ラグビーリパブリック

車いすラグビー世界選手権 日本は5戦全勝で予選B組を1位通過

2022.10.15

ライリー・バットを押さえ込む長谷川勇基(撮影/張 理恵)


 世界トップレベルの12か国が集結し熱戦を繰り広げている、「2022 WWR 車いすラグビー世界選手権」。大会4日目の10月13日、開幕から4連勝でプールBのトップを走る日本(世界ランキング1位)は、最大のライバルであり予選ラウンド最大の山場となるオーストラリア(同4位)との一戦に臨んだ。

円陣で「1、2、3、日本!」と心をひとつにする日本代表(撮影/張 理恵)

 世界ナンバーワンプレーヤーと称されるライリー・バットを擁するオーストラリアは、ロンドンとリオのパラリンピックで2連覇を達成した強豪チームだ。今大会では3名の女性選手がメンバー入りするなどさまざまなチャレンジを見せている。

 バットが入るスターティングラインナップに対抗するのは、倉橋香衣―羽賀理之―島川慎一―池透暢のバランスライン。前回の2018年大会で史上初の世界チャンピオンに輝いた日本、その歴史が変わった瞬間をコートで迎えたひとりが倉橋だ。いまや日本代表に欠かせない存在となっている。

フィジカルの強さで上回る海外勢にもひるまずディフェンスを仕掛ける倉橋香衣(撮影/張 理恵)

 東京パラリンピック以降、「一日一日を大切に、一年一年自分ができることをやっていこう」と、地道にトレーニングに励んできた倉橋は運動量とスピードが増し、加えて、練習内容や休憩の取り方など試合に合わせたコンディション調整がうまくできるようになったことがパフォーマンスの向上につながっていると話す。その成長ぶりはケビン・オアーHC(ヘッドコーチ)が男子選手と見間違えるほどだ。

 この日のオーストラリア戦には、「相手の(障がいの重い)ローポインターにつかまらないように。そしてオフェンスにもしっかり加わることができるように」ということを意識して臨んだという。倉橋は車いす前方の「バンパー」を器用に相手の車いすに引っかけて動きを押さえこみ、攻守にわたり優位な状況を作る。

 日本は、攻撃の起点となる「インバウンド」から相手に強いプレッシャーをかけ、ライリー・バットにボールが渡るとすかさず3人で囲みパスコースをふさぐ。コート上の4人が連動して動き、ラインナップが変わっても流れを引き継ぎ、チーム一丸となって立ち向かう。

 バットも一目置く守備の要・乗松聖矢(クラス1.5)がバット(3.5)やクリス・ボンド(3.5)の行く手を阻み、研ぎ澄まされた集中力で池崎大輔が次々とトライを奪う。ベンチからは仲間の背中を押す声。第2ピリオド後半、さらにディフェンスを強めた日本が立て続けにターンオーバーを奪い、28-26で前半を終えた。

池崎大輔の存在はオーストラリアにとって脅威だ(撮影/張 理恵)

 走り合いのバトルが32分間続くのが日豪戦の定番だが、この日のオーストラリアは試合序盤から、高い位置でプレッシャーはかけず、トライエリア前の“キーエリア”でのディフェンスに徹する。
「キーエリアでのオフェンスの練習を非常にたくさん積んできた。それに対抗する準備は整えている」
 指揮官の力強い言葉通り、コミュニケーション、ポジショニング、丁寧なパス…計算され尽くした日本のキーオフェンスが見事なまでに決まる。

 勢いを失うオーストラリアに対して、自信と信頼で結束した日本のチーム力が勝り、54-50で試合終了。この対戦に並々ならぬ思いを持って臨んだ池崎大輔が「プレーヤー・オブ・ザ・ゲーム」を獲得した。

 日本は、予選ラウンド5試合を全勝で終え、プールB首位で決勝トーナメント進出を決めた。
 負けが許されない決勝トーナメントでの戦いを前に、キャプテンの池は「間違いなく初戦の時とは比べものにならないぐらいチームは完成してきている。積み上げてきたものを一戦一戦見せて、日本らしく対応していきたい。優勝しか目指してない」と力強く意気込みを語った。

 8強が出そろった車いすラグビー世界選手権。
 準々決勝の相手は、プールA・4位のニュージーランドだ。
 日本は、着実かつダイナミックに世界の頂点を目指す!

観客、そして日本で応援しているファンと喜びを分かち合う日本代表(撮影/張 理恵)