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【トップイーストリーグBグループ】愚直なディフェンスで明治安田が開幕3連勝。

2022.10.21

明治安田は堅固なディフェンスを見せた。(撮影/鈴木正義)

チームを束ねる明治安田の高橋優一郎主将。(撮影/鈴木正義)
ディフェンスを突破してトライを挙げた山梨の渡邊瞬。(撮影/鈴木正義)
モールでゴール目前に迫る山梨のFW陣。(撮影/鈴木正義)
巨漢WTBシオネ・トケを止める明治安田のBK陣。(撮影/鈴木正義)



 気がつけば10月も中旬となり、山梨県富士吉田近郊にある富士北麓公園はさすがに肌寒い。
 いよいよラグビーシーズンらしい季節の到来を感じさせてくれた。

 トップイーストBグループも第3節となり、勢いの出てきたチーム、課題を修正してきたチームなど、各チーム長丁場のリーグ戦での現在位置が見えてきた頃だ。
 この日(10月16日)対戦した明治安田生命ホーリーズ、クリーンファイターズ山梨にとって、それぞれどんな意味を持つ第3節だったであろうか。早速試合を振り返ってみよう。

 ここまで2連勝の明治安田、反対に2連敗の山梨と、対照的な結果で迎えたことから、序盤から明治安田の一方的な試合展開を予想したファンもいたかもしれない。
 しかし、開始10分には山梨がゴール前に持ち込み、モールで明治安田を攻め立てる。だが明治安田も人数を使ったディフェンスで山梨の前進をギリギリで止める。

 一転今度は明治安田が好キックで一気に山梨ゴール前に迫る。しかし、山梨FW陣も接点で強さを発揮し、これを退ける。
 その後も明治安田は何度となく敵陣直前まで迫り、ラインアウトからモールという攻撃を愚直に繰り返すが、山梨がこれを凌ぐ展開で時間が経過する。前半17分明治安田のモールがようやく動き、そのままインゴールに。最後はHO宮川倫理央(日本大)が押さえ込んだ。

「実は、明治安田は山梨のホーム戦では勝てなかったんです」
 試合後に長田悟ヘッドコーチがそんなことを語った。いわば明治安田にとって「鬼門」とも言える山梨遠征だが、ファーストトライをあげた宮川は山梨の強豪日川高校出身。
 地元への「恩返し」の1トライが明治安田のジンクスを解くきっかけとなったのかもしれない。

 試合はその後、ボールを奪い、前に出る、ぶつかる、という実に愚直な攻防が続き、なかなかスコアが動かない。
「普段はもっとボールを動かすチームなのだが、今日はゲインラインを目指してアタックすることを意識した」(長田HC)というように、この日の明治安田はフィジカルの強い山梨に対し「真っ向勝負」を挑んだ印象だ。

 得意のフィジカルのぶつかり合いを挑まれた山梨は、先ほどとほぼ同じ展開でゴール前に迫られ、執拗に明治安田のFWを中心とした攻撃を受けるが、今度は山梨がこれを耐え切る。
 明治安田がPG一つを加え0-8としたが、試合の流れは、まだどちらに傾いたとは言えない一進一退の攻防のまま前半を折り返した。

 後半に入っても明治安田のディフェンスは固い。山梨は後半8分過ぎにゴール前スクラムを得。しかし、FW平均体重97.1キロの明治安田が106.3キロの山梨の圧力に耐え切り、山梨はトライまでが遠い。
 フィールドプレーでも山梨は、NO8 マパカイトロ・パスカ(神戸製鋼−ホンダ)をはじめとする破壊力満点の大型FWを軸に縦の突進を試みる。しかし、ことごとく止められた。

 BKに展開しようと試みるも、出足の良いタックルでゲインラインを越えられない。
 攻める山梨、守る明治安田。トリッキーなパスなど一度もない地味な展開だが、見応えのあるディフェンス戦だ。

「今日の勝因はディフェンス。よく耐え切ったということ。FW陣の粘りと両CTBの青山(晃、関東学院大)と三木(亮弥、慶応大)がいいタックルでフィジカルの強い選手を止められたので、そこが特によかった」
 明治安田の長田HCは、この展開をそう振り返った。

 守っていればチャンスが転がり込む。後半12分にはそのCTB青山がスクラムからのセットプレーで一気に山梨ディフェンスの間隙を突いてトライ。さらに17分には、ショートパントの争奪戦から得たボールをNO8 堀越健介(同志社大)、WTB平井出海(天理大)とつないでトライ。PGもあり、スコアは0-25と試合は大きく明治安田ペースに傾いた。

「前2試合で課題となっていた、サポートを早くする点は改善できていた」と山梨・福島正人ヘッドコーチは振り返る。
 確かにここまで2試合の山梨であれば、ここからズルズルと失点してしまう展開だったが、この試合はここで足が止まらない。
 何度ディフェンスに倒されてもボールキープしフェーズを重ねる。ついに後半24分、SO渡邊瞬(拓殖大)が固かった明治安田のディフェンスをこじ開け、この日初トライを上げる。

 その後も山梨の時間が続くが、明治安田は耐える。耐える、そして耐える。
「自分は派手なプレーはできないです。地道にタックルと、前に出るだけです」
 この日マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた明治安田FL高橋優一郎(日本大)は振り返る。
「ゴール前に迫られた時もノープレッシャーで、最初にタックルに入る人間が厳しく入ろう、ということを声がけしていた。自分達が自信をもってやってきたディフェンスがうまく機能して、外国人の大きな選手にも通用したと思う。チーム全員がMOMだと思います」
 高橋は顔面から出血し、あちこちに内出血の見られる痛々しい体で語った。この体がこの試合で明治安田が見せた「耐える強さ」の証なのだろう。

 結局試合は7-25で明治安田が勝ちを得たが、両チームゴール前での攻防の時間が長く、ラグビーファンにとっては、熱く盛り上がれる80分だった。

 明治安田はこれで3連勝。Bグループで唯一の負けなしである。そう水を向けると、「今のトップイースト(AとB)は、ホームアンドアウェイ方式。次も同じというわけにはいかないでしょう。お互い研究してくるでしょうし、全く気を許せない状況」と長田HCは気を引き締める。

 山梨としても、この明治安田のディフェンスをどう突破するのか。次回の対戦は、予定では12月4日と十分に時間はある。
 ここまでリーグ戦3連敗と結果を出せていないが、この日の明治安田との攻防を見る限り、決して下位に甘んじる実力ではない。
 リーグ戦後半に向けどのように修正してくるかが楽しみだ。


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