ラグビーリパブリック

同大・大島泰真、新人司令塔として躍動も「まだフィットしていない」と向上心。

2022.09.02

京都成章から同大に入学の1年生SO、大島泰真。新天地で伸びに期待(撮影:福島宏治)


 新しいステージで、新しいチームの攻めを引っ張ろうとしている。同大ラグビー部1年の大島泰真は、厳しい自己評価を下していた。

「感覚、ボールのもらい方…。いままで(高校時代)と違うことをしていて、まだチームにフィットしているとは思えないです。徐々に、よくしていきたいです」

 話をしたのは8月21日。合宿先の長野・菅平高原、サニアパークは「Cグラウンド」でのことだ。グラウンド脇のテントの近くで芝にしゃがみ、内省していた。

 この日は、昨季全国4強の東海大と組んだ練習試合のうち、主力同士にあたる「A戦」に先発した。

 前半22分頃には、防御網へ真っすぐ仕掛けながら大外へ球をさばいて得点を演出した。

 それ以外の場面でも、フィジカリティに長ける相手の圧力をかいくぐる技巧を随所に示した。

 2人のタックラーの間に駆け込みながらのパスで、すぐ隣の味方の快走を促す。手前に並ぶ味方の影から躍り出て、鋭い走りで複数のタックラーを巻き込む…。

 京都成章高の主将兼司令塔で、高校日本代表となった大島は、舞台のレベルが上がったなかでも生来の持ち味を発揮したのだ。

 もっとも、最終スコアは19-58。ハーフタイムの前後にチームで防御を乱し、大量失点を喫した。渦中、陣地を獲得しながら攻撃時間を確保すべく、高い弾道のキックとその再獲得を試みたが、ただ東海大にボールを与えて終わることもあった。

 大島は潔い。

「(同大にも)いいところはあったっすけど、いいところがちょっとだった。それをもっと増やしていけるようにしたいです。簡単に相手にボールを渡すことも多かったので、キックの使い方、精度(を見直し)、マイボールの時間を増やさないといけなかった。もっと勝つゲームを作っていかないと。もっとチームが勝てるようなリードをしないと」

 入学して間もないのに、チームの結果責任を背負う覚悟がにじむ。チームの戦い方に沿って、チームを勝たせる。それが10番の仕事だ。

 ラグビーを第一に考えられる選手。稀有な新人をそう称したのは、宮本啓希新監督だ。

 東京サントリーサンゴリアスの採用担当として日本代表の齋藤直人、中野将伍らの加入に携わった宮本は、菅平合宿中、大島の意欲に感心した。選手のコンディションを鑑みてオフの時間帯を設定したところ、自分だけ身体を動かしたいと申し出てきたようなのだ。

 おこなったのは、高校時代から取り組む独自のトレーニングだ。

 自分が小柄なのを前提に大男に競り勝つべく、コンタクトシーンでの身体の使い方を磨く。

 公式で「身長170センチ、体重76キロ」の大島は、「口で説明するのは難しいですけど」と、こう続ける。

「身体の動きを、作る。僕は小さいので、工夫していかないと。ガチンコでバーンと当たるのでは、いくら頑張っても限界がある。(衝突の瞬間に)身体をひねって、その時にうまく力を伝えるとか…そういったところに、僕はフォーカスしたい」
 
 さかのぼって1月3日、東大阪市花園ラグビー場。高校生活最後の試合となった全国高校大会準々決勝でのことだ。

 優勝候補と目された東福岡高に敗退も、わずかなチャンスをそのスペース感覚でスコアに転化していた。25-31。

 もともと京都成章高がタフな防御を伝統としてきたなか、この日に関しては連続攻撃で魅したとの側面もあった。

 その流れを作った大島は、ソーシャルディスタンスを保って取材する報道陣に「皆さんも、びっくりしたでしょう」と向けた。

 その折にあった即席のインタビューでは、相手で防御が不得手な選手を事前に分析していたこと、その選手の周囲に味方を走らせたこと、ペナルティキック獲得後は速攻を選んで相手の体力を削ろうとしたことといった、定評のある観察眼に基づく見解を、ストレートな言い回しで明かしていた。

 その場に集まった大人たちへのサービス精神もあってか、話題によっては笑みを浮かべていた。涙を流す他の同級生とは、思いが一緒であったとしても雰囲気が違った。

 負けてなお貫録を示した。

 ただ、本当に目指すのは目の前の試合を制することだ。

 時を経て迎えた東海大戦後、改めて目標を聞かれる。

「それは、個人として、ですか」

 まずは落ち着いて聞き手の意図を確認し、組織を勝たせる者のあり方を言葉にした。

「個人的には、もっとチームにフィットをする。まだ自分の強みは出せていないと思うので、もっと余裕を持ってプレーできるようにしたいです」

 チームが加盟する関西大学Aリーグは、9月18日に開幕する。

 本格的な大学デビューを間近に控える大島は、8チーム中4位だった昨季以上の白星をチームに授けたい。

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