ラグビーリパブリック

主力卒業&けが人続出の関東学院大。7-74で大敗も「次につながる」と言えるわけは。

2022.11.09

東海大に大敗した関東学院大。左から板井良太監督、丸山央人、宮上凛(撮影:向 風見也)


 関東学院大ラグビー部の板井良太監督が「負けた(後の)コメントばっかりで…」と苦笑したのは、加盟する関東大学リーグ戦1部の第5週を終えてからだ。

 10月30日、群馬県前橋市のアースケア敷島サッカー・ラグビー場で開幕5連敗を喫した。5連覇を狙う東海大に7-74で屈した。

 1部昇格2季目の前年度こそ8チーム中4位も、当時の主力級は揃って卒業済みだ。さらに「けが人のオンパレードで…」と板井監督。直近では、チーム唯一の留学生選手で倉敷高卒1年目のFBのラリー・ティポアイルーテルが腰を痛めた。3年生ながらリーダーと目される左PRの兒玉隆之介も、欠場を余儀なくされた。

 何より東海大戦の直前になり、HOの米井翔啓主将が足首を捻挫した。

 東海大戦後、指揮官が会見する。臨席するWTBの丸山央人ゲーム主将に目配せをしながら、現状を明かす。

「丸山たちの代にバトンタッチした時に『1、2年生の底上げをテーマにする』と話し合いながらやってきました。そこへ主力にけが人が出たことによる調整不足など、アクシデントが想像以上に大きかったかな…」

 それでも板井監督は、今度の80分を「学生たちは東海大さんを相手によくタックルした。攻める気持ちも見えましたし、次につながるゲームをしてくれたと思います」と見る。

 体格差に勝る相手に接点で圧をかけられたものの、わずかなスペースに球を動かしたり、1対1で臆せず仕掛けたりと、クラブの意思を示した。

 象徴がいた。宮上凛。身長165センチ、体重80キロという佐賀工高出身の3年生FLは、対面でフィジアンのレキマ・ナサミラとのマッチアップで魅する。

 序盤には、自陣ゴール前で低く突き刺さった。自分より26センチ、43キロも大きなナサミラはたまらず落球。宮上はナサミラの身体を気遣うように触り、淡々と次のプレーへ移った。

「自分がやってきたことを信じていたので、怖いというの(気持ち)はなかったはなかったです」

 己には厳しい。自らがボール保持者だった際にナサミラに担ぎ上げられたのを振り返り、「ただ単に自分のレベルが低かったです」と悔やんだ。

「実際に当たってみたら強く、レッグドライブ(ぶつかり合う瞬間に足をかく動き)とかで、自分が劣っていた部分がある。もっと成長しなきゃな、と思います」

勇敢なファイターである宮上凛。写真は10月15日の法政大戦から(撮影:高塩 隆)

 下級生時にはけがを繰り返していた。その様子にも触れてきた板井監督は、いまの宮上について感慨深げに語った。

「ファイトの塊です。1~2年で膝のけがが重なりましたが、不屈の闘志で這い上がってきた。口数は少ないですが、身体でチームを引っ張る。うちの精神的支柱になりつつある男で、先輩からの信頼も厚いです」

 関東学院大は一時代を築いた。2006年度までは10季連続で大学選手権決勝へ進出。現日本代表の稲垣啓太ら多くのタレントも輩出した。

 その稲垣が主将だった2012年度以降は、通算2度の2部降格に泣いた。

 群雄割拠と謳われる今季の1部にあっても、ここまでで得た勝点はわずかに「1」。1試合で得られる最大の勝点が「5」であるなか、2試合を残して6位の日大とは「9」の差をつけられている。入替戦回避へ予断を許さない。

 しかし、下級生のリーダーシップに刺激を受けるゲーム主将の丸山は、「劣性状態ではネガティブな状態になりますが、原点としてラグビーを楽しまないといけない」。会見中は、隣に座るタックラーの宮上を何度も労っていた。優しく肩に手を置いた。

 黄金期も愛情深いコーチとして選手に信頼されてきた板井監督は、「もっともっと頑張らないと。今日できたいいところを伸ばして、あとは(攻防の起点の)セットプレーをもう少し安定させないとな」。初白星をつかむ鍵について、丹念に言葉を絞っていた。

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