雨煙の中で、山岡篤樹は毅然としたリーダーだった。
激しい雨にも耐えるパススキル。ウイング経験もあるスピード、判断力を活かした果敢な持ち出し。
仲間のトライ後には、自陣で最初にウォーターボトルを手に取り、帰ってきた仲間を的確なフレーズで引き締めた。
本郷高校から早稲田大学。東京ガスで28歳になったスクラムハーフは9月18日、横河武蔵野アトラスターズとの「トップイーストリーグ」Aグループ開幕戦に先発。リザーブの鈴木達哉主将に代わりゲーム主将を務めた。
東京ガスは昨季、2009年入社の長尾岳人などベテランを含めた9選手が退団。リーダーズグループに入った山岡ら、中堅・若手への期待がより大きくなった。
「これまで引っ張ってくれた長尾さんたちが退団して、今は全員でチームを作っていこうという良い雰囲気でやっています。中瀬さん(真広/監督)も選手主体のチーム作りをサポートしてくれていて、チームとして成長できています」(SH山岡)
横河武蔵野との開幕戦は30−10で勝利した。序盤に10点をリードされたものの、試合が進むにつれて強力スクラム、優勢のキックゲームからペースを握った。
「最初こそ受けてしまいましたが、スクラムやエリアマネジメントでしっかり敵陣に行けました。前半の後半からやりたいことが出せたことが勝因でした」(SH山岡)
SH山岡は前半32、34分の連続トライをアシストし、ゲームチェンジャーとなった。
アカクロの血が流れる。毎年早慶戦、早明戦を観戦するという早稲田大出身の両親の下、「早稲田でラグビーをやる」ためにラグビーを始めた。
念願叶って入学した早稲田大では、4年時には「ケガ人が多かった」(SH山岡)ことからウイングを経験。大学選手権にも岡田一平主将(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)や藤田慶和(三重ホンダヒート)ら同期と先発に入り、11番を背負った。
「ウイングは(早稲田大の)4年生だけでしたが、外から見えること、考えることは違うのでウイングの経験がいま活きています」(SH山岡)
横河武蔵野戦の前半32分には鋭い持ち出しで2対1を生み出し、WTB新居良介のトライを演出。複数ポジションを経験した山岡の判断力、度胸が光った。
東京ガスのリーグ戦は残り7試合。12月10日の最終戦は、昨季2敗しているヤクルトレビンズとの2戦目だ。
「みなさん強いチームです。『自分たちのラグビーをすれば勝てる』という自信をもって一戦一戦闘って、最終的にトップイースト優勝ができればと思っています」
リーダーの一人として、新章に入った東京ガスを勝利に導く。