愛媛県松山市出身の24歳。高いレベルでラグビーをするために、島根の石見智翠館高、埼玉の立正大を渡り歩き、いまはアルカス熊谷に所属する。
阿部恵は8月26日、東京・秩父宮ラグビー場にいた。女子15人制日本代表の一員として、翌日のアイルランド代表戦に向けた最終調整に臨んだ。
今度おこなうのは、7月下旬から続いた国内テストマッチ(代表戦)シリーズの最後の80分だ。当日、SHのスターターを務める阿部が、特別な舞台に向かう緊張感を言葉にした。
「きょうのチームラン(連携の確認)の時、身体が力んでしまって。コーチから『リラックスを』というアドバイスをいただいた。明日はナイター(19時キックオフ)で、お客様もたくさんいると思うのですが、リラックスして自分らしいプレーができたらいいなと思います」
アイルランド代表には20日、静岡・エコパスタジアムで22-57と屈している。
今回、リベンジすべく、「相手の足が止まった時にテンポアップを」。運動量で勝負したいチームの、身長147センチと小柄で機敏な自分自身の価値を示す。
「いいパスを投げて、チーム全員を活かしていきたいです」
強力なライバルと切磋琢磨してきた。
同じSHで1学年下の津久井萌は、2017年のワールドカップ・アイルランド大会で当時高校生ながら大会ベストフィフティーンに選ばれている。阿部は初めて日本代表入りした2019年から、世界的選手をベンチマークとしてきたのだ。
「経験値は私よりはるかに上で、ゲームのなかで(課題を)修正するのが上手だなと感じます」
津久井のすごさをこう認めながら、「近くにそういう(ハイレベルな)人がいる。自分にとってはチャレンジがしやすかった。(プレーを)盗んだり、まねしたりしました」。果敢に定位置争いに挑む。
果たして密集の脇への鋭い仕掛け、速いテンポを保って的確なジャッジを下す資質といった独自の強みを首脳陣にアピール。27日は、今シリーズ3度目の先発機会を勝ち取っている。
「持ち味は、自分が仕掛けて味方を活かすこと」
サクラフィフティーンの愛称で通るこのチームは現在、10月開幕のワールドカップ・ニュージーランド大会を見据える。
5月に格上のオーストラリア代表を敵地で下し、自信を得た。南アフリカ代表、アイルランド代表などとぶつかった国内シリーズではここまで2連敗中で、通算1勝2敗とやや苦しむ。
ただし目下、発展途上にあるのが前提だ。あくまで目標は、ワールドカップでの8強入りだ。
阿部は、大舞台に挑むまでに積み上げたいものを説く。
「チームではコネクトし続けると言っています。アタックでも、ディフェンスでもひとりひとりに役割があるので、それをおこなっていく」
選手同士でよりつながり、戦術の遂行力を高めたいという。秩父宮では、勝利と同時にワールドカップ本番への手応えをつかむ。