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【RWC2021】ブラックファーンズの準決勝の勝利に興奮さめやらぬNZ国内。徹底した攻撃の姿勢にアッパレ!

2022.11.08

死闘となったフランスとの準決勝を制し、歓喜のブラックファーンズ(Photo: Getty Images)


「終わったと思った」 
 激戦の後に、そう語ったのは、ブラックファーンズのCTBステイシー・フルーラーだった。
 残り時間1分を切ってフランスが逆転を狙ったPGを選択した時には、誰もがそう思ったに違いない。

 ニュージーランド(以下、NZ)で開催中のラグビーワールドカップ2021大会の準決勝。初の自国開催のNZ女子代表“ブラックファーンズ”がフランスの猛追をわずか1点差(25-24)で逃げ切り大激戦を制して決勝進出を決めた。

 女子ラグビーの歴史だけでなく、男女含めたラグビーの歴史にのこる大激戦と言っても過言ではない。試合開始から終了まで、両チームが真っ向勝負で戦った姿は見るものを虜にした。

 NZ国内のTV3では無料ライブ放送があったため、多くの人が準決勝を視聴した。
 試合後、数日間のトークバックラジオは、激戦の準決勝の話題でもちきりだった。
 「素晴らしい試合だった」というコメントと共に、終始スリリングな展開をみて「どっと疲れが出た」という声も多く聞かれた。

 ブラックファーンズは、昨年末の遠征で大差で敗れた2連敗を合わせフランスに4連敗中でもあった。試合前のコメントは、「私たちは、昨年とは全く違うチームです」と不安はない様子だったものの、キックオフでは、ボールをファンブルするなど、その後も細かいミスがあり、立ち上がりは硬さが見られた。やはり苦手意識を感じていたのかも知れない。 

 フランスの安定感抜群のセットピース、特にラインアウトで苦戦したブラックファーンズ。ブレイクダウンでも、何度もボールを奪われて高速ラグビーが封じ込まれた。
 これにより、決定力のあるWTBポーシャ・ウッドマン、ルビー・トゥイに生きたボールが回らず、苦戦を強いられる展開となった。

苦しかった準決勝でのステイシー・フルーラー(Photo: Getty Images)

◆指揮官の采配が試合を動かした

 後半に入っても、なかなか逆転できないブラックファーンズ。
 なんとか流れを変えようとしたウェイン・スミスHCの采配も見ごたえがあった。
 指揮官が動いたのは50分を過ぎたところだった。

 ボールキャリーで前に出る力があるPRクリスタル・マリーを投入。そしてBKは、FBレニー・ホームズをベンチに下げ、トゥイをWTBからFB、そして爆発力のあるWTBアイシャ・レティ・イイガをベンチから投入して勝負に出た。
 これは、プールステージのウエールズ戦で10トライ、準々決勝のウエールズ戦で9トライを奪った超攻撃的布陣になる。攻撃に加速をつけて逆転を狙いに行ったのだ。
 その采配が見事にうまくいった。FWで前に出ることができ、球出しがスムーズになり12番テレサ・フィッツパトリックの逆転トライを生むことになった。

 試合が大きく動いた50分くらいから試合終了までの場面が一番の見ごたえがあった。

◆守るのではなく、逃げずに攻め続けた

 その後フランスがトライを返し1点差に迫られたブラックファーンズ。
 しかし、1点差を守るのではなく、更に攻撃に加速を付けようとした。
 ペナルティを得た時にタッチキックで陣地を取るのがラグビーのセオリーと言われているが、いっさい躊躇せず、クイックタップからの攻撃で真っ向勝負を挑んだブラックファーンズ。
 ブレイクダウンで劣勢となっていながら、それでも強力なフランスのディフェンスに立ち向かっていく姿は、強引すぎるようにも思えたが、徹底していただけにすがすがしくも見えた。

 試合終了間際にフランスが逆転のPGを狙うドラマのような展開になったが、惜しくも外れてしまった。これにより、ブラックファーンズが勝利し、決勝進出を決めた。試合内容はフランスが勝っていた。
 両チームとも勝たせたいくらいの素晴らしい試合だった。

 ブラックファーンズは、高速ラグビーのゲームプランを徹底した。しかしフランスはそのテンポにしっかり食らいつく。途切れることのない試合展開に、まるでセブンズを80分間見ている感覚になった。
 男子顔負けのコリジョン(衝突)は、女子ラグビーの次元を超えたと言っても過言ではない。
 試合後は女性らしい温かい雰囲気がみられた。両チームがハグでお互いの健闘を称える姿は、見る者の琴線に触れた。
 観衆は、2万2000人と開幕戦の3万5000人を超えることはなかったが、両チームの素晴らしいパフォーマンスで十分盛り上がった。

 ブラックファーンズが勝利した準決勝の試合直後から決勝のチケットを買い求める人が殺到した。
 そして翌日の朝には完売になっていた。

 決勝の相手は、前回大会と同じイングランドだ。
 フランスより大きなFW相手で更に手ごわくなるのは間違いない。
 決勝のスミスHCのセレクションに注目したい。

11月8日、決勝へ向けての練習を見るウェイン・スミス ヘッドコーチ(Photo: Getty Images)
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