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[太陽生命]自分達の頭と体で。神奈川県女子代表(女子後期優勝)

2022.09.28

前半終了前、神奈川の島津穂実がロングランを貫いて反撃トライ(撮影:福島宏治)

大阪はサイズで神奈川に届かない分、機動力と機転の効いたプレーで対抗。好試合に(撮影:福島宏治)
後期優勝の神奈川女子代表(撮影:福島宏治)

 3年ぶりの舞台に笑顔が咲いた。9月17日から19日まで水戸ケーズデンキスタジアムでおこなわれた太陽生命カップ。第13回全国中学生大会で、神奈川県女子代表が、女子後期ブロック(7人制)優勝に輝いた。

 感染症の蔓延で過去2回が中止となったこの大会、今回は対策のため、中学、スクール(ともに12人制)、女子(7人制)とも、前期と後期の日程に分かれてそれぞれに優勝チームを決めた(6つの優勝チームを表彰)。女子は4チーム総当たりで、各チームが2日間で3試合をおこなうフォーマットとなった。

第13回全国中学生大会の結果(外部サイト:日本ラグビー協会)

 神奈川、大阪、北関東、長崎が入った女子・後期のリーグ戦も激戦。特に、優勝した神奈川、大阪の争いが白熱した。大阪は夏の対戦で神奈川に敗れている。奇しくもリーグ戦最終戦が神奈川との優勝決定戦となった。試合は、神奈川が19-10で大阪を破って優勝を決めた。

「選手が好きなようにプレーする。ただし、中途半端ではなく、それをやり切る。出た結果をまた自分達で考える。そんなサイクルでやってきました」(神奈川・小阪ヘッドコーチ)

 身体能力と、それを突き動かす陽性のマインド。神奈川が大阪とのデッドヒートを勝ち抜いて優勝を決めた。

 勝った方が優勝をさらうゲーム。神奈川と大阪のリーグ最終戦(7分ハーフ)は終了前まで優勝の行方が分からない展開となった。

 ショートサイドを突く工夫を凝らしたプレーで2トライを先行した大阪に対して、神奈川は決して焦らず反撃。前半に1本を返して神奈川7-10大阪で折り返した。後半3分には、染谷真唯が左タッチ際まで仕掛けた勝負が起点となりトライ(G)。14-10と逆転する。大阪のターンオーバータックルなどに苦しみながらも、最後は自陣に差し込まれるピンチを、相手のミスと思い切ったランで打開、逆襲トライで突き放し、インジャリータイムの長い攻防を経て勝利を手にした。

 神奈川女子がU15として強化を始めたのは今年1月。まずは半年後を一つの区切りにおき、中間のレビューを経て、東日本大会へ。さらにブラッシュアップして9月の太陽生命を迎えた。チームは県内のラグビースクールに点在する女子選手たち。各チームでは男子の中で奮闘している。

 そして神奈川女子は、あくまで自分達で考える、決める、やり切ることにこだわった。これは小阪ヘッドコーチら指導陣の方針によるところが大きい。

「リーダーやりたい人は手をあげてと言ったら、5人も手をあげるんですよ」と結成当初を振り返る。「誰も削らず、みんなリーダーにしました。その中でキャプテンを後で決めた」

 指導陣は先述の一つひとつを選手に託す。ただし、結論が出るまでそのやり方を貫く。結果を受けて自分達で振り返り、次のステップに進む。大人からももちろんいろいろな助言は投げかけた。決める、やり切るのは選手たち、のスタンスにこだわった。

「すごく楽しかったです。今も楽しいです」。最終戦を控えた疲労の中で、浅利主将は屈託がない。みんなで知恵を絞ってきたから、交代選手も遜色なく動けると感じていた。

 男子とプレーしていれば、コンタクトはみな、自信を持って臨めるのでは? と思いがちだが、混成でのプレーにはデメリットもある。筋力、パワーでどうしても苦戦する女子は、優れた選手でも、SHかWTBに置かれるケースが多い。ファーストレシーバーとして試合をコントロールしたり、CTBの位置でラインを背負って攻守の駆け引きをする機会はどうしても少ない。圧力のかかる中でのハンドリングも経験量に乏しい傾向があるという。

「だから、1月から今まで、めっちゃ上手になりました」。主将のPR浅利那未は相模原ラグビースクールで3歳の頃にラグビーを始めた。バレーボールも並行してプレーし、空中戦には自信がある。自分も、仲間たちも、今年に入ってからの練習でそれが開花していくのを感じていた。もともと足の速さや敏捷さ、空中感覚などバランスのいい選手たち。女子同士、セブンズの個人戦術を磨く中で上達していった。

 所属チームと代表チームを両立して過ごしてきた9か月と、大会2日間を走り切って、優勝まで手に入れた選手たち。神奈川女子では年末の全国ジュニアを目指して、翌週から12人制の強化が始まる。

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