ラグビーリパブリック

立正大、陣内主将が明かす、1部で善戦できている強さとは。

2022.10.22

大東大戦を控えた10月11日、練習前に合宿所で陣内主将に話を聞いた(撮影:長岡洋幸)

関東大学リーグ戦で8年ぶりに1部に昇格した立正大。安定したセットプレーからの長短キックで確実に前に出るプレースタイルを徹底し、前半戦を2勝2敗で折り返した。堀越正己監督は「自分たちの強みを、選手たちもしっかり理解して戦っている」と手ごたえを感じている。主将としてチームを牽引するのはフッカーの陣内源斗(じんのうち・みなと=社会福祉4年)。162センチの小さな体で抜群のリーダーシップを発揮している。大東大戦(41-35で勝利)の前に、前半戦について話を聞いた。(10月11日取材)

――前半戦3試合(日大、東海大、関東学大。1勝2敗)を振り返って。
陣内 まず1勝(関東学院大戦)できたことはうれしく感じています。今年新チームがスタートした時から自分たちはチャレンジャーだということを意識していて、いい準備ができている部分、すごく手ごたえを感じています。
――「いい準備ができている」というのは?
陣内 僕らは「前に出るディフェンス、前に出るアタック」をゲームコンセプトとして持っているんですけど、そのための戦術の準備はできていましたし、気持ちの面でも1戦目から「1部リーグのチームに勝ってやる」「大学選手権を目指す」というのを持っていたので、戦術の面でも気持ちの面でもいい準備ができていました。
――練習面では?
陣内 春の時点で特にラインアウトが課題で、ラインアウトに特化してリーダーを中心にメニューを考えて練習をしてきたんですけど、セットプレーの精度は上がってきましたし、エリアマネジメントで見た時にも立正のラグビーができているというのを感じていました。制度が低かったのが、セットプレーの中では特にラインアウトでした。


――前半を戦って、どんなところで1部と2部の違いを感じている?
陣内 BKの展開力であったり、対応力の部分は2部のときとは違うなと感じています。逆にフィジカルやセットプレーは自分たちの強みとして、試合コンセプトを実践した中で通用しているなと感じています。
――3試合戦って出た課題は?
陣内 初戦(日大戦 33‐44)で出たのは、最後まで前に出るディフェンスができなかったことです。日大にバックスで展開されて、そこから流したディフェンスという考えになったのが敗因だったかなとチーム内で話していて、その課題をつぶすために「とにかく前に出てチャレンジする」というテーマで戦ったのが東海大戦(21-47)です。最初に点を取られてしまったんですけど、ディフェンスに関してはいい形を出すことはできたかなと思っています。じゃあ、なんでそんなに点数を取られたのかと考えた時に、リロードの部分が課題として挙がり、チームで出した目標が「一秒リロード」。一秒でリロードして、前に出るために早くセットをしようと。まだまだ完ぺきではないんですけど、関東学大戦(36‐12)でそれが少し出せたかなと考えています。その結果が勝利につながったと思います。


――2019年度は入替戦で勝てなかった。昨年度勝った時と何か違いは?
陣内 僕が1年のときは、各々のポテンシャルでやっているラグビーだったと思います。もちろんある程度軸はあったと思うんですけど、それに対して選手たちが実行しきれないところがありました。それが昨年度や、今年度ここまでは戦術に対してブレないプレー、全員がその戦術コンセプトを徹底することができているんじゃないかと感じています。その違いが最終的に、1部のチームと戦えているということにつながっていると思います。
――何か変わるきっかけがあった?
陣内 今年に関しては言えば、僕がキャプテンをやらせてもらっていて、とにかくみんなが一つの物を信じて戦うことが大事だと考えていたので、チームとして決まっているゲームコンセプトを全員が徹底する、というのは意識して練習に取り組むようにはしています。実際、1年のときの4年生の代で入替戦に負けたんですけど、その代の方が今よりもポテンシャルや能力値は高かくて強かったと思っています。でも勝ち切れなかったのは、戦術を徹底しきれなかったところだと思います。最終的に軸がブレていたので、試合の中で劣勢になった時にどのように戦っていいかわからなくなっていた。でも今年は東海大戦で前半に失点したんですけど、その中で自分たちのやるべきことは明確になっていたので、その軸に沿ってチャレンジし続けた結果、何とか後半はロースコアに抑えることができました。

陣内主将のポジションはフッカー。文字通り先頭でチームを引っ張る (撮影:井出秀人)
スクラムの練習では、細かい動きもチェック(撮影:長岡洋幸)

――今年のチームスローガンは「主体性」。
陣内 昨年度もチームスローガンは「主体性」だったんですけど、昨年の4年生が主体性を発揮してくれたおかげで、チームとして主体性を発揮していこうという雰囲気に、それが1部昇格につながったと思います。今年もその主体性という部分は引き継いでいこうと。ただ、去年はまだまだリーダーを中心に一部の人しか主体性を発揮できていなかったので、今年はもっとより多くの人間がしっかり主体性を持ってチームに貢献していこうということになりました。
――具体的にはどんなことをやった?
陣内 昨年はリーダーが中心になって「ノーポイズントーク」というのをやりました。チームにとって悪影響になる言葉を発しないというもので、練習中に「しんどい」「苦しい」という言葉を発しないし、そういう表情を見せない。そして今年はもっといろいろな場面で主体性を持って生活しようということで、食事の改善にも取り組みました。昨年度までは食事は全員でミーティングルームで摂っていましたが、コロナの感染症対策で食事の時間を分けたりしていました。そうするとトレーニング後、食事まで時間が空いてしまう人も出てきて、栄養摂取など体づくりにも影響が出てくるのでは、という声が挙がりました。そこで自分のフロアーや自分の部屋で食べるようにしたらより早く栄養を吸収できるんじゃないか、と選手主体で考えてスタッフにプレゼンテーションして実行しました。また、オフシーズンにはFWであればラインアウト、BKであればまた別の課題があって、その課題をメインに合宿前の3週間は学生がメニューを考えて、練習でそれを実践する。その中でその日のテーマを明確にしてチームにアウトプットしていくということを実行してきました。


――試合の振り返りは、いつやる?
陣内 試合から帰ってきて当日か、翌日1日オフを挟んだ週始めになります。
――試合前におこなう“リーダープレゼン”とはどういうもの?
陣内 チームの文化として、以前から根付いているもので、特に意識してやるようになったのは去年からです。試合前日か当日に、まず試合までにテーマとしてやってきたことをFWとBKで分かれてトークをして、その後、チームとして試合で何をするのかをリーダーがキーワードを明確にしてメンバー23人で共有します。それを試合前にすることで、試合の中でよりキーワードを意識してブレずに戦うことができるようになります。ミーティングの時にすぐにキーワードが出てくるのは、前回の試合でどんな課題があったのかというのをみんなが認識をしていて、その課題を解決するための練習をしようというのことを日頃から取り組んでいるからだと思います。その週やってきたのは何だというのが、みんなの口からすぐにキーワードとして出てきます。


――今年になって、寮生活で何か変化は?
陣内 毎朝、ごみ捨てをするのが決まっているんですけど、分別のチェックをリーダーではない4年生がおこなったりしています。例年より寮もきれいになっているんじゃないかと(笑)。掃除の時間は朝10分くらい取っているだけなので、ある程度きれいなのは、適当な生活をしていないからなのかなと思っています。
――4年生に寮の仕事割り振りがあるそうだが。
陣内 今年度から採り入れました。掃除係、ホペイロ(用具係)、点呼係、備品管理係、食事係。特に活躍しているのが食事係で、昨年度までは味や量で問題があったのですが、食事係が外部に発注してくれたり、量を増やす交渉をしてくれたり。朝食は学食で食べるので、寮で食べるのは昼と夜の2回です。
――運動選手にとって食事は大事なこと。
陣内 新チームがスタートしたばかり頃、まだ体が小さいという課題が出て、希望する人には部で何か提供すればいいんじゃないかという話になりました。そして100円払ったらサラダチキンと玉子1個、プロテイン1杯を支給してもらえるというシステムを作りました。本来、100円では赤字ですが、なぜ成立するのかというと、体を大きくしたいという気持ちであったり、そういう努力に対して部として還元しますよ、というシステムです。それもスタッフが考えたのではなく、学生の方で考えてスタッフにプレゼンテーションして採用されたので、主体性がものすごく垣間見れた部分だと思います。


――キャプテンになった経緯は?
陣内 シーズンが終わってから監督に呼ばれて、「何の話か分かるか?」と言われて、僕自身、薄々感じていたので、「どうする?」と聞かれて「やります」って答えました。
――その時の気持ちは?
陣内 就任したときというよりは、2部から1部に上った入替戦のノーサイドの笛が鳴った瞬間から、僕の中では「来年は1部で戦うんだ。もう2部には帰って来れない」という責任というか、覚悟はありました。その中で、せっかく1部でチャレンジできるんだから大学選手権を目指そう、というのは僕の中で一つあって、キャプテンに就任した際に各学年とミーティングをして、まず4年生で大学選手権を目指すということを決めて、それを下級生に話したらみんなが賛同してくれて、チームとして大学選手権を目指そうということになりました。
――混戦のリーグ戦、後半戦を戦っていく上でのポイントは?
陣内 立正の軸を徹底するというのが間違いなく一つだと思うんですが、その中でリロードあったり、相手より早いセットであったり、そういった細かい部分がキーポイントになってくるんじゃないかと思います。

【第4節までの結果】
立正大33‐44日大
立正大21‐47東海大
立正大36‐12関東学大
立正大41‐35大東大

Profile
じんのうち・みなと/162センチ・92キロ/フッカー/2001年2月10日生まれ、東大阪市出身/石切中-尾道高。高校2年、3年で花園出場。