ラグビーリパブリック

帝京大の3年リーダー・奥井章仁、新ポジションで「相手の勢いを消す」。

2022.09.09

ボールを持つのが奥井章仁。今季は7番をつけ帝京大を引っ張る(撮影:福島宏治)


 関東大学ラグビー対抗戦Aが9月10日、各地で開幕する。前年度の大学選手権を制した帝京大は、11日、東京・秩父宮ラグビー場で立大との初戦に挑む。

 今季も覇権争いを引っ張りそうなディフェンディングチャンピオンにあって、「チームの中心となる行動をとろう」と話す3年生がいる。奥井章仁だ。

 いつでも輪の中心にいた。枚方ラグビースクール、楠葉中を経て入った大阪桐蔭高では、2年時に全国制覇。3年目はチームの主将を務めた。

 帝京大でも1年時から主力入りし、持ち前のパワーを披露する。2年目の昨季は気持ちの昂った味方を落ち着かせたり、レフリーにプレー中の判定について質問したりと、熟練のリーダーのような振る舞いでも目立った。

 そして、約130名いる選手のうち下級生の割合が増えてきたいまは、「チームの中心となる行動をとろう」を有言実行。居残りの自主トレーニングに周りを巻き込む。仲間同士での切磋琢磨を促す。

 自分と同じFW第3列の後輩とともに、その直前までしていた全体練習のおさらい、接点の球を奪うジャッカルのセッションをおこなう。

 理由はシンプルだ。

「チームの底上げをしたい気持ちがあります。皆が同じこと(動き)ができれば、(突然のけがなどで)どんなにメンバーが変わってもプレースタイルは変わらず、強い帝京大というものをずっと出して行けると思っていて」

 組織力を引き上げると同時に、自分の可能性も広げる。ポジションチェンジに挑む。

 前年度に続いてFW第3列に入るのは変わらないが、突破役となることが多いNO8(8番)から、より下働きの求められるオープンサイドFL(7番)へ「異動」する。

 奥井の身長177センチ、体重103キロというサイズは、一線級にあっては決して大柄ではない。一方、戦う舞台のレベルが上がるほど、8番には縦も横も大きな選手が請われる。

 奥井は卒業後、国内トップ級であるリーグワンへの参戦を希望する。そのため学生のうちから、将来も任されそうな7番の位置に慣れたいと考える。

 希望を叶えてくれた帝京大の相馬朋和新監督へ感謝しつつ、タフなチャレンジを楽しむ。

「ちょっとずつは成長しているかなと感じます。でも、まだまだです。もっとディフェンスで頑張りたいです」

 厳しい自己評価の裏には、よき手本がいる。

 同じ大阪桐蔭高の出身で前帝京大副将の上山黎哉は、身長175センチ、体重96キロのサイズで強烈なロータックルを持ち味とする。相手に刺さるや、筋肉がきしむ鈍い音を鳴らす。

 現・花園近鉄ライナーズの上山を基準に定めるから、奥井は、自身の防御を「まだまだ」だと思うのだ。

「僕が見てきた7番というのは、ここぞという時に相手の勢いを消すタックル、味方の勢いをつけるディフェンスをしていたので。黎哉さんもそうです。あの低さで(タックルに)行けるのは凄いと思っていて、僕にはまだそういうところ(シーン)がない。対抗戦、大学選手権に入って、もっといいディフェンスができたらと思っています」

 帝京大は、2017年度まで全国V9の偉業を達成。当時から激しいコンタクトを命綱としてきた。奥井はその伝統を味方に伝えながら、自らも率先して身体を張る。