来年秋のラグビーワールドカップ2023フランス大会へ向けて強化を進める日本代表“ブレイブブロッサムズ”が、世界ランキング3位のフランス代表を土俵際まで追い詰めたが、歴史的初勝利とはならなかった。12度目の挑戦は7月9日、5万7011人の観客が入った東京・国立競技場でおこなわれ、後半30分までリードしていたが、15-20で惜敗した。
自国開催のワールドカップで悲願の初優勝を目指し、戦力を充実させる欧州王者のフランス代表は、ビッグネームを欠いた若手が多いチームだったが、テストマッチの連勝を「10」に伸ばした。
先制したのはフランスだった。前半9分、敵陣深くに入ってテンポよく攻め込み、瞬発力があるWTBマチス・ルベルが左外を振り切ってインゴールに持ち込んだ。コンバージョンも成功。
しかし、先週の第1戦で惜敗(23-42)していた日本は12分、カウンターでバックスがつないでチャンスメイクし、ディフェンダーをひきつけたCTBディラン・ライリーからオフロードパスをもらったWTBゲラード・ファンデンヒーファーが左外を駆け上がり、最後はFB山中亮平につないでトライを奪い返した。
日本は18分にも敵陣深くに入ってプレッシャーをかけ、相手の反則を引き出し、SO李承信がペナルティゴール(PG)を決め逆転した。
そして、守りでも奮闘した日本は前半最後、ハーフウェイでのターンオーバーから攻め、左サイドをCTB中野将伍、HO坂手淳史とつないでFLリーチ マイケルがディフェンダーをかわしてゲインし、サポートについていたFB山中がフィニッシャーとなり、15-7とリードして折り返した。
だが、後半早々、日本はエラーと反則で相手にPGチャンスを与えてしまい、5点差に詰められる。
その後、ピンチの場面でFLベン・ガンターがターンオーバーするなど粘り強いディフェンスをしていた日本だが、60分(後半20分)にもフランスがPGで得点し、2点差となった。
それでも、日本は勝利への執念を見せ、66分、キック&チェイスでゴールに迫ったフランスに対し、CTBライリーとWTBファンデンヒーファーが懸命に守り、チームを鼓舞する。68分にはまたもガンターがブレイクダウンで奮闘し、欧州王者を苦しめた。
しかし、その直後、PKから速攻を仕掛けようとした日本は、タップキックのミスによって相手にボールを渡してしまう。フランスはスクラムから、ボールを手にしたSHバティスト・クイユーがスクラムサイドのスペースを抜けてゴールへ走り切り、ゲームをひっくり返した。コンバージョンも決まり、15-20となった。
食らいつく日本は、74分、敵陣深くに入り、ラインアウトからボールをもらったNO8テビタ・タタフが力強く突進して青い壁を破り、トライかと思われたが、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)でグラウンディング寸前に落球していたことが確認され、同点とはならず。
77分にも敵陣深くに入ったが、得点にはつながらなかった。
その後も最後まで果敢にチャレンジし続けた日本だが、5点差で試合終了の笛を聞き、金星獲得とはならなかった。
勝ったフランス代表キャプテンのシャルル・オリヴォンは、「日本代表はプレーの強度も強く非常に厳しい試合だった。しかし、我々は日本代表をしっかり分析してきたので、その結果、勝つことができたと思う。我々は日本のプレーを止める必要があった。しっかりしたメンタリティーをもってプレーすることができたのが一番重要だったと思う。とにかく苦しかった」と戦いを振り返った。
一方、敗れた日本代表の坂手キャプテンは、「悔しいです。5万7000人の方々に入っていただいて、『今日は特別な日にしよう』と話して試合に臨みました。少し及ばない点があって……、勝ちたかったです。自分たちのラグビーはすごく良かったと思いますし、いい形でボールを運べた部分はたくさんあったと思いますけど、最後にトライを取り切るところ、スコアにつなげるところ、そこのディテールが少し足りなかったと思います」とコメント。
若い選手も、経験ある選手もたくさんいるスコッドで世界のトップレベルに挑み、いい形でゲームを進めることができた場面もあったと手ごたえを感じている。そして、課題が見つかったことも収穫だ。
最後に、ファンへのメッセージを求められ、坂手キャプテンはこう述べた。
「国立で、5万7000人の方々の前でラグビーをするというのは、僕たちにとって特別です。勝ってみなさんと喜びたかったですが、もっと努力して、勝てるチームをつくって、次の遠征に向かいたいと思います」
日本代表は今夏のテストシリーズを2勝2敗で終了(ウルグアイ代表から2勝)。秋には強豪と連戦する見通しで、欧州遠征では11月20日にトゥールーズでもう一度フランス代表に挑む。