大学ラグビーシーンの主要クラブの多くは、目下、長野・菅平高原で合宿中だ。各々が異なる狙いを持ち、練習試合に臨む。
前年度4季ぶりに大学選手権行きを逃した筑波大は、同選手権で8強入りの日大とぶつかる(8月20日)。主力にあたるAチーム同士のカードでは、16―12と辛勝。タイトな試合運びで接戦をものにした。
敵陣のトライラインから遠い位置でも果敢にパスを回す日大へ、筑波大が守りでプレッシャーをかけた。
前半の中盤あたりまでに2本のペナルティーゴールを成功させ、6―0とリード。まもなく自陣22メートルエリア右のスクラムから展開され、WTBのナサニエル・トゥポウのフィニッシュを許したが、その後に直面したピンチはしぶといタックルと接点での圧で回避した。
前半終了が近づいてくると、NO8の3年・谷山隼大がインパクトを示す。ペナルティーキックから速攻を仕掛け、目の前の防御を攻略。そのまま約55メートルを走り切り、直後のコンバージョン成功と相まって13―5とリードを広げた。
その後も筑波大は、敵陣22メートル線付近中央のスクラムから日大の反則を誘発。ペナルティーキックを選び、16―5とスコアを広げてハーフタイムに突入した。
後半は自軍側のペナルティーがかさんで自陣に釘付けとなったが、チームの伝統である防御が冴えた。
特に我慢強さが光ったのは、後半開始早々の局面だ。PRの木原優作主将を一時退場処分で欠いていた10分間を、筑波大は無失点で切り抜けた。
日大は以後も反撃を試みる。リザーブだった4年生WTBの水間夢翔による強力な突破などで、16―12と差を詰めた。
しかし、逆転はならなかった。
積極的に仕掛けたオフロードパスもミスに終わることが多く、ラスト数分間もだめ押しこそされなかったものの相手に得点機を与えていた。
勝敗がシーズンの成績を左右しない練習試合にあって、この日の筑波大はさながら公式戦モードだった。ペナルティーキック獲得後には手堅くペナルティーゴールを選び、トライ数で上回られながらも白星を掴んだ。
木原主将は淡々と話す。
「菅平合宿でのゲームでは対抗戦をイメージしていく。ここへ来る前から、そう話し合っています」
加盟する関東大学対抗戦A(対抗戦)でも学生王者の帝京大、過去16度の日本一を誇る早大といった強豪を倒そうとしているだけに、菅平でもそのシミュレーションをおこなう。
昨季は対抗戦で8チーム中6位と低迷しているとあり、木原はこうも展望する。
「日本一という目標を掲げています。日本一を狙うなら、強いひとりひとりが集まっての15人が必要。個人(の力)を伸ばしていきたいです。戦い方はコーチ陣が提示してくれていて、明確。そこで与えられた役割を、それぞれが何パーセントできるのかが大事になります」
かたや日大は、「きょうはディフェンスの上がりとコミュニケーション、アタックでは展開へのチャレンジを意識しました」とFLの平坂桃一主将。現在、元日本代表主将の菊谷崇新ヘッドコーチがモデルチェンジを試みている。前年度2位に終わった関東大学リーグ戦1部(リーグ戦)を制するにあたり、現時点では結果よりもスタイルの徹底を目指したか。
平坂は続ける。
「自分たちのペースを掴めなかったのが課題です。前半は相手のペースになるところがありました。筑波大さんの前に出るディフェンスに対して、(点を)獲りきることができなかった。収穫は、チャレンジし続けたことです。後半は1トライしかできませんでしたが、(それ以外の場面でも)いいアタックができたシーンはありました」
対抗戦、リーグ戦とも、9月上旬に開幕する。