リーグワン初代王者のホーム・熊谷は、リーグ本番さながらの演出でにぎわった。11月4日、熊谷ラグビー場でプレシーズンマッチがおこなわれ、埼玉パナソニックワイルドナイツがクインズランドレッズ(オーストラリア)を迎え対戦した。試合は55-30でレッズが勝利を収めた。
前半に45-6と大差をつけたレッズは、NO8ハリー・ウィルソンらキャップ持ち選手たちに、多くの若手選手が交じった陣容だった。10月半ばにおこなわれた「レッズ・ディベロップメント」の強化試合に出場していた若手選手は先発15人中9人を占めた。
しかし、開始から主導権を握ったのはレッズ。フィジカルの強さを前面に押し出し、開始直後から前半だけで7トライのラッシュ。ハーフタイムには6-45まで差が開いた。
試合後、埼玉WKの指揮官、ロビー・ディーンズの口から出たのは意外な言葉。
「私たちにとっていい結果になった」
それは、シーズンを前にして、主に選手個々の課題が明確になったことを指している。
ゲームキャプテンを務めたHO堀江翔太も、大量失点の要因とリーグワン開幕への課題を個人に求めた。
「後半はやりたいラグビーができた。ボールを動かせば通用するなと。チームとして戦術、戦略はいいものを持っていて、きょうは個々がそこに頼った。個人がまず体を当てていかなかれば。上げるところを、しっかり上げていかないと、チームプレーが生きない」(堀江)
後半のスコアは埼玉WK 24-10 レッズ(奪トライ4本、被トライ2本)、前半に取られたトライシーンでは、レッズが徹底してその強みをぶつけにきた。そこで後手に回り、次々とインゴールに踏み込まれた。起点は中盤で起きるタックルと、そこからの密集。体を激しく当てあう攻防だ。
レッズのブラッド・ソーン監督は戦前の準備について「ワイルドナイツは強いチームとリスペクトしている。この1か月、ハードな準備を続けてきた」と振り返る。開始からフィジカリティ全開で体を当てにきた。そこでたまらずホームチームの反則が起きる。レッズはペナルティキックで陣地を進め、ラインアウトからモールでトライをもぎ取るパターンを迷いなく繰り返した。埼玉KWは、スペースのある状況での1対1のタックルミスも目についた。
日本一チームの意地は後半に垣間見えた。
光ったのは、80分を通して初めて司令塔の位置でプレーした若手、SO山沢京平。特に後半は、キック合戦然り、飛び出してくるレッズディフェンスの背後を突く足技も然り。時間が経つごとコンタクトに積極的になった味方FWの勢いを駆って、BKのラインでも好リードをみせ、アタックに圧力を生み出した。自らも2トライを挙げ、仕掛けに締めにと、持ち味を発揮した。
相手が強みを出し勢いに乗る序盤から、巻き返しの後半へ。
「若いメンバーも多い中、こういう展開になった時にどう対応するのか、チームにとっていい経験になった」(堀江ゲームキャプテン)
対照的な前半と後半のスコアには、チャンピオンチームのレッスンのあとが表れている。そして、日本代表メンバーを欠きながらも見せた修正能力の高さも。
野武士軍団は今季も手強い。
◉埼玉WKメンバー
FW
ダニエル・ペレズ、堀江翔太、平野翔平、マーク・アボット、エセイ・ハアンガナ、長谷川崚太、ラクラン・ボーシェー、福井翔大
HB
内田啓介、山沢京平
TB
セミシ・トゥポウ、ヴィンス・アソ、長田智希、竹山晃暉
FB
川崎清純
リザーブ(全員が交代出場)
下釜優次、床田裕亮、藤井大喜、リアム・ミッチェル、大西樹、小山大輝、笹倉康誉、梶伊織