悔しさは覚えている。東福岡高3年の大川虎拓郎は、昨年度の全国高校ラグビー大会準決勝をいまでも回想する。
1月5日、大阪・東大阪市花園ラグビー場。春の選抜大会を制して優勝候補と目されながら、東海大大阪仰星高に屈した。
開始5分で作った10点のリードを覆され、最後は22-42で沈んだのだ。この日LOで先発した大川は言う。
「やっぱり、悔しかったです。自分たちが強いと思って乗り込んでいって、最初は勝ってもいたので…」
新チームで主将を任されるいまは、ひたむきさにこだわる。
こぼれ球に飛び込む。接点へ正確に身体を差し込む…。身体能力に頼らぬ領域を突き詰めるのだ。
改めて、あの60分間を回想した。
「ルーズボールが全部、相手に入っていました。そうしたボールに先輩たちは、足をかけていました。(新チームは)そのボールを、身体を張って抑える。また、カウンターラックに入る時の角度など、ベーシックなところを練習で確認しています」
身長187センチ、体重95キロ。ブランビーヤングラガーズ時代、福岡県代表になった。地域で名の知れた中学生からなる選抜チームは、通称「ヒガシ」で練習する。相手は同部の下級生だ。
大川は感銘を受けた。後に「先輩」となる選手たちが、中学生の自分たちへも手を抜かず、真剣にぶつかってきたからだ。
「かっこよかった。自分もそうなりたいと思いました。(東福岡は)ラグビーをリスペクトして取り組んでいる。ジャージィもしっかり保管していて、ラグビーに対しての扱いが丁寧というか…」
いざ入学すると、「メリハリはある」。組織人として折り目の正しさを意識しながら、各々が快活に生きているのが「ヒガシ」らしさだ。大川はこう添える。
「ただ、リラックスしている時もモラルの範囲内です。宿舎の使い方も(気をつける)。当たり前ですが、他のお客様がいるので。藤田先生(雄一郎監督)が注意する前に、5人のリーダー陣で目を配るようにしています」
捲土重来を期して臨む今シーズン。3月に埼玉・熊谷ラグビー場で開かれた全国高校選抜大会では、決勝戦の中止に伴い準優勝に終わる。
しかし、最終日が予定されていた31日に「奇跡」を経験する。埼玉ワイルドナイツに紹介された検査機関の協力もあり、かねて対戦予定だった報徳学園と練習試合を実現。37-10で勝利した。ゲームがあったことに、ただただ感謝した。
「藤田先生は自分たちを第一優先に考えてくれる。だからこそ、報徳学園さんにリスペクトを持って試合に臨もうと思えました」
報徳学園とは、7月18日にも再戦する。今度は公式戦。長野・菅平高原での全国高校7人制大会カップトーナメント決勝だ。
大川はキックオフの攻防、接点でファイトしながら、17-31で敗れた。
「新しい発見があったので、報徳学園さんには感謝しています。ディフェンス面でのコミュニケーションの足りなさ、1対1で止める力(が必要なこと)もわかった」
脱帽しながら、課題を抽出できたことを前向きに捉えていた。15人制では今後FLで期待されるタフガイは、「細かいところにこだわる」と繰り返す。
「もっと突き詰めて、タックルミスを減らしたり、カウンターラックを増やしたりしたいです」
着実に進歩し続け、花園で頂点に辿り着きたい。