戦に残留できるように1日1日を大事にしたいと思います。これから2週間しっかり準備したいです」(青学大・金澤ゲーム主将)