元日本代表で、昨シーズンまでFLでプレーしていた浦安D-Rocksの金正奎が、今季はHOに挑戦している。
11月6日に浦安Dパークでおこなわれたウエスタン・フォースとのフレンドリーマッチで、柳川正秀、金廉の両PRに挟まれ、HOとして先発ピッチに立った。試合は有観客でおこなわれ、試合前のメンバー発表で「フッカー金正奎」のアナウンスに、グラウンドに応援に来たファンの間からも驚きの声が挙がっていた。
「HOをやるのはラグビー人生初めてです。1、2、3(フロントロー)は、これまでやったことがなかったですね」という金正奎、「HOとして初めての試合だったので、思い切ってプレーしようと思っていました」。
初めての試合とは思えないスクラムワークで、開始10分過ぎにはフォースのスクラムを押し込みプレッシャーをかける場面もあり、前半終了間際には相手陣ゴール前のマイボールラインアウトから正確なスローイングでボールを確保、モールで押し込みトライにつなげた。
前半で交代し、後半はグラウンドの外から戦況を見つめたが、チームの勝利に試合後には晴れ晴れとした笑顔を見せた。
「かなりハードなプレシーズンを過ごしてきているので、みんな自信を持って試合にも臨めています。ケガをしていた選手たちも復帰してきて層も厚くなってきて、いい状態で(プレシーズンマッチを)迎えられていると思います。有観客でたくさんのファンの前で試合ができ、そして勝つことができていいスタートが切れたと思います」
「今日はディフェンスがよかったです。ターンオーバーもたくさんあったし、そこは求められていることをしっかり出せていたんじゃないかと思います」と試合を振り返った。
HOのデビュー戦については「HOを始めて数か月という状態で、ここまで持ってきてくれた斉藤展士コーチに感謝してますし、周りのサポート、理解なしにはこうしてチャレンジもできていなかったと思います。まだ1試合目なのでここが評価基準になってくるし、ここから自分の伸びしろを示すチャンスにもなってくると思うので、そういった意味ではいいスタートが切れたと思います」と自身のプレーに及第点を与えた。
そもそも、HOに挑戦するきっかけは何だったのか。
「個人的に大好きなラグビーで何かチャレンジをしたいとずっと思っていて、もちろんFLをあきらめたとかいうことではなくて、幸いにもスローイングはうまく投げることができていたので、これはチャレンジするきっかけをもらっているのかなと。また、チャレンジしたいという気持ちを持ったままキャリアを終えたくなかったので、その気持ちも伝えたうえでコーチにも理解してもらい、チャレンジさせてもらいました。このチャレンジは僕のラグビー人生にとっても大きいですけど、その先の人生にとってもすごく大きなチャレンジになるんじゃないかなと、ずっと生きる経験になるんじゃないかと思っているので、このチャレンジができて本当に幸せです」
バックローとフロントローでは、役割もプレーもまったく変わってくる。
「単純にスクラムとラインアウトが大きな部分を占めてくると思います。まずはそこでしっかりとしたパフォーマンスを出せないと話にならないので、今日はまずそこをしっかりやろうと思いました。メチャクチャ楽しかったです。たくさんの学びもあって、こういうチャレンジができていることがすごくうれしいです」
試合後に「HOはムチャクチャ楽しかった」と振り返った金正奎。どんなところが楽しかったのだろうか。
「スクラム一つとってもそうですけど、ちょっとしたことでプレーが大きく変わるし、そういったことってラグビーであまりありませんでした。喜びだとか悔しさだとか、小さなことがいろいろと重なってスクラムって成り立っているんだなって。ラインアウトもそうです。決まったときにうれしいですし、小さな喜びをすごく感じられる。いままでであったらジャッカルとか、スコアに貢献するとかいった部分でうれしさを感じていましたけど、それとはまた違った喜びを感じられています」
セットプレーの安定が試合を優位に進めるために大事な要素となってくる。これから2年目のリーグワン開幕に向けて、プレシーズンマッチが続く。
「スクラムはしんどいですし、たくさん組みましたけど、その苦労をこれからも続けていって、もっともっといいスクラムを組めるようにしていきたいです」と笑顔で話す金正奎。31歳の新たなチャレンジを楽しんでいる。
きん・しょうけい●1991年10月3日生まれ、大阪府出身。177㌢・95㌔。啓光学園中-常翔啓光学園高-早大。高校時代に花園で優勝。高校日本代表では主将、早大では副将を務めた。NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安を経て、今季から浦安D-Rocksに所属。2016-17年にはサンウルブズでプレー。日本代表キャプ7。セブンズでも日本代表経験がある。