もともと周りを活かすのが好きだ。スペースへのキックで戦うエリアを前に進めたり、防御の死角へのパスで味方走者を快適に走らせたり。千葉の流経大柏高を経て入った筑波大では、ルーキーイヤーの昨季から公式戦に出ている。
浅見亮太郎。今季はその資質を最大化すべく、コンバートに踏み切った。
昨季プレーした司令塔のSOに優秀な同級生や下級生が揃うのを踏まえ、嶋崎達也監督に「自分のプレーの特徴を活かし、自分がバチバチ行けるところ(はどこか)」と相談。SOの隣でチャンスを作る、インサイドCTBに転じた。
「身体を当てながら、ダブル司令塔みたいな感じでやっています」
相手とぶつかり合う場面が多いポジション柄、肉体改造にも着手した。
筑波大は選手寮を持たない。筋力トレーニングや食事管理といった身体づくりは、個人の努力に委ねられる向きが強い。
浅見は入学当初、新入生を対象にしたミーティングで「自律」の大切さについて訓示された。ここで覚悟を決めた。
「ルールが少ないからこそ、自分で自分を高めていかないと試合にも出られない」
大学で履修する栄養学の授業を参考に、ひとり暮らしの部屋でおかずを作り置き。最近ではチームで探した支援者による「朝食プロジェクト」のおかげで、高たんぱくな弁当を安く買えるのが嬉しい。
全体練習後や授業の空き時間には、ルーキーの楢本幹志朗とペアを組んでグラウンド脇や大学構内のジムで汗を流した。体重は前年度比で「4~5キロ」も増やした。
9月10日、東京は駒沢陸上競技場。加盟する関東大学対抗戦Aの初戦で、人垣に突っ込む形でトライも奪った。試合は昨季全国準Vの明大に22-33で敗れるも、2度ゴールラインを割ったとあり後ろ向きではない。
残された試合は勝ちに行きたい。目指すは前年度に逃した大学選手権進出、さらには初の日本一だ。
まずは18日。群馬の敷島公園サッカー・ラグビー場で対抗戦第2節をおこなう。対する早大を、浅見は「展開力では日本一」と見る。
「一戦一戦、大事に勝つ。『惜しかったね。次、行けるよ』では意味がなくて…。まずディフェンスから、筑波大らしく身体をバチバチ当てにいく。ターンオーバー(攻守逆転)を起こして、自分たちのアタックを…」
敵からボールを奪い返す。ボールを敵陣ゴールラインの向こうへ届ける。その両方のエリアで、浅見は重責を担う。