新型コロナウイルスが世界的に大流行した影響で1年延期となった「ラグビーワールドカップ(RWC)2021」が来月、ニュージーランドでキックオフを迎える。女子15人制ラグビーの最高峰舞台。開幕まであと25日となり、2大会連続5回目のワールドカップ出場となる女子日本代表“サクラフィフティーン”の大会登録メンバー32人が発表された。
元女子カナダ代表のレスリー・マッケンジー氏が2019年1月にサクラフィフティーンのヘッドコーチ(HC)に就任して以来、109人の選手が代表活動に参加してきた。浅見敬子ナショナルチームディレクターいわく、前回の2017年ワールドカップ時は、日本の国際的な経験値は最低レベルだったが、強化費は10年前と比べて8倍に増え、マッケンジー体制となってから海外遠征は5回(RWC2021のニュージーランド遠征を含む)実施、かつてはアジアの国と対戦することが多かったが、ヨーロッパの強豪や世界ランキング5位(当時)だったオーストラリア代表ともテストマッチをおこなえるようになった。重ねた合宿の数は27回、集合日数は約280日。長い道のりを経て選ばれた選手たちがワールドカップに挑む。
浅見ディレクターは9月13日の会見で、「2019年からレスリー ヘッドコーチが本当に丁寧にチームを強化し続けてくれた。その真価がいよいよ発揮できる舞台に挑むということで、チーム全員嬉しく思っている」と語った。
現在、長野県・菅平で実施中の強化合宿には36選手が参加。そこから32人に絞られた。
「選抜した32人に関しては、私たちがプレーしたいスタイルを実現できる選手を選んだ」とマッケンジーHC。「ワールドカップは非常にフィジカルな大会になると予期しているが、おそらく、日本は最もサイズが小さいチームなので、その分、強靭であることが求められる。けがやその他の理由で誰かが欠けたときにしっかりカバーできる32人を選んだ。あと、もう一つの要素としては、トレーニング中にしっかりモメンタム(勢い)を与えてくれた選手を称賛したいという気持ちもあってセレクションをした」
23人にとっては初めてのワールドカップ。主将のPR南早紀、PRラベマイまこと(旧姓・江渕)、LO高野眞希、FL長田いろは、ユーティリティFWの鈴木実沙紀と齊藤聖奈、SH津久井萌、SO/CTB山本実、そしてCTB鈴木彩香は前回大会を経験している。
「ヘッドコーチに就任してから目標に掲げていたのは、このワールドカップに向けての選抜の過程が非常にチャレンジングになるように今まで指導してきた。ポジションで人を選ばなければいけないときに、難しいことに直面するようにスコッドの人数も増やしてきたし、選手たちのフィジカルを上げてハイレベルな戦いをすることを目標としてきた。なので、いまこの段階で、完ぺきではないところもあるかもしれないが、とても満足している。フィールドでお見せできるレベルのラグビーをしてくれると信じている」(マッケンジーHC)
この日の会見で、特に注目している選手は誰かと訊かれた指揮官は、SH阿部恵、PR加藤幸子、そしてユーティリティBK松田凜日の名前を挙げた。
「メグ(阿部)のプレースタイルは一貫性があって、テンポを生み出し、世界を驚かせるようなパフォーマンスを見せてくれるのではないかと思っている。サチコ(加藤)はプレミア15(イングランドの女子リーグ)でプレーし、日本人選手がどういうことをできるかというのを世界に見せてきたひとり。引き続き同じようなことができるのではないかと期待している」
そして、CTB、WTB、FBと複数ポジションでプレーできる将来性豊かな20歳の松田については、「彼女が快適にプレーできるポジションにおいて、どういうことができるのかというのを見せてほしい。15人制の経験は比較的浅く、長い間セブンズ(7人制)で経験を培ってきた選手なので、彼女がベストパフォーマンスを発揮できるように、周りにしっかりしたサポートを置きたい」と述べ、ワールドカップでの活躍を期待する。
日本ラグビー協会は中期戦略計画2021-2024で、今大会の目標をベスト8進出としている。この日の会見で指揮官は「ベストなラグビーをお見せしたい」と述べ、具体的な数字は言わなかったが、「戦えるチームになった」と自信を持つ。
日本が世界にアピールできるもの、強みは、ディフェンスとスピードだ。
「国際レベルで戦うには、ディフェンスが強くなければならない。いままで日本はディフェンスが強みとはとらえられていなかったと思うが、いまは強みと言えるほど上達してきている。選手たちも誇りと自信を持って臨んでもらいたい。そこをさらに良くしていくことが必要だと思う。アイルランドに57失点したのは一度忘れましょう(笑)。そこからも学ぶことができたと思っている」
8月、世界ランキング7位(当時)のアイルランドに静岡で22-57と完敗した翌週、日本は秩父宮で同じ相手を29-10で倒した。今夏のテストシリーズで、間違いなくたくましくなった。
そして、俊敏でテンポの速いラグビーができるサクラフィフティーンは、観る者を興奮させるだろう。
ラグビーワールドカップ2021で日本(現世界ランキング13位)はB組に入り、カナダ(同3位)、アメリカ(同6位)、そしてイタリア(同5位)と対戦する。北米の2強に比べてやや格下と思われていたイタリアは先週末、当時世界ランキング3位だったフランスにホームで26-19と勝っており、自信をつけている。日本が目標のベスト8に入るには、難敵ぞろいのB組で少なくとも1勝しなければならない。
キャプテンの南は、「前回大会では悔しい思いをしましたが、この5年間、勝利も敗戦も経験し、より強く成長したことを実感しています。ベスト8以上に入り、女子ラグビーの新しい歴史を創りたいと思います」と力強いコメントを発表した。
女子日本代表“サクラフィフティーン”は15日に開催国のニュージーランドへ向けて出発する。そして、24日には優勝候補の一角である同国代表“ブラックファーンズ”とテストマッチをすることになっており、貴重な経験として10月8日の開幕を迎えたい。
<ラグビーワールドカップ2021 女子日本代表メンバー>
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加藤 幸子(横河武蔵野アルテミ・スターズ/10 caps/RWCメンバー初選出)
北野 和子(MIE PEARLS/6 caps/RWCメンバー初選出)
小牧 日菜多(日本体育大学ラグビー部女子/3 caps/RWCメンバー初選出)
左高 裕佳(弘前サクラオーバルズ/12 caps/RWCメンバー初選出)
南 早紀(主将/横河武蔵野アルテミ・スターズ/25 caps/RWC2017参加)
ラベマイ まこと(横河武蔵野アルテミ・スターズ/17 caps/RWC2017参加)
【HO】
谷口 琴美(MIE PEARLS /3 caps/RWCメンバー初選出)
永田 虹歩(国際武道大学女子ラグビー部/8 caps/RWCメンバー初選出)
【LO】
川村 雅未(RKUグレース/3 caps/RWCメンバー初選出)
佐藤 優奈(東京山九フェニックス/6 caps/RWCメンバー初選出)
高野 眞希(横河武蔵野アルテミ・スターズ/16 caps/RWC2017参加)
玉井 希絵(MIE PEARLS/13 caps/RWCメンバー初選出)
吉村 乙華(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA・立正大学ラグビー部/5 caps/RWCメンバー初選出)
【FL/HO】
鈴木 実沙紀(東京山九フェニックス/30 caps/RWC2017参加)
【FL/HO/NO8】
齊藤 聖奈(MIE PEARLS/31 caps/RWC2017参加)
【FL】
向來 桜子(日本体育大学ラグビー部女子/2 caps/RWCメンバー初選出)
長田 いろは(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/15 caps/RWC2017参加)
細川 恭子(MIE PEARLS/7 caps/RWCメンバー初選出)
【NO8】
永井 彩乃(YOKOHAMA TKM/10 caps/RWCメンバー初選出)
【SH】
阿部 恵(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/10 caps/RWCメンバー初選出)
津久井 萌(横河武蔵野アルテミ・スターズ/19 caps/RWC2017参加)
【SO】
大塚 朱紗(RKUグレース/9 caps/RWCメンバー初選出)
【SO/CTB】
山本 実(MIE PEARLS/21 caps/RWC2017参加)
【SO/WTB】
今釘 小町(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA・立正大学ラグビー部/9 caps/RWCメンバー初選出)
【CTB】
鈴木 彩香(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/18 caps/RWC2017参加)
中山 潮音(横河武蔵野アルテミ・スターズ/7 caps/RWCメンバー初選出)
古田 真菜(東京山九フェニックス/14 caps/RWCメンバー初選出)
【CTB/WTB/FL】
伊藤 優希(MIE PEARLS/11 caps/RWCメンバー初選出)
【CTB/WTB/FB】
松田 凜日(日本体育大学ラグビー部女子/5 caps/RWCメンバー初選出)
【WTB】
名倉 ひなの(横河武蔵野アルテミ・スターズ/10 caps/RWCメンバー初選出)
【FB】
庵奥 里愛(MIE PEARLS/7 caps/RWCメンバー初選出)
平山 愛(自衛隊体育学校PTS/4 caps/RWCメンバー初選出)