ラグビーリパブリック

車いすラグビー世界選手権 日本はニュージーランドに圧勝し準決勝進出

2022.10.16

トライを奪う島川慎一。左はNZキャメロン・レスリー(撮影/張 理恵)


 デンマークで開催されている「2022 WWR 車いすラグビー世界選手権」は10月14日、決勝トーナメントに突入し、予選ラウンドを勝ち上がった各プールの上位4か国、8チームが頂点を目指し準々決勝に臨んだ。

 1995年に第1回大会がおこなわれ8回目の開催となった車いすラグビーの世界選手権。今大会で初めて「準々決勝」が設けられた。
 前回大会(※ 第1回大会を除き12か国が出場)までは、各プールの上位2チームのみが準決勝に進めるフォーマットだったため、この変更によってより多くのチームに「世界チャンピオン」のチャンスが与えられることとなった。

地元・デンマークの子どもたちの声援が背中を押した(撮影/張 理恵)

 予選全勝で「プールB・1位」の日本は、「プールA・4位」のニュージーランドとの準々決勝に臨んだ。
 両者の対戦は2019年9月に韓国で開催された「アジア・オセアニア選手権大会」以来、約3年ぶりとなる。試合は、車いすラグビーニュージーランド代表“ホイール・ブラックス(Wheel Blacks)”の「ハカ」で始まった。

 スタートから激しいボールの奪い合いとなり、タックルの重い金属音が会場に響く。
 ひときわキレのあるランを見せるのは、ニュージーランドのキャメロン・レスリーだ。レスリーは水泳とラグビーの「二刀流」アスリートで、11歳で水泳を始め、北京・ロンドン・リオのパラリンピックでは競泳の個人メドレーで3大会連続の金メダルを獲得している。
 レスリーのスピードに呼応するかのようにテンポの速いラグビーが展開されるが、「1プレー目から全力で戦おう」と心をひとつにした日本は、相手のペースに巻き込まれることなく着実にターンオーバーを重ね、16-11で第1ピリオドを終える。

海外勢のタックルにも当たり負けしない池崎大輔。中央はNZヘイデン・バートンクーツ(撮影/張 理恵)

 第2ピリオドで見ごたえあるマッチアップを繰り広げたのは、池崎大輔とヘイデン・バートンクーツ。2019年にバートンクーツは、池崎が選手兼ヘッドコーチを務める「TOKYO SUNS」のメンバーとして日本選手権にも出場し、チームの初優勝に大きく貢献した。3年ぶりに同じコートでプレーした池崎は、彼の持ち味であるパワーとキープ力、パスに加えて、「(障がいの重い)ローポインターの使い方や、細かい動きが身についてきた」と話す。

 ホイール・ブラックスはスピードとパワーで攻め込んでくるが、日本は集中力を高めてリードを広げ、29-21で試合を折り返した。

バンパーで動きを止め味方の道を作るローポインターの小川仁士(左)と長谷川勇基(右)(撮影/張 理恵)

 メンバーを入れ替えながらフレッシュな状態で戦う日本に対し、レスリーとバートンクーツを軸にしたラインナップで戦い続けるニュージーランド。第3ピリオド中盤には疲れが見え始める。
 そして最終ピリオドが始まった頃には足が止まり、日本はピリオド開始から4分もの間、相手を無得点に抑え8連続得点を挙げた。さらに、畳みかけるようにタックルからトライへとつなげ、58-38で圧勝。準決勝へと駒を進めた。

試合ごとに頼もしく成長する橋本勝也(撮影/張 理恵)

 準決勝の相手は、宿敵・カナダを53-51で破ったアメリカ。日本との対戦は、2019年5月にアメリカで開催された国際親善大会「Four Nations Invitational」以来、3年5か月ぶりとなる。
 大会連覇への強い思いを持って今大会に臨んでいる池崎は準決勝に向け、「自分たちのプランをチームでしっかり考えて実行する。一瞬たりとも気の抜けない戦いになるので覚悟して準備したい」と気を引き締めた。

 もう一方の準々決勝2試合は、オーストラリア(プールB・2位)がイギリス(プールB・3位)に54-45で勝利、そして、デンマーク(プールB・4位)がプールA全勝のフランスを55-53で破り準決勝進出を決めた。
 ベスト4が出そろい、ますます熱気を帯びていく車いすラグビー世界選手権。熱く、エキサイティングな試合が観客を待ち受ける。

子どもたちの“ヒーロー”になった日本代表(撮影/張 理恵)
選手の顔にも子どもたちの顔にも笑顔があふれた(撮影/張 理恵)
Exit mobile version