ラグビーリパブリック

【RWC2021】“ブロンドデストロイヤー”らが奮闘。敗れるも自信を取り戻したフランス。

2022.10.21

プール戦で優勝候補のイングランド(白)を苦しめたフランス。7-13の惜敗だった(Photo: Getty Images)


 227。「ラグビーワールドカップ2021」での女子フランス代表の第2戦のタックルの数だ。このチームのスローガンである『謙虚に、ハングリーに』がそのまま彼女たちの凄まじいディフェンスに表れていた。

 なかでもこの日50キャップ目を獲得した、FLマージョリー・マイヤンス(31歳)は前半の40分だけで17タックルを見舞った。2〜3分に1度のペースでタックルをしていたことになる。70分で交代するまでにその数は28に達した。2007年の男子ワールドカップのニュージーランド戦でタックル数38を記録した元フランス代表キャプテンのティエリー・デュソトワールをイギリスメディアが『ダークデストロイヤー』と名づけたが、フランスメディアは金髪のマイヤンスを『ブロンドデストロイヤー』と呼んでいる。

 マイヤンスは2009年に7人制代表デビュー、2011年に15人制代表デビューを果たしてから、2つの代表チームで活躍してきた。2016年リオオリンピックに続いて2017年女子ワールドカップにも出場した。今回も東京オリンピック2020と女子ワールドカップ2021のどちらにも出場することを目指していたが、オリンピックが1年延期されワールドカップの準備をする時間が十分とれないと判断し、7人制を断念して15人制に専念することを選んだ。その後、2021年3月にワールドカップも1年延期されることが発表される。

 延期の発表から約1か月後におこなわれたシックスネーションズを最後にマイヤンスは代表から姿を消してしまう。「バーンアウトに陥っていた。とても難しい1年だった」と最近フィガロ紙に明かしている。今大会直前のイタリアとの準備試合で約1年半ぶりにブルーのジャージーを着たマイヤンスは、何度も立ち上がりイタリアの選手に次々とタックルを浴びせた。

 「代表チームに戻るためにとても努力してきた。まだそんなに年寄りじゃないということを見せることができた自分を誇らしく思う」とマイヤンスも代表復帰を喜ぶ。

プールC初戦の南アフリカ戦でも7番をつけ奮闘したマージョリー・マイヤンス(Photo: Getty Images)

 ワールドカップ2021第2戦・イングランド代表との試合では、開始11分でチームのキープレイヤーであるSHロール・サンシュスを負傷で失い、5分後にはパワフルなプレーでチームを前に進めるNO8ロマーヌ・メナジェを脳しんとうで失った。男子フランス代表が来年のワールドカップのニュージーランドとの開幕戦の前半にSHアントワンヌ・デュポンとNO8グレゴリー・アルドリットを続けて失うようなものだ。

 「まずグラウンドにいる自分たちのことに集中した。それから彼女たちのために戦わなければならないと声をかけ合った。2人は私たちの心のなかで一緒に戦っていて、それが私たちの力になった」とゲームキャプテンだったLOセリーヌ・フェレが語るように、チームのマインドセットは揺らぐことがなく、試合が終わった時には選手の表情にやり切った達成感が感じられた。

 今年に入ってから納得のいくパフォーマンスができていなかった。激しさを80分間持続させることができていなかった。しかし、この試合ではグラウンドの15人が常にコネクトして強敵イングランドの度重なる攻撃を身を挺して食い止めた。

 「試合には負けた、内容も終始劣勢だった。でも、この試合で自分たちのDNA、獰猛さを取り戻すことができた。それが一番の収穫。そしてこれを毎試合していかなければならない。まだ大会は続くのだから」とフェレは続けた。負けはしたがボーナスポイントは獲得した。そして何より自信を取り戻した。

 しかし、激しい試合は爪痕を残した。途中退場したサンシュスが検査の結果、膝前十字靱帯断裂と診断され大会を棄権することになった。チームにとっては大きな損失であり、今大会で引退を決めていた彼女にとっても、また彼女のプレーを楽しみにしていたファンにとっても残念な結末になってしまった。

 このアクシデントもチームの結束をさらに強くする材料に変え、この試合の後半に見せたような「まさにフレンチフレア」というトライを次戦以降もっと見せてくれることを期待する。

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