シーズン開幕前から、知る人ぞ知るラグビー選手だった。
ユアン・ウィルソン。立正大の2年生部員だ。折からのウイルス禍で入国が遅れ、今年が実質的なルーキーイヤーとなる。
南アフリカはケープタウンの出身だ。2019年のワールドカップ日本大会に触れ、この国の文化に興味を持った。自身と同じパールジムナジウム高出身のピエリッチ・シーバート、ステファーナス・ドゥトイがそれぞれ立正大、流経大に先んじて入学。2人の所感を聞き、ウィルソンも来日を決心した。
「日本でプレーできることに興奮しています」
国内リーグワン1部のクラブ関係者のひとりは、「立正大のグラウンドにラピースがいるかと思った」。骨惜しみなく働くシーバートとウィルソンの2人は、南アフリカ出身で元日本代表主将のピーター“ラピース”・ラブスカフニのタフなプレーぶりを想起させるようだ。
なかでもウィルソンは身長190センチ、体重101キロと、シーバートをサイズで5センチ、4キロずつ上回る。
FW最後列のNO8を定位置とし、攻守両面で激しくそつのない仕事を繰り返す。
ボールを持つや、タックラーと正面衝突。自らを取り囲む相手を前傾姿勢で引きずり、直進する。
守りでも魅する。
接点側の走路を抑えながら、ボールが放たれる大外の走者へ強烈なタックルを打ち込む。自身と走者との間に一定の距離があっても、その間合いを一気に詰め、仕留められるだけの力、速さ、決断力がある。
正面から駆け込んでくる相手は堂々とつかみ上げ、球出しを遅らせる。
「ボールを持って走ることも、ディフェンスも自分の強みだと思っています」
9月24日、本拠地に近い埼玉・熊谷ラグビー場。8季ぶりに昇格した関東大学リーグ戦1部の第2節で、4連覇中の東海大にぶつかった。21-47と2敗目を喫するも、随所に持ち味を発揮した。
数的不利を作られて好走者の突破を許したり、失点後の円陣の近くで所在なさげになったりしてもいたが、その問題は時間が解決するか。いまのウィルソンは、慣れない異国で公式戦に臨んでいる。
「日本の選手はスキルがある。一緒に励まし合ってプレーするのが楽しいです」
持ち前の献身性を表現する場面を増やすほど、この国での評価をより高められるだろう。
10月1日には小田原市城山陸上競技場で、前年度4位の関東学院大と初白星を争う。