「正しくないことは何だったのか、その問いを彼ら自身が持っていた」
前節、昇格チーム東洋大に敗れてからの2週間を、東海大・木村季由監督はそう振り返った。
9月24日、熊谷ラグビー場で関東大学リーグ戦の東海大vs立正大戦がおこなわれた。結果は東海大47-21立正大で、東海大が7トライを奪う圧勝。東海大は9月11日に、29年ぶりの1部復帰を果たしたばかりの東洋大に足をすくわれ1敗で迎えた第2節だった。東海大がリーグ戦5連覇を見据えるのに対し、立正大もまた2部からの昇格チームという構図だ。
「前半30分までは、相手のミスが起点とはいえ、自分達のラグビーができていた」と伊藤峻祐主将(東海大)。相手の中盤からのキックを受けてはボールを保持して、ランとサポートで相手を切り崩した。ラインアウトからのモールでも重さや結束力を見せて前半29分までに6連続トライ。試合の趨勢を決めた。
キャプテン伊藤峻祐はそれ以降の苦戦を殊勝に振り返る。「前半30分から後の時間帯は、最後まで思うようにいかなかった。自分達から崩れてしまっていた。初戦の経験で自分達のすべきことははっきりしているので、また自分達に矢印を向けて、いい準備をしたい。練習からしか、変われないので」
7位相当の立正大は、チャンピオンチーム相手に健闘した。勝負を考えれば開始30分で42失点はとてつもなく痛い。しかし、そこで気持ちを切らさず、自分達のラグビーをもう一度と、立て直した。
「今年だけでなく、去年から取り組んできたのが、前に出るディフェンスでした」(立正大・堀越正巳監督)。それが通用する部分もあったことが、立正大の収穫だ。前半31分から後半31分まで、東海大にスコアを許さず、3トライ21得点を挙げてみせた。
立正大・陣内源斗(みなと)主将は、6トライを失ってからチャレンジのマインドを保てた理由について「もともとこの試合のターゲットとして、80分間チャレンジし続けようというテーマを挙げていた」と明かす。「序盤は、こちらが蹴っても蹴り返してくれず、相手のランに対応できない場面もあったが」。東海42-0立正となってからはややオーソドックスに蹴り合った東海大。このシフトチェンジが立正を勇気づけた。
立正大はボールを持って攻め、前に出るタックルも決まり始め、相手のミス、スクラムでの優勢も手伝って、後半10分までに3つのトライを奪った。手応えをつかむのには十分な成果だった。王者・東海がエンジン全開で向かってきた序盤の失点は、仕方がない面もある。総合力にはやや開きがある中で、挑戦者が自分達らしさを出した試合だった。
一方、東海大も着実な「回復」を見せた。スクラム以外の局面では攻守ともに相手を一歩も二歩もリード。プレーヤーオブザマッチを獲得した3年のSO武藤ゆらぎを指揮者に、FWの前進からBKの力強いラン、前にスペースが空くやサポートを生かす自在なランとパスで、相手を翻弄した。
「意識するだけでは足りない部分があることがわかった」と木村監督。しきりに反省を口にする学生を監督がかばうコメントもあり、今後の練習のクオリティを上げることで成長しようという姿勢には、指導者、学生の一体感も感じさせた。
東海大は次週、法大と対戦する。法大は昨年6位で今季は開幕2連勝。大東大(昨年3位)、日大(昨年2位)を破って好調を示している。