10月16日、オークランドの西にあるワイタケレ・スタジアムでおこなわれた、「ラグビーワールドカップ2021」開催国ニュージーランドの女子代表“ブラックファーンズ”の2戦目、対ウエールズ代表との戦いは、10トライの猛攻で56-12とブラックファーンズの圧勝となり、プール最終戦を待たずに準々決勝進出を決めた。同時に課題も見えた試合となった。
ブラックファーンズの試合前に披露する「ハカ 」の指揮は、30キャップ目になる背番号8を付けたチャーメイン・マクメナミン。プレー同様に力強い指揮だった。
初戦に続いてブラックファーンズは、立ち上がりで細かいミスがあり、なかなか得点が奪えなかった。しかし、17分にLOチェルシー・ブレムナーがトライを挙げると、勢いが加速した。
その後、トライゲッターのWTBポーシャ・ウッドマン(2トライ)、CTBシルビア・ブラントがトライを追加し、この間、わずか10分で4トライを奪った。
FWで奮闘するウエールズは、前半終了間際にラインアウトからモールで押し込み1トライを返し、22-7でブラックファーンズリードで折り返した。
▼後半もブラックファーンズの攻撃が止まらない。
この試合で先発に抜擢され、一試合通じて高いワークレートを見せたLOマイア・ルースが後半開始1分でトライを奪うと、ブラックファーンズの勢いが増した。その後テレサ・フィッツパトリック、ブラントのCTBコンビがインゴールになだれ込み、10分以内で3トライを奪う。
その後も終始ブラックファーンズのペースで進んでいき、途中出場のPRクリスタル・マリーが持ち味の突破力を活かしてトライ。更には、BKの攻撃の起点となりキレのあるランプレーで何度もチャンスを作ったルアヘイ・デマント(SO)のトライ。そして終了間際には、初めてのFBに入ったルビー・トゥイがトライを奪って56-12でブラックファーンズの圧勝となった。
大幅にメンバー変更をしたブラックファーンズだが、今回起用された選手たちが良いパフォーマンスをし圧勝したことにより層の厚さを見せつけた。
その中でも、若干18歳ながら、先発に抜擢されたCTBブラントのスキルレベルの高さには驚かされた。まるで経験豊富なベテラン選手のような落ち着いたプレーで、この先どこまで伸びるか楽しみでならない。
フィッツパトリックとの新CTBコンビのパフォーマンスも素晴らしかった。これにより、初戦で活躍したエイミー・デュプレッシー、ステイシー・フルーラーを加えCTBのポジション争いも過激になってきた。
熾烈なWTBのポジション争いもあり、ウェイン・スミスHCのセレクションの行方が気になる。
▼圧勝も課題を残す。
しかし、課題も浮き彫りになった。深刻と言えるほど気になったことがふたつある。
ひとつ目は、スクラム。
何度も押されて反則も取られるくらいプレッシャーを受けていた。後半は持ち直した感はあるが、プレーオフを見据えてイングランド相手にこのスクラムでは厳しいだろう。
名スクラムコーチのマイク・クローンがプレーオフまでにどう立て直してくるか注目したい。
ふたつ目は、モールのディフェンス。
ウエールズFWのモール攻撃に対応できず、あっさりと2トライを奪われた。昨年末の遠征でイングランドやフランス相手にラインアウトからのモール攻撃で手こずりトライを奪われていたが、改めて弱点をさらけ出すことになった。
これは、ブラックファーンズのFWの選手たちも感じており、これまでずっとモールのディフェンスの練習をしていただけに、自分たちのパフォーマンスにがっかりしている様子だ。しかし、改善に向けての強い意志のコメントも見られた。
この2点は、すぐに改善できるとは言いにくいので大きな不安材料となる。
その他では、自陣22メートルライン内からでも地域を取らずにリスクを冒してまでパスでつないでいたのが気になった。自陣奥深くからでも果敢に攻め、素晴らしいスキルを見ていると頼もしいが、フランス、イングランドなどディフェンスが強い相手にはリスクが大きすぎるだろう。
プレーオフまで地域を取るキックのオプションは封印しているのだろうか?
本来WTBのトゥイを2戦目でFBに起用したが、キックが重要なFBのポジションにプレーオフを見据えて今後のセレクションも注目される。
圧勝したものの、指揮官は納得がいってない様子もうかがえた。規律の悪さだ。
特に後半に反則が目立ち、2枚のイエローカードをもらったこと。ペナルティが合計17と多く「がっかりした」と思わず言葉にしたくらいだ。
しかし、初戦のワラルーズ(オーストラリア代表)で課題が見えたBKラインのディフェンスの改善が見られたことは、満足しているようだ。
けが人も戻りつつあり、プール最終戦のスコットランド戦(10月22日)に向けてのセレクションを注目したい。