日本代表の主将として臨んだ最初の試合だった。
6月25日、福岡・ミクニワールドスタジアム北九州。HOで先発の坂手淳史が攻守で身体を張った。
パスコースへ駆け込み、フットワークと推進力で防御の隙間をえぐる。守ってはダブルタックルの一翼を担い、走者を押し返す。
世界ランクで9つ下回るウルグアイ代表に43-7と快勝した。かねて語っていた。
「皆、代表選手なので、自覚を持ってこの場にいる。(自身は)行動で示しながら(チームを)引っ張っていきたいです」
身長180センチ、体重104キロの29歳。埼玉パナソニックワイルドナイツの主将として、昨季のトップリーグ最終年度、今季のリーグワン初年度を制している。
ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチから重責を託されたのは、そのリーグワンの決勝を終えた翌日。こちらもファイナリストだった東京サントリーサンゴリアスのSH、流大とともに、オンラインミーティングへ招かれる。
「そこで…告げられました」
日本代表では、昨秋にも主将交代があった。同年春まで通算して約5年も務めたリーチ マイケルから、ピーター“ラピース”・ラブスカフニにバトンタッチ。そして今年は来年のワールドカップ・フランス大会に向け、指揮官は「日本人のリーダー」を作ろうと考えたようだ。
坂手は述懐する。
「チーム全員に同じ絵を見せられる、そんなリーダーが必要ということで。日本人特有の強さというものが大事。それを2023年に向けて作っていくうえで、日本人のリーダーは必要だと思います。いままでのリーチさん、ラピースさんといった素晴らしいリーダーともコミュニケーションを取りながら、日本人がドライブできるようにやっていきたいです」
6月3日、宮崎でキャンプイン。意識したのは文化の醸成と戦術の共有か。
2016年秋に発足の現体制は、首脳陣の打ち出す方針をリーダー陣が咀嚼(そしゃく)。抽象的な領域を含めた理想の選手像を体現しながら、全体を引っ張る。
坂手は「ジャパンラグビーがどういうものなのかを再確認したい。理解し、遂行できるように」。詳細については「(説明が)難しいですね…」としつつ、こう言葉を選ぶ。
「(日本代表は)一人ひとりが役割を果たすチームです。まずジャパンラグビーを理解するために周りとコネクションを取って、コミュニケーションを取るのが大事だと伝えていますし、コーチ陣からも伝えられています」
相方の流は、4日以降にコンディション不良がわかり6日の公開練習には不参加。7日には離脱した。6日の時点では坂手は「(流とも)連絡を取りながらやっています」と述べていたが、現状ではひとりで船頭役を担う。
「重圧はありますけど、あまり考えすぎずに自分らしくチームをリードしたい。僕よりも経験のある選手に助けられながら、いろんなことをやっていきたいです」
7月2日、9日には、愛知・豊田スタジアムと東京・国立競技場で世界ランク2位のフランス代表とぶつかる。
今度のツアーにおける最大のターゲットを直前に控え、坂手は「(課題を)修正して来週に向かいたい」と話す。