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大東大が劇的勝利で好調・東洋大を下す! ラストワンプレーの逆転PGで今季初白星。

2022.10.03

インジャリータイムに入ってゴール正面で東洋大が痛恨の反則。大東大・戸野部の逆転PGが決まりノーサイド。抱き合って喜ぶ大東大フィフティーン(撮影:松本かおり)

 劇的な幕切れだった。

 一時は24点差を付けられた東洋大が猛追、後半残り1分で逆転に成功した。しかし、ラストワンプレーでPKを得た大東大がPGを決めて再逆転、そしてノーサイドの笛――。

 10月2日に関東大学リーグ戦の第3節がセナリオハウスフィールド三郷でおこなわれ、ここまで2連勝の好調・東洋大と、まだ勝ち星のない大東大が対戦した。 

 大東大は開始5分にNO8リサラ・フィナウが右ヒザを負傷して退場、22分にはキャプテンのFB青木拓己もケガで神田永遠と交代、FWとBKの主力が早々に抜けるピンチ。それでも風下から有効なキックで敵陣に入り、ボールをキープして試合を優位に進め、17分にはスクラムからNO8にさがったLOサイモニ・ヴニランギがサイドアタックから東洋大の5人のタックラーを蹴散らしてそのままトライを挙げた。

 25分には東洋大のハイパント処理のミスに乗じて、アドバンテージからSO落和史のパスキックを大外ライン際でキャッチしたWTBペニエリ・ジュニア・ラトゥがそのままインゴールに飛び込んで得点を重ねた。

 試合の主導権を握った大東大は、30分にはラックを連取、最後はSO落から二人飛ばしでパスをもらったFB神田永遠がタックルをかわしてトライ。ゴールも決まって21-0で前半を終えた。

 一方、この日2試合ぶりに先発の司令塔を任された東洋大SO土橋郁矢は「僕たちはディフェンスが得意なので、エリアを取りつつ自分たちの得意なディフェンスでそこから流れをつかもうと思っていましたが、前半は自分たちのミスでエリアが取れなくて相手ペースになってしまった」と前半を振り返る。

前半、大東大の攻撃の起点となったCTBペニエリ・ジュニア・ラトゥ(撮影:松本かおり)

 東洋大はチャンスはあるものの、なかなか得点に結びつけられないいやな流れが続いたが、前半終了間際、CTB大島暁がチームメイトに声をかけた。

「今日、楽しんでないな。この環境でラグビーできることに感謝して楽しむのが自分たちのチームだろ」。

「この一言でチームの雰囲気が変わりました」と齋藤良明慈縁主将は振り返る。

 大東大に先にPGで追加点を許すも、後半に強い東洋大が徐々に本領を発揮。「後半は強みにしているので、ボールをたくさん動かしてどんどん攻めていこう」という福永昇三監督のプランどおり、テンポアップした球出しからスピードのある杉本海斗、モーリス・マークスの両WTBを中心に勢いのあるアタックが機能し始め、ディフェンスも前に出て体を当て、大東大のアタックの足を止めた。

 そして19分、相手陣ゴール前ラインアウトからモールを押し込み、変わったばかりのPR小川雄大が左隅にトライ挙げると、徐々に流れは東洋大に。29分にはFWとBKがつないでゴール前に迫ると、最後はタテに走り込んだNO8梅村がもぐって連続得点を挙げた。

 こうなると試合の流れは東洋大ペース。大東大は東洋大のスピードのあるアタックのまえに完全に受けに回り、34分には東洋大が自陣ラインアウトからディフェンスのギャップを突いてWTB杉本がスピードに乗って抜け出し、FB石本拓巳につないで中央にトライ、ゴールも決まって19-24と追い上げた。

「後半10分くらいから敵陣でプレーする時間が多くなり、その辺から流れが作れたのかなと思います。後半は本来の自分たちのラグビーができるようになりました」(齋藤主将)

 さらに勢いに乗る東洋大は、中盤ラックからSH神田悠作が抜け出し、CTB大島につないでゴール前まで迫る。後半40分過ぎからは大東大をゴール前にくぎ付けにし、PKを得るとゴール前のスクラムを選択。「スクラムが自分たちの強みだと思っているので、自分だけでなくFW全員がここで絶対取って逆転するんだという気持ちで臨みました」(齋藤主将)

 そしてスクラムを一気に押し込みNO8梅村がボールをインゴールで抑え、WTB杉本のゴールも決まった。東洋大が連続4トライでついに逆転に成功した。開幕から2連勝、好調の東洋大を象徴するような鮮やかな逆転だった。

後半44分、東洋大が大東大スクラム押し込んでNO8梅村柊羽が同点のトライ。WTB杉本海斗のコンバージョンキックも決まり26-24と逆転に成功。勝負あったかと思われたが…(撮影:松本かおり)

 しかし、ドラマはここで終わらなかった。

 大東大のキックオフで試合が再開、10メートルライン付近に高く上がったボールをLOサイモン・ヴニランギがキャッチ、大東大がボールをキープし攻め続け、最後はゴール正面30メートル付近で東洋大のノットロールアウェイの反則を誘った。

 PGが決まれば大東大の逆転。外れれば東洋大の勝利。勝負の行方はこの日すべてのキックを決めて好調のCTB戸野部の右足に託された。

「場面的には去年の同志社の試合(大学選手権4回戦。終了間際に大東大がトライで2点差に迫り、コンバージョンキックが決まればトライ数で大東大が準々決勝に進出だったが、右端からのゴールは決まらず大東大は敗退)と似ていたんですけど、チームメイトも“思いっきり蹴れ”とアドバイスしてくれて、蹴りやすかったです」(戸野部)

 そして思い切り振り抜かれた戸野部の右足から蹴りだされたボールは、ゴールポストの真ん中に吸い込まれていった。

劇的な逆転PGを決め、プレーヤーオブマッチに選ばれた大東大CTB戸野部謙(撮影:松本かおり)

 ゴール成功の笛に続いてノーサイドの笛。グラウンド中央には抱き合って喜ぶグリーンのジャージーの輪ができた。

「勝つことがこんなに難しい物なのかと痛感しています。最後まで諦めずに頑張ってくれた選手たちに感謝したいと思います」と大東大・日下唯志監督は選手たちを称えた。

 前半にケガでピッチを離れた青木主将も「しんどい時間帯は80分の中で絶対にある。みんなで我慢して、独走されてもみんなが帰ってギリギリのところで倒す場面もあったので、そういうところでみんな気持ちは切れてなかった。選手ひとり一人がリーダーになって声を掛け合って戦っていたので不安はなかったです」と後半の苦しい時間帯を振り返った。

 チームは開幕から2連敗。選手が中心になってミーティングを開き、自分たちの目指すところを再確認して東洋大戦に臨んだ。青木主将は「法政、流経と負けて、これから一戦一戦大事にしよう話し合い、チーム全員のそういう気持ちが今日80分間グラウンドで発揮されたんじゃないかと思う。目指すところは大学選手権なので、この勝利をしっかり次につなげたい」と価値ある勝利を総括した。

 一方、一度は24点差まで離されたが、後半は自分たちの持ち味をいかんなく発揮し試合をひっくり返した東洋大。最後の最後で逆転を許し開幕3連勝とはならなかったが、試合後、福永昇三監督は「残念な結果になりましたが、リーグ戦なのでこういった敗戦が経験になり、チームが一回りも二回りも成長できればなと思っています」と悔しさをにじませつつ選手への期待を口にした。「我々はあくまでチャレンジャーの身。何も恐れず、前を見て一つひとつ丁寧に進めていきたいと思っています」。

 齋藤主将も「今日の試合は率直に悔しいですけど、僕たちの目標である日本一というのは簡単に獲れないものなんだなと改めて感じました。だからこそ価値のある目標だと思います。これからもシーズンは続くので、この負けを自分たちの成長に生かしていきたいと思います」としっかり前を見据えていた。

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