世の中との接点を設ける。
国内ラグビー最高峰のリーグワンに加盟する東芝ブレイブルーパス東京は、月に1度のペースで定例会見を実施。その都度、おもにグラウンド外に関する新たな取り組みを発表している。
今年8月の初回には「猛勇狼士」というチームスピリットの言語化と、そのコンセプトを発表。9月には、所属するリーチ マイケルが携わるアジアラグビープロジェクトの立ち上げを伝えた。
広告マン、静岡聖光学院の校長を歴任した星野明宏プロデューサーは、他クラブの手本にもなる仕掛けを対外的にアピールする。
「ブレイブルーパスを知ってくださいという活動をしながら、この世の中にラグビーが必要だよね、と思っていただく」
今年5月までのリーグワン元年には、旧トップリーグ時代の2015年度以来となる全国4強入りを果たしたブレイブルーパス。法人化したばかりとあって、星野は「よりマーケティングの観点を持って、結果にコミットしたい」と意気込む。
薫田真広ゼネラルマネージャーに請われて今年、入閣するや、アイデアと人脈を用いてクラブの事業を活性化している。
「皆さんの会社にも、オフシーズンはないと思うんですよね。ですので、(事業スタッフにも)オンシーズン、オフシーズンというものはあっちゃいけない。あくまで(ラグビーでは)リーグ戦がある時が『オンシーズン』となっているが、我々は1年間かけてしっかり活動する。世間の皆さんが難しいと思われているであろう、ラグビー事業会社の『自立』にチャレンジする」
今回はまず、11月のプレシーズンマッチについて告知。一般的には無料でおこなわれることの多い開幕前の練習試合を、一部、有料化し、選手と写真撮影ができたり、トッド・ブラックアダー ヘッドコーチの円陣での話を間近で聞けたりと、独自の付加価値をつけたチケットを販売する。
それぞれ12、19、26日におこなう日野レッドドルフィンズ戦、NECグリーンロケッツ東葛戦、東京サントリーサンゴリアス戦は、いずれも東芝の府中事業所内のグラウンドで実施する。ちょうど天然芝を張り替え、スタンドも拡張したばかり。新たなフィールドのお披露目の機会にもなる。
日本代表として2019年のワールドカップ日本大会を経験したFLの德永祥尭は、今度の試みをこう捉えていた。
「リーグワン(公式戦)より(選手とファンが)触れ合える機会が(物理的に)長い練習試合は、有料にしてもいいと僕自身は思っています。それに対して、僕ら選手――特に試合に出ないメンバー――が『お金を払って来てもらうんだから楽しませよう』とプロ意識を持ついい機会になるのではと考えています」
練習試合には、招待客もいる。その対象となりそうなのが、12、19日の午前中に会場で実施される「ルーパスカップ」への参加者だ。
「ルーパスカップ」とは、採用と普及を担当する望月雄太氏らが考案した新たなラグビーの大会だ。今回の会見では、こちらも話題となった。
「作戦は子どもたちで決める」をはじめとした6つの独自ルールを設け、12日に小学校高学年の部、19日に小学校1~4年生の部、サンゴリアス戦翌日の27日に中学生の部を実施。都内のラグビースクールに参加を呼び掛けている。
大会では試合ごとに5分間の「感想戦」を開き、互いの作戦や振り返りを言葉にする。さらに、それぞれのパートで対戦した相手とチームを組む「ミックス戦」もおこなう。現役時代に日本代表最多キャップを獲得した大野均アンバサダーは、この「感想戦」のファシリテーターや「ミックス戦」に出る片方の組の指揮官役を務める。
テーマは「紳士・淑女の種を育てる大会」。指導者や保護者も「コーチ・親は子どものプレーを怒らず褒める」よう求められる。
クラブは、来場する保護者へ赤いブレイブルーパスのメモ帳を配布。大会中は自身の子どものよかった点を「1ページ1つずつ」は書き留めてもらい、帰宅後に子どもへプレゼントしてもらう。それが「子どもにとってモチベーションの上がるノートになる」と、望月は期待する。
他にも新たな普及事業を展開する。
このほど、水泳やサッカーをはじめ複数のスポーツ教室を運営するバディスポーツクラブとコラボレーション。すでに多くの子どもたちが入会する同クラブにラグビーの教室を作り、まだこの競技に触れたことのない層へもリーチする。
さらには日本テレビが運営するアスリート派遣マッチングサービス「ドリームコーチング」へ、チーム単位では初めての登録。ラグビーの技能を高めたいチーム、個人へ、自軍グラウンドでの指導、出張授業などを実施。ブレイブルーパスのノウハウを共有する。
社業に専念する元選手の力も借り、クラブと競技について伝え広める。