ラグビーリパブリック

「悔しさ」が作った足腰。天理大・谷口永遠は、控え時代も「腐らずに」。

2022.09.30

力強いボールキャリアーでもある天理大の谷口永遠(撮影:平本芳臣)


 小さくても強くなれる。悔しさをばねに強くなれる。谷口永遠は、そう信じている。

 天理大ラグビー部の4年だ。身長173センチ、体重102キロと一線級にあっては大柄ではないが、最前列中央のHOとして「低いスクラムでプレッシャーを」。全体的に小柄かもしれないFW8人をまとめ上げ、大きな塊の下側を取る。粘り腰で耐えて、押す。

 低さという名の強さを意識するのは、ボールが動いてからも同じだ。「アクセル」。部内に伝わる用語を心で唱え、鋭い出足でロータックルを繰り出す。巨漢相手に、味方と2人ひと組で突き刺さる。

 目下、9月18日からの関西大学Aリーグに参戦中だ。2季ぶりの優勝と大学選手権の制覇を目指す。

「去年は悔しい思いしかしてないので…」

 大池中を経て入った関西大北陽高では、全国大会と無縁だった。それでも天理大では、1年目の2019年度から1軍に絡んだ。翌20年2月には、代表予備軍のジュニア・ジャパンに抜擢された。

 本人が「悔しい思い」をしたのは、それから先のことだ。

 関西5連覇と初の大学日本一を達成した2020年度、1学年上の佐藤康(現・リコーブラックラムズ東京)との定位置争いに苦しんだ。21年度には佐藤が主将となったことで、谷口は出場時間を増やせなかった。

「悔しかった。1年の頃は僕のほうが試合に出ていたので…」

 腐らなかった。日々の全体練習を前後して、スクラム、1対1の個人セッションを重ねた。ウェイトトレーニングも怠らなかった。「下半身が大事」と注力したスクワットでは、最大重量をおおよそ「220」から「240」に引き上げた。

 控えの16番として積んできた地道な鍛錬を、「個人のスクラムの強さ、キャリー(突進役として)の強さ」に昇華させた。果たして、先発の2番をつけるいまのパフォーマンスを高めている。

「(控えに回る現実を)糧にして、ずっと(佐藤主将に)勝ったろうと意識してやってきました。悔しさでやった分、身についているかなと」

 卒業後はリーグワンのクラブでプレー予定だ。苦しい時に取る態度次第で、未来をいかようにも作れると信じる。

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