2021年春に初招集された。それ以来、今回で3度目の日本代表合宿への参加だ。
髙橋汰地(たいち/トヨタヴェルブリッツ)が7月2日におこなわれるフランス代表戦(第1テスト)で、初キャップを狙っている。
ベンチスタートながら、23人の出場登録選手の一人となった。
試合前日(7月1日)、ホームの豊田スタジアムでの練習を終えて記者会見に出席した。
「昨シーズンから(日本代表の活動に)参加させてもらっています。しかし、(試合に)出られない悔しさを何回も味わってきました。いつ(出場メンバーに)呼ばれても良いパフォーマンスができるように毎回準備をしてきましたが、それはなかった。悔しい思いをしていました」
巡ってきたチャンスは、現在世界ランキング2位の強豪・フランスが相手だ。高い壁に血が騒ぐ。
「今回、リザーブですがメンバーに入ることができた。相手は凄く強いチームで、プレッシャーがかかる試合になると思いますが、楽しみでワクワクしています。出場できたら地元での初キャップ。そんな機会を与えてもらい、感謝の気持ちでいっぱいです」と初々しい。
昨年初夏の欧州遠征で2試合(ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦、アイルランド戦)を戦った日本代表。秋は大分でオーストラリアと戦い、ヨーロッパでアイルランド、ポルトガル、スコットランドと対戦した。
チームは試合を重ね、ライバルたちは経験を積む。しかし自分は、その5戦で一度もメンバー入りができなかった。
この初夏の活動でも日本代表の合宿に呼ばれたものの、代表組の初戦となったウルグアイとの第2テストマッチではお呼びがかからなかった。
そんな中、NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)の同ポジション、根塚洸雅(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)や竹山晃暉(埼玉パナソニックワイルドナイツ)が先に代表キャップを得たから複雑な心境だったことは想像に難くない。
しかし本人は、「悔しい気持ちはありましたが、そこにストレスを抱えたらよくない。気にせず、自分のできることをやるしかない」と集中し、日々の練習に集中した。
その結果、巡ってきたのがフランス戦出場のチャンスだ。
「結果を残さないといけないと、いつもと違うプレーをするのでなく、これまで通り。自分がしてきたプレー、選択をしたいと思います」
リーグワン2022の前半戦はケガで試合に出られない日々が続いた。
しかし終盤戦の6試合に出場して5トライ。そのプレーが評価されたからこそ、再び日本代表に呼ばれた。
自分の強みを理解して言う。
「フィジカルなプレーヤーがいる中で、スピードや走り負けないハードワークなど、そういう部分を出していきたい」
リーグワン元年、試合に出られない時期にはイメージトレーニングを重ねた。「外からチームの試合を見つめ、自分ならこうする」と頭に浮かべ、ピッチに立つ日に備えた。
足りない部分を鍛えるトレーニングにも取り組んだ。結果、プレーの幅が広がった。
フランス代表はダミアン・プノーを14番で起用する。32キャップを持つWTBは厄介な相手。しかし組織的に守り、簡単には走らせないつもりだ。
「スペースを与えたら好きに走られてしまう。うしろのFBの選手と、インサイドのCTBの選手とコミュニケーションをとって、間合いを詰めるとか、流して内に切らせるとか、細かく連係をとっていきたい」
コロナ禍やケガによってBKラインがなかなか定まらぬ状況でもあるが、「自分は自分の仕事をやるだけ」と集中力を高める。
「決定力のあるウイング、トライを取り切るウイングはたくさんいるけれど、トライをたくさんを取っても、トライをたくさん取られるウイングはダメ。そういうところは、ジェイミーさんも求めているところだと聞いているので、アタックだけでなく、ディフェンスや、外からの声や細かい判断でも、見せていきたいですね」
メンバー発表があった日、父(晃仁さん/神戸製鋼で活躍)に、待ち焦がれた日がやって来たことを連絡すると、「感動した」と返ってきた。
フランス戦でピッチに立ったら、持ち前の思い切りのいい走りで見る人の心を揺さぶりたい。