ノックアウトステージでキャプテンが戻ってきた!
ラグビーワールドカップ2021開催国のニュージーランド女子代表“ブラックファーンズ”は、10月29日にファンガレイのノースランドイベントセンターでおこなわれる準々決勝、対ウエールズ戦のメンバーを発表、BKのキープレーヤーを先発に戻すなど超攻撃的布陣となった。
▼主将が2か月間のリハビリを経てワールドカップデビューへ
共同キャプテンのケネディー・サイモン (FL/NO8) のケガがようやく癒えベンチスタートでラグビーワールドカップデビューとなる。
インタビューでは、2か月間のサイドラインで過ごしたつらさを語っていたが、復帰の喜びをかみしめている様子が見られた。
ウェイン・スミス ヘッドコーチ(以下、HC)は、大会前からケガをしているサイモンをあえてキャプテンにしていたことから、期待の大きさがうかがわれる。キャプテンの復帰は連覇を狙うにあたって追い風になるか。
▼FWのメンバー変更は1人、BKは超攻撃的布陣
スミスHCは、プール戦の3試合はローテーションで32人のスコッド全体で戦う方針を継続した。
しかし、準々決勝のFWのメンバーを見てみると先発メンバーは、フロントロー、3列は据え置き。先週ベンチスタートだったワークレートが抜群のLOチェルシー・ブレムナーが先発に復帰と、FWの変更はわずか1人のみとメンバーを固定してきたことになる。
BKに目を向けると、SHケンドラ・コックセッジが開幕戦以来の先発に復帰、共同キャプテンのSOルアヘイ・デマントと組むハーフ団は、開幕戦以来のコンビとなる。
激戦のCTBは、プール戦で安定感抜群のプレーをしたテレサ・フィッツパトリックを12番に抜擢、開幕戦で大活躍をしたステイシー・フルーラーがケガから復帰で13番。今シーズン初めてのCTBコンビはスキルレベルが高く注目する価値がある。
こちらも激戦のWTBは、アイシャ・レティ・イイガ、ポーシャ・ウッドマンの破壊力抜群のコンビを持ってきた。復帰2戦目のレティ・イイガの大爆発の予感がする。
そして最後尾には、本職がWTBのルビー・トゥイがスペシャリストのFBをベンチに追いやり、再び15番をつけ超攻撃型のバックスリーとなった。豪華なBK陣でプール戦での対戦(10トライ)よりトライが量産されるかもしれない。
これにより、自陣からでも地域を取らず展開ラグビーの姿勢を準々決勝でも継続すると思われる。しかし、ベンチにヘーゼル・トゥビック(SO/FB)、レニー・ホームズ(FB)のキッキングゲームに長けている2人を揃えたことは非常に興味深い。
前半は、展開ラグビーに徹し、後半から控え選手を投入しキッキングゲームを試すことにするのか、一試合を通じてどんなラグビーをするのか注目したい。
▼準決勝、決勝を見据えて、この試合でのポイント
ブラックファーンズは、プール戦でウエールズに56-12で圧勝したものの、セットピースで苦戦した。特にスクラムでプレッシャーを受け、ラインアウトからのモールでは、トライを2度も奪われ課題が浮き彫りになった。
今後、準決勝、決勝で当たると思われるフランス、イングランドは、上記の課題を必ず標的にしてくるだろう。当然、今回対戦するウエールズも、そうであろう。
前回セットピースで苦戦したウエールズと再戦で、課題を克服したか見極めるチャンスを得たことは大きい。準決勝に向けてこの試合でスクラム、モールのディフェンスの課題を克服したい。
先週のスコットランド戦では安定したスクラムを組んだ、ピップ・ラブ、ジョージア・ポンソンビー、エイミー・ルールのカンタベリーのフロントローをはじめFWのパフォーマンスに注目したい。
▼オールブラックスと試合時間が重なる事態にNZ国内がざわついた!
ブラックファーンズのキックオフはNZ時間の午後7時30分。一方、日本に遠征しているオールブラックス(NZ男子代表)の日本代表戦はNZ時間の6時50分。もろに試合時間が被ってしまうことになった。
この事態にNZ国内のラグビーファンの怒りの矛先がNZラグビー協会に向いた。
オールブラックスのスケジュールを組むときに、準々決勝の時間帯がすでにわかっていたにもかかわらず、忘れていたことで協会は責められている。テレビのニュースでも大きく取り上げられた。
日本ラグビー協会に時間をずらす要請もむなしく却下された。直前すぎて無理なお願いだった。
この件でメディアに質問されたブラックファーンズのコックセッジとサラ・ヒリニは、「リプレイでオールブラックスを見てください」とNZ国内のラグビーファンにブラックファーンズへの応援を強く呼び掛けた。
もちろんオールブラックスの試合も大事だが、4年に一度の大イベント、ましてや自国開催のラグビーワールドカップの方がNZ国民は大切にしている様子がうかがえる。
まずは、ブラックファーンズの熱闘に注目したい。