ラグビーリパブリック

「うまい!」「楽しい!」とスクール生たち興奮。『オールブラックスラグビークリニック presented by リポビタンD』で8選手がコーチに

2022.10.24

SHフィンレーが小学生とのセッションを楽しむ(撮影:齊藤豊)

 日本代表が、オールブラックスにホームで挑戦。10月29日に迫った『リポビタンDチャレンジカップ2022』(14時50分開始/国立競技場)に向けて、オールブラックスの面々は10月22日に日本入りした。

 翌23日、選手8人の姿が浦安市内のグラウンドにあった。待っていたのは、地元千葉県の、柏ラグビースクール、浦安ラグビースクールの小中学生たち約100人。大正製薬の企画によるラグビークリニックのためだ。オールブラックが指導するセッションは2時間におよび、スクール生たちを魅了した。

 参加選手はデイン・コールズ、コーディー・テーラー(二人合わせて156cap!)のベテランHO二人を筆頭に、2023年のワールドカップ後にコベルコ神戸スティーラーズに加入するFL/NO8アーディー・サヴェア、そしてPRジョージ・バウアー、SHフィンレー・クリスティー、CTBアントン・レイナートブラウン、WTB/FBのレスター・ファインガアヌクとケイリブ・クラークの8人。プレー中とは打って変わって、スマイルと和やかな空気でセッションに臨んでくれた。

 スクール生とその保護者、関係者、多くのメディアの拍手の中、登場した選手たち。迎えたのは柏ラグビースクールの小学生による柏市特製のハカ。

「ターリンガ ファカロンゴ……!」

 本格的な発声と舞に、オールブラックたちは驚き、神妙に見守り、演舞が終わると大きな拍手でそのパフォーマンスを称えた。ワールドカップ2019年大会で、オールブラックスの事前キャンプを受け入れた柏市のレガシーだ。

 続くクリニックは、ニュージーランド(NZ)ラグビー協会のマイケル・マーンウィックさんによるウォームアップでスタート。

「初めから力を入れすぎないで。軽く、大きく動かすよ」

 NZの同年代の練習がうかがえる雰囲気だ。

冒頭、柏RSの小学生が披露した「柏ハカ」(撮影:齊藤豊)
「アイスクリーム!」ケイリブ・クラークがスクール生の心をつかむ。ケイリブは父・エロニ氏もオールブラック(撮影:齊藤豊)
記念品を交換、選手からプレートを受け取るスクール生たち(撮影:齊藤豊)
浦安市内のグラウンド。フレームの外には小中学生たちの大勢の保護者も。世界的名手たちのクリニックを満喫した(撮影:齊藤豊)
大正製薬は2001年から日本ラグビーを応援(撮影:齊藤豊)
 当日は気持ちのいい天気。水分補給もこまめにおこなった(撮影:齊藤豊)
指導のサポートには、元日本代表の阿久根潤さん、猪口拓さんも加わった(撮影:齊藤豊)

 メインのセッションはスクール生が4つに分かれたブースを、二人組の選手たちが20分ずつ巡るスタイルで行われた。参加者は、すべての選手に触れることができた。パス、ハンドリング、キック、そして最後のゲーム形式(タッチフット)ではオールブラックたちも混じっての熱戦になった。

 合間にも、選手たちのアドバイスが入る。

「最高のチームワークだよ! もっと受け手が元気に声を出してパスをたくさん受けよう。後半もがんばろう」

 チームのコーチさながらに笑顔で呼びかけているのは、22歳のCTBファインガアヌク。歩くようなスピードでも、ボールを持った瞬間にアタックがグッと前に出る。優しいパスで、小学生を走らせた。まだキャップ2の新鋭ながら、その振る舞いは黒衣の代表選手だった。

 世界一強いチームが、日本のスクール生たちとの時間を、世界一楽しんでいた。

 選手の中でもムードメーカーとして異彩を放っていたのは、アウトサイドバックのケイリブ・クラークだ。

 

「これに勝ったら、アイスクリーム!」

 巧みにドリルを盛り上げる。ただ、小中学生たちが一番うれしそうな顔を見せるのは、ケイリブたちのポジティブな反応だった。練習テーマをうまく消化できた子には、すかさずサムアップ、「うまい!」「いいね!」と目を合わせ、時には肩に手を置いてリアクションしてくれる。

 キックのセッションの終わりのトークでは、映画のようなシーンもあった。ケイリブは、溜まりに溜まった「ごほうびアイス」の約束を、なんと隣にいたデイン・コールズに、振った(ケイリブよりも13歳上、現役にしてレジェンドの84キャップ…)。

「はい! では、今からデインさんがドロップゴールを蹴りまーす。もしキックが成功したら、みんなのアイスは、『無し』ってことで。では! コールズ選手…お願いします!」

「おいおい」

 突然 振られたベテランHOは、苦笑いでポストに向かってくるりターンすると、ノーステップでドロップキック! 22㍍外×15㍍ライン付近から強いインパクトで飛んだボールは高々と上がり、わずかにHの外へ切れた。スクール生たちが目を丸くした。フロントローワーが一瞬で繰り出したスキルに、彼らの技術の高さがうかがえた。

「め…っちゃうまい」

 セッションの合間や休憩の時間、小中学生からはことあるごとに感激の言葉が漏れた。歩いていても、ぶつからなくても、笑顔のまま手足でボールを自在に操る選手たちのスキルに、会場全体が見入るセッションになった。

 最後は、指導のサポートに入ったアンバサダーの廣瀬俊朗さん、三宅敬さんらも一緒に全員で記念撮影。NZ協会からの記念品なども受け取り、握手を交わして、楽しいひと時を終えた。

「子どもたちの規律の高さに感銘を受けた。楽しんでプレーしていても、話を始めると耳を傾けてくれる。素晴らしいと思いました」(フィンレー・クリスティー)

「NZの同年代の選手よりもステップがしっかりしている」(デイン・コールズ)

「保護者の皆さん、子どもたちをここへ送り出してくれて、私たちに素敵な機会を下さってありがとう。どうか帰りに、みんなにアイスクリームを買ってあげてください」(ケイリブ・クラーク)

 前日到着の疲れも見せずリラックスした表情で過ごした一団は数日後、形相を変えて国立のピッチに立つ。史上7度目の日本代表との対戦は10月29日、土曜の午後だ。