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日本ラグビー協会初の代表強化拠点が福岡市に 2023年5月以降に全面開業

2022.09.30

ここがJRFU福岡トレーニングセンター(仮称)となる。場所は福岡市東区香椎浜ふ頭 🄫 BBM


 ラグビーの普及活動が盛んな福岡の地に、日本ラグビーフットボール協会(以下、JRFU)として初となる代表強化拠点ができる。
 JRFUは9月30日、福岡市と土地賃貸借に関する契約を締結する運びになったと発表した(10月に締結予定)。これまでコカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社が福岡市より土地を賃借し使用していた「さわやかスポーツ広場」をJRFUが承継し、「JRFU 福岡トレーニングセンター(仮称)」として運営することとなる。

 契約期間は10年。JRFUの岩渕健輔専務理事いわく、JRFUとしては「永続的にこの施設を使っていきたい」と考えており、契約が満了になる前のタイミングで改めて福岡市と話をすることになる。

 JRFUは当センターにおいて、(1)日本代表の強化拠点事業、(2)市民利用・ホスピタリティサービス事業の展開を予定している。福岡市との間で、「JRFU 福岡トレーニングセンター(仮称)」を通じて連携・協力関係を一層強め、ラグビーの普及促進やスポーツを通じた地域活性化、市民の健康増進に資するさまざまな企画等へ取り組み、今後の事業拡大や社会還元に向けての検討を進めていく考えだという。

 当センターが全面開業となるのは2023年5月以降の予定。
「施設そのものは段階的に改修していく。日本代表15人制だけではなくて、男女7人制、(ユースを含めた)すべてのカテゴリーが使えるが、次にあるワールドカップ、オリンピックレベルの大きなイベントとなると、男子の15人制フランス大会(ワールドカップ)になる。その前までに必要最低限のところは間に合わせていきたい。それが最初のステップになる。それ以降も、ここがハイパフォーマンスの拠点となるように、しっかりとした整備をしたいと思っている。中長期的には数億以上の(投資)金額になっていくので、事業としても成り立たせていく」(岩渕専務理事)

 この場所は、2021年末をもって活動を休止したコカ・コーラレッドスパークスのホームだった。グラウンド2面(メイングラウンドとサブグランド)、コミュニティサービス棟、トレーニングルーム、クラブハウス等が整備され、既存施設を最大限活用して、日本代表の強化拠点、市民利用・ホスピタリティサービス事業に向けた改修工事をおこなっていく。

 岩渕専務理事によれば、いわゆる強化拠点という考え方はJRFUの中でも長い間議論してきたという。代表チームの数、カテゴリーはたくさんあり、それぞれがいかに情報を共有し、集約して、代表チーム全体として強化をしていくのか。そして、レフリーや指導者、普及レベルなどにどうやっていい影響を与えていくのかというのは課題だった。2019年のワールドカップ日本大会前後から議論は活発になり、場所を探しているなかで、最終的に福岡に決まった。グラウンドやウエイトトレーニング施設等だけでなく、スポーツ医科学の設備をどれだけ入れられるかなど施設的な要件、人が集まるような形に変えていけるようなエリア的な要件などが、福岡市はJRFUが探していた要件にマッチしたという。
 それから、福岡市都心および福岡空港、ベスト電器スタジアム等の中心部から車で20~30分程度と、アクセスもいい。国際線の有無なども要件のひとつだった。それに、「いま福岡市が日本の中、あるいは世界の中でもさまざまな先進的な取り組みをしていて、世界に出ていこうとしている。我々ラグビー界も世界へ出ていこうとしており、福岡は県も含めて、考え方が非常に前を向いているということで、一緒にやらせていただけるんじゃないかと思った。市長や知事からも、『一緒になってスクラムを組んでいきましょう』と言っていただいた」と、岩渕専務理事は説明する。

 ただ、今回、福岡市に代表強化拠点ができることが決まったが、すべての合宿を福岡で実施するということではないという。女子15人制日本代表は9月、長野県の菅平で合宿をしたあとワールドカップ開催地のニュージーランドへ出発し、男子15人制日本代表は毎年のように別府(大分)や宮崎などで合宿をおこなっており、全国のさまざまな地域とも関係は続く。
 JRFUの事業遂行責任者(ラグビー担当)である中山光行CROは、「現状、各カテゴリーの合宿実施においては、合宿地の自治体および地域の方々などにお世話になっている。これまでお世話になっている合宿地も引き続き、お借りしながら、さらなる代表強化を進めていきたいと考えている」と語った。

 JRFU福岡トレーニングセンター(仮称)の事業概要は以下のとおり。岩渕専務理事は熱い思いを込める。
「いわゆる合宿施設ということではない。地域との連携、さまざまな情報の集約化、代表全体が一体となった強化、そしてなによりも、代表チームとしての、いままでなかなか持てなかった『ここがホームだ』という感覚も含めて、この拠点の中で育んでいきたいと思っている。永続的にこの施設を使っていきたいと思っているので、事業としてしっかり取り組む必要がある。長く、選手・スタッフ、それから、さまざまな方に愛されるような施設にしていきたいと思っている」

左からクラブハウス、コミュニティサービス棟、トレーニングルーム 🄫JRFU

<JRFU 福岡トレーニングセンター(仮称) 事業概要(予定)>

(1)日本代表の強化拠点事業
ラグビーの各カテゴリー日本代表が、運動・リカバリー・栄養等の総合管理を通じた選手の強化育成に資する、ハイパフォーマンス強化拠点として、メイングラウンドを活用する。当センターが全面開業となる2023年5月以降、年齢別を含めた男女各代表カテゴリーの強化活動の多くを当センターでおこなう。
また、情報分析・戦略構築等のインテリジェンス機能や海外チームとの対戦等を通した国際交流機能を整備するとともに、世界水準の指導者・審判を育成する拠点としての機能も整えていく。

(2)市民利用・ホスピタリティサービス事業
ラグビー普及振興の一環として、サブグラウンドを地元ラグビースクールや小中高校・大学ラグビー・社会人チーム等に開放、練習利用に加えて、各種大会や試合を開催する。また、日本代表と市民の交流活動や親子スポーツ教室等の各種イベントも企画していく。

 福岡市の高島宗一郎市長は「福岡市を日本代表の強化拠点とし、ワールドカップに向けた代表合宿をはじめ、男女各代表カテゴリーの強化活動をおこなわれることを心より歓迎いたします。代表選手を身近に感じ、そのトップレベルのプレーに間近で触れることは、子どもたちをはじめ、市民の皆様の夢や希望を育むとともに、市民スポーツの振興につながります。市民との交流、指導者育成や健康増進の取り組みなど幅広く連携を図り、福岡市から、スポーツを通じた元気を一緒に発信していくことを期待いたします」とコメントした。

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