復帰して初めて先発した試合を、白星で飾った。
ラグビー日本代表の流大は、10月14日、大阪・ヨドコウ桜スタジアムで「JAPAN XV」名義でぶつかったオーストラリアAとの3連戦3試合目に背番号9をつけて68分間、出場した。
共同主将を務める予定だった今夏の代表ツアーは病欠も、秋の候補合宿から再出発していた。今度のシリーズ最終戦では、序盤から用意されたサインプレーを首尾よく運用。前半29分までに28-7とリードを広げた。
接点に駆け寄ってパスをさばくのがSHの役目とされるが、この日は流が接点から球をもらうシーンもあった。本人は「どこにスペースがあるか、ブレイクダウン(接点)がどうなっているか、レフリーの特徴を見ながらやっている感じです」と振り返った。
戦術理解度と統率力が真骨頂。かねて自ら話していた。
「僕のよさって、本当に周りに伝わりにくいと思うんですよ。僕自身もそれを望んでいるというか…。他のチームやファンの方に伝わらなくても、『僕が〇〇をやっているからチームが動いている』ということを自チーム内のスタッフや選手がわかっていればそれでいい」
果たして52-48でシリーズ初白星。チーム選定の優秀選手となった。しかし、流自身は控えめだった。
「プレーには満足できていなくて。ただ、SHは勝たせるポジション。勝てたことだけが僕の評価かなと」
チームは後半13分までに45-24と勝負を決定づけながら、終盤にはエラーや反則で自らの首を絞めていた。対するオーストラリアAの持つ推進力を引き出してしまい、失点を重ねた。
流が途中出場していた過去2戦でも、試合終了間際に失点した。いずれも惜敗している。
3連戦の収穫と課題は。グラウンド内外でリーダーシップを発揮する30歳は、試合直後の取材エリアで述べた。
「勝つチームと勝たないチームの違い(がわかった)。勝つチームというのは、スコア、時間帯、レフリー、どんな状況で何が起きているかを理解できているチーム。1、2戦目では僕らがそれを理解していなくて、自分らで勝利を手離した。そこを学べたのが収穫です。課題は——きょう(14日)のビデオを見ていないので一概には言えないですが——僕たちがリードして試合的に勝つ雰囲気になった時に、(いかに)相手のモメンタム(勢い)を止めるか、かなと」
一般論として、試合でリードしている時は手堅く戦うことが求められる。
レフリーがそれまでどんな反則に厳しいかを把握したうえで、規律を保つ。こぼれたボールを確実に抑え、確実に陣地を取る…。
このような作法は、各国代表クラスの選手であればほぼ理解しているだろう。ただ、圧力のかかる国際試合でそれを遂行しきれるかには個人差が生じる。特に、キャリアの浅い選手が余裕を失うケースは少なくないような。
2019年のワールドカップ日本大会で初めて8強入りした日本代表は、来秋の同フランス大会へ選手層を広げている。いまは積極的に新戦力を登用しており、今度のメンバー23名中15名がワールドカップ未経験者だ。
「それ(失敗や試行錯誤)は、経験するしかないので」と流は続ける。
「若い選手がいっぱい経験できて、いいシリーズだったと思います。この3連戦だけにフォーカスするのではなく、今後も見据えないといけない。すぐに結果が出ないことを、僕らは理解しています。ただ、この1勝2敗という結果には満足していないので。まずこの学びを活かすのは次のオールブラックス戦。次、次と、仕事が来るので、そこに向かって…という感じです」
10月29日、東京・国立競技場で「オールブラックス」ことニュージーランド代表とぶつかる。成長の跡を示したい。