在日コリアン・ラガーマンの祭典「第11回在日コリアンラグビーフェスティバル」が8月27日、東京・小平市の朝鮮大学校グラウンドで開催された。高校、大学、社会人6試合をおこなった。
〆はやっぱり「焼肉」で参加者、和気あいあいに。試合終了後、大学敷地内で参加者が待ちにまった「焼肉」の閉会式。朝鮮大食堂の秘伝の「たれ」につけたホルモンやカルビを七輪で焼く。ビール、チューハイともマッチする味。初めて食べた元トップリーガーたちも「美味しい」と唸る。在日フェスが開かれる各地で「焼肉」が提供される。「ここ朝大の味が一番」と言われている。
閉会式ではリーグワンに所属する選手たちが登壇。先の日本代表に選ばれて朝鮮学校卒業者で初めて試合に出場した李承信(リ・スンシン)の活躍が刺激になっている。「日本代表を目指します」という目標を語る選手も。
<朝鮮大が明治学院大に快勝>
大会のメインゲーム。朝大と明治学院大戦は朝大が後半逆転し40-28で制した。
関東大学リーグ戦2部と対抗戦Bの対戦。前半7分、朝大がラインアウト、モールで先制すると、5分後にもトライを奪い12-0とした。ここから明学大もエンジンが始動、ラインアウト、モールでお返しの5点をあげると36分までの3連続トライで12-21と逆転。朝大が前半終了前にラインアウトからのサインプレーで7点をあげ、19-21と迫った。
後半は朝大の時間になった。3分、明学大ゴール前で朝大ボールのスクラム。朝大がプッシュをかけると明学大の反則、すかさずタップから攻め中央インゴールへ仕留め、逆転した(26-21)。さらに12分、スクラム起点で明学大ゴールへ迫る、フォワードがピック・アンド・ゴーで進むと最後はSO金秀鎮(キム・スジン、2年)が中央へ走りこんだ。
金は高校3年時に冬の全国大会で大阪朝高が4強入りしたときのメンバー。クボタスピアーズ船橋・東京ベイのWTB兄・秀隆(スリュン)と同じコースを歩んでいる。兄も会場を訪れ後輩たちの戦いを見守っていた。「朝大でフェスが開催されてうれしい。多くの方に朝大ラグビーを見てもらえます。朝大は弟たちがいる間にもっと強化できれば」と口にした。
朝大はさらに1トライを加え、明学大の反撃を1トライに抑え40-28で快勝した。
社会人は在日クラブチームのライバル東西対決。東京闘球団高麗と千里馬クラブの争い。
試合開始からこの一戦にかける千里馬の気持ちがプレーに現れた。出足鋭いディフェンスで高麗アタックを止める。先制も千里馬、高麗ゴール前で反則を得るとタップからフォワードがインゴールをおとし入れた。さらに35分に左中間へトライし14-0、高麗もトライで7点を返し、14-7で後半へ。千里馬がギアを上げる。開始早々、ゴールラインを割ると3トライ追加し、40-7と大勝で終えた。千里馬アドバイザーの金信男(キム・シンナム)さんは「チームで勝つために本気で取り組んだ結果」と満足気だった。
クラブチームの対戦、40歳代の日本人元トップリーガーも加わったオールアウトインターナショナルと在日レジェンドの試合は、在日が奮闘した。試合終盤まで12-7とリードしたが終了前にオールアウトがトライ、ゴールを決めて12-14でサヨナラ勝ちした。
<午前中は高校生が躍動>
大阪朝鮮高と目黒学院が戦った試合は、目黒が攻守で圧倒し31-7で勝利した。
前半11分、右のラインアウトからつなぐとFLがトライを奪う。14分、20分にも大阪朝高のハンドリングミスなどから連続トライを決める。後半も2トライを追加した。大阪朝高は後半10分過ぎに敵陣ゴール前の反則を得ると、タップからプロップがインゴールへ入るも以降は鳴りを潜めた。
副キャプテンでNO8の康英世(カン・ヨンセ)は「菅平合宿の後半で修正してよくなったことができなかった。自分たちのミスで負けました。元に戻らないようにしたい」と課題を見つけたことが大事か。
東京朝鮮高は國學院久我山と。久我山は国体メンバー10名ほどが参加していない。東京朝高が36-28で制した。
東京朝高は6月におこなわれた全国7人制大会東京都予選で準優勝した。最後は早稲田実業に12-31で敗れたが、準決勝は目黒と24-24で引き分け、抽選で決勝へ。決勝トーナメント1回戦では東京高を26-21で退けていた。
試合は久我山が4分に左ラインアウトを起点に左中間へ先制トライをあげた。8分、今度は東京朝高が敵陣左ラインアウトを得る。投入したボールがこぼれ久我山へ。しかし、次は久我山のパスが乱れ東京朝高に入る。左から右へ展開するとプロップが仕留めた。14分にはラインアウトのボールをもらったSO金太仙(キム・テソン)主将が大きくゲインを切った。ラストもバックスに渡りトライ14-7と勝ち越した。4分後、久我山が再びラインアウト、モールで押し込み同点へ。リスタートのボールを東京朝高が回すと左中間インゴールへWTBが飛び込んだ。25分にはSO金が40メートルのPGを確実に決める。22-14とリードし後半へ。
2分、久我山が左ライン際を走ったWTBからパスが渡りトライ、22-21と1点差に。5分、東京朝高の右WTBがキックリターンからトライを奪う。29-21とした。久我山も3分後、7点を返し再び29-28と1点差に迫る。しかし最後の得点は東京朝高、22分にポスト右へ運んだ。
金主将は「7人制大会準優勝で、バックスで取り切る自信がついた」と言う。呉昇哲(オ・スンチョル)監督も「7人制の結果がよい方向になっている。課題はモールディフェンス。今日は久我山の主力はいませんでしたが勝てたことが大きい。朝高は30人の部員のうち中学からの経験が3人しかいません。それでも経験豊富な久我山に勝てた」。
呉監督と大阪朝高の文賢監督(ムン・ヒョン)は閉会式で「両校で花園に行きます」と誓い合った。
オープニングゲームは愛知朝鮮高の2人と東京、大阪朝高Bで組んだオール朝高が目黒B・久我山Bと対戦した。前半は久我山とあたり3トライを決めた目黒・久我山がリード。後半は目黒Bの左WTBがハットトリックトライを決め会場を沸かせた。38-0で圧倒した。
会場隣にあるサブグラウンドでは、リーグワンに所属する朝高OBの選手たちが子どもたちに「ラグビー体験会」を開いていた。地元小平のラグビースクールからも子どもたちが参加していた。