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【車いすラグビー世界選手権】連覇を狙う日本が開幕2連勝。

2022.10.14

キャプテンの池透暢はチームの精神的支柱だ。(撮影/張 理恵)

ケビン・オアーHCの「プレッシャー!」の声がチームを鼓舞する
コロンビア戦で「プレーヤー・オブ・ザ・ゲーム」を獲得した20歳の橋本勝也(右)。(撮影/張 理恵)
デンマークに勝利し喜びを分かち合う池透暢(右)と島川慎一(左)。(撮影/張 理恵)
羽賀理之をはじめとするミッドポインターの成長が日本を支える。(撮影/張 理恵)
今年6月のCanada Cupで大会MVPを獲得し進化し続ける島川慎一。(撮影/張 理恵)
初戦のコロンビア戦に臨む車いすラグビー日本代表。(撮影/張 理恵)
前回大会MVPの池崎大輔はデンマーク戦でチーム最多得点の活躍を見せた。(撮影/張 理恵)



 10月10日、デンマークで「2022 WWR 車いすラグビー世界選手権」が開幕し、世界の頂点を目指す車いすラガーマンたちの熱い7日間が始まった。

 戦いの舞台はコペンハーゲンから西に電車で2時間、人口10万人程の都市・ヴァイレ。秋深まる街のショッピングストリートは大会の横断幕や各国の国旗でデコレーションされ歓迎ムード一色だ。
「DGI Huset Vejle」を会場におこなれる今大会には12か国が出場、6か国ずつ2つのプールに分かれて総当たり戦の予選ラウンドを戦い、各プールの上位4チームが決勝トーナメントに進出する。

 車いすラグビーの世界選手権はパラリンピックに並ぶ世界最高峰の大会で4年に一度開催される。
 前回の2018年大会で日本は史上初の世界王者に輝き、世界の強豪国として大きな存在感を示した。ディフェンディングチャンピオンとして臨む今大会には、東京パラリンピックと同じ12名のベストメンバーを送りこみ連覇を狙う。

 今大会で注目されるのが女性選手の活躍だ(※)。
 東京パラリンピック以降、女性選手を起用する動きは加速しており、今大会出場の12チーム中8チーム、全体で13名の女性選手が代表メンバー入りしている(2018年大会時は5名)。
 なかでもオーストラリアは3名の女性選手を擁し、各国がどんなラインナップで、どのような戦略をとるのか期待される。

※車いすラグビーでは選手一人ひとりに「持ち点」が与えられ、障がいの程度により0.5から3.5まで0.5刻みで7つのクラスに分かれている(数字が小さいほど障がいが重い)。コート上4人の持ち点の合計は8.0点以内と定められているが、女性選手1名ごとに0.5点が持ち点の合計に加算される。

 10月11日の大会2日目。日本(世界ランキング1位 ※2022年9月16日付)は予選ラウンド2試合に臨み、コロンビア(同11位)に60-34で圧勝、大会ホスト国のデンマーク(同7位)を延長戦の末61-60で破り開幕2連勝を挙げた。

 コロンビアとの初戦は、これまで対戦歴のない相手の守備に阻まれ、日本は立ち上がりからリズムに乗ることができなかった。
 耐える時間帯が続く。しかし、コートの中で声を掛け合いながらアグレッシブなディフェンスを継続し、徐々に流れをつかんだ。
 第2ピリオドに入ると、前回大会でMVPを獲得した池崎大輔のタックルや今井友明のリーチを生かしたボールカットが光り、4連続得点をあげるなどコロンビアを引き離し26-17で前半を終えた。

 後半、勢いを失った相手に対し、日本は“水を得た魚”のように伸び伸びとコートを駆け回る。
「全員で戦えるチームになってきた」と羽賀理之が語るように、次々とコートに送り出されるメンバーの表情は自信にあふれプレーに迷いがない。
 さらに、いったい何通りの組み合わせがあるのか、と思わせるほど変幻自在なメンバーチェンジが好奇心を刺激する。ベンチとコートが一体となり1点、また1点と得点を重ね、日本は60-34で初戦を勝利で飾った。

 そして、闘志みなぎるプレーで勝利に大きく貢献した、チーム最年少20歳の橋本勝也が「プレーヤー・オブ・ザ・ゲーム」を獲得。橋本は「素直にうれしい。ただ、ここが終わりではない。自分が目指しているのはもっと上なので、これで満足せずに次の試合に向けてがんばりたい」と頼もしく語った。

 続いておこなわれた、デンマークとの一戦。
 会場は、大太鼓を鳴らし旗を振る地元・デンマークの大応援団により“完全アウェー”と化した。
 前日の開幕戦を勝利で飾り勢いに乗るデンマークは、一番障がいが軽いクラス3.5のセバスティアン・フレデリクセンのスピードとマルク・ピータスのパワー、それにスペースを突くパスで日本を迎え撃つ。

 スタートから一進一退の攻防が繰り広げられ、一瞬たりとも気の抜けない緊張感がコートを支配する。
ケビン・オアーHC(ヘッドコーチ)は「選手層の厚みと深み、選手の使い分けが今の日本チームの大きな強み」だといい、その言葉を体現するかのように、日本はラインナップを変えながら、ディフェンスに強弱をつけ相手に主導権をわたさない。
 15-17の2点ビハインドで第1ピリオドを終えるも、第2ピリオドでは終了間際、ふだんはディフェンスに徹している倉橋香衣が池透暢からのパスを受け取りトライする奮闘により27-26でリードを奪い取った。

 しかし、ホームの力強い応援がデンマークの背中を押し続ける。
 タックルを物ともしないフィジカルの強さとしぶとさは衰えることを知らない。依然としてハラハラする展開が続くが、それでも冷静に状況を判断し、ラインナップごとにやるべきことを確認し合いながらコートで戦う日本チームは崩れることがなかった。

「負けるとは一瞬も思わなかった。勝つことを信じていた」とキャプテンの池。
 第4ピリオド残り2分で日本のパスが乱れ逆転を許すも、最後までくらいつき同点に持ち込み57-57。試合は3分間の延長戦に突入した。
 先に得点を与え1点を追いかける展開。それでも焦ることなく相手のファウルでターンオーバーを奪い61-60で試合終了。会場のブーイングをも味方につけた日本が、開幕から2連勝を収めた。

 この日、大車輪の活躍を見せたチーム最年長の島川慎一は試合後、「疲れましたね。しびれたでしょ」と安堵の表情を浮かべた。
 そして「東京パラリンピックでは金メダルが獲れなかったが、(世界選手権の)ディフェンディングチャンピオンとしての誇りを持って全部勝ってやるという気持ちで今大会に臨んでいる」と闘志をのぞかせた。

< 2022車いすラグビー世界選手権 日本代表>
倉橋 香衣  0.5F
長谷川 勇基 0.5
今井 友明  1.0
小川 仁士  1.0
若山 英史 1.0
乗松 聖矢 1.5
中町 俊耶 2.0
羽賀 理之 2.0
池 透暢  3.0
池崎 大輔 3.0
島川 慎一 3.0
橋本 勝也 3.5
※数字は障がいの程度により分けられるクラス(持ち点)、「F」は女性選手。


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