グラウンドではプライドをかけて全力でぶつかり合う。ゲームが終わればかけがえのない時間を分かち合った大切な仲間だ。
9月27日。埼玉県の熊谷ラグビー場メイングラウンドで、オーストラリア高校選抜と東福岡の試合が行われた。来日したのは、この夏に開催されたオーストラリアの全国高校大会で活躍した選手の中からセレクトされた、26人の精鋭たち。
日本在住経験があり、現在はニューサウスウェールズラグビー協会のエグゼクティブ・アドバイザーを務めるピーター・ギブソン氏の「オーストラリアの高校生たちに日本のラグビー文化を体験させたい」という思いから、今回のツアーが実現した。
「日本のラグビー文化は、世界でも唯一といえる特別なものです。その文化に触れることはオーストラリアの高校生にとって貴重な経験になる。彼らにとって生涯忘れない思い出になると思います」(ギブソン氏)
ギブソン氏と親交のある埼玉ワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督の推薦で、東福岡が対戦相手に指名されたこの一戦。試合は序盤から一発一発のコンタクトに両者の意地が立ち上る熱戦となった。
開始3分、東福岡のラインアウトモールにオーストラリア高校選抜が懸命に体を差し込んでグラウンディングを阻めば、14分にはオーストラリア高校選抜のたたみかけるような猛攻に東福岡がビッグタックルを連発し、ターンオーバーを勝ち取る。
最初のトライが生まれたのは17分。オーストラリア高校選抜がターンオーバーのターンオーバーから好機をつかみ、ギャップを抜け出したSOジェイ・イングルトンがポスト右に飛び込む。
東福岡も直後の19分、ラインアウトからBKのサインプレーであざやかに大外を崩し、FB石原幹士が右中間にトライ。5-7と詰め寄ったが、オーストラリア高校選抜は22分にラインアウト起点のスピーディーな連続攻撃でトライを加え、ふたたびリードを広げる。
その後は東福岡が敵陣でチャンスを作るも、相手の卓越した個の力にあと一歩を押し切れず、膠着したシーンが続く。すると31分、東福岡のロングパスをオーストラリア高校選抜のWTBフィン・ローソンが好判断でインターセプトし、約50メートルを独走。21-5として前半を折り返した。
後半も先に得点を挙げたのはオーストラリア高校選抜だった。2分、巧みなオフロードからFBライリー・ラングフィールドが抜け出すと、8分にもラングフィールドが好走しインゴールへ。このトライで点差は33-5まで広がった。
それでも東福岡は気持ちを切ることなく懸命にファイトし続け、26分にゴール前のペナルティからFWが近場を押し込んでトライを返す。
さらに終了間際にも流れるような連続攻撃でゴールラインに迫ったが、ここはオーストラリア高校選抜の渾身のカバーディフェンスにグラウンディング寸前でタッチに押し出され、惜しくもトライはならず。33-10の最終スコアでノーサイドとなった。
日本到着から3日後の試合で、底力をいかんなく披露したオーストラリア高校選抜。とりわけ目を引いたのは、一人ひとりの対応力と集中力の高さだ。ゲームが進むにつれて局面の攻防で優位に経ち、要所できっちりと得点を重ねる試合運びはさすがだった。
東福岡も敗れたものの、点差以上に拮抗した戦いを展開し、あらためて地力の高さを示した。「お互い本気のゲームで、すごくいい経験をさせてもらいました。勝てなかったのは悔しいですが、いいディフェンスができた。ここで体感したことを今後につなげたい」と藤田雄一郎監督。これから迎えるクライマックスのシーズンに向け、確かな手応えをつかんだようだ。
試合後はアフターマッチファンクションも催され、親交を深めた両チームの選手たち。ここ数年はコロナ禍により、この世代の国際交流の場がことごとく失われてきた。あらためてラグビーのよさを再確認するとともに、こうした経験がいかに若者を成長させるかを実感する機会となった。