先頭に立つ。仲間を引っ張る。齋藤直人は宣言する。
「まずは、チームをドライブできるように」
6月3日から宮崎で合宿をしていたラグビー日本代表は、25日、福岡・ミクニワールドスタジアム北九州でウルグアイ代表戦に挑む。
18日の東京・秩父宮ラグビー場での同カードには、予備軍にあたるナショナル・デベロップメント・スコッドのメンバーが挑んでいた(〇34-15)。
今度の一戦は、本隊にとって今夏初のテストマッチ(代表戦)だ。先発となったひとりが、SHの齋藤である。
昨年、初の日本代表入り。スターター定着へ、攻撃を担当するトニー・ブラウン アシスタントコーチからこんなレビューを受けていた。
「お前は他の誰でもない。自信を持ってプレーしろ」
所属する東京サントリーサンゴリアスでも定位置を争う流大共同主将は現在、離脱中。2019年のワールドカップ日本大会も経験した熟練者を欠くジャパンにあって、齋藤は有形無形の存在感を示す。
「チームを引っ張る意識でトレーニングに臨んでいて。特に9番(SH)にはエナジーを出すこと、(全体を)前に出すことを求められている。(練習中は周りを)見ながら、疲れている時に声をかけたり、自分が先頭になって動いたりしています」
プレーでは、「オプション」になるよう意識する。
それまでは接点からのパスさばきのスピード、精度、運動量を持ち味としてきた身長165センチ、体重73キロの24歳。直近の国内リーグワンでは、多彩な攻め手を繰り出してきた。
長短を折り交ぜたキック、ラック周辺での突破、抜け出した味方へのサポート…。
「強みは何個あってもいい」
国際舞台でも同じようにしたい。
「9番(SH)もひとつのオプションになれ、相手の脅威になれとは、去年の遠征から言われていて。この半年間、それを意識しながらやってきました。今回も、特に敵陣ゴール前ではそこ(攻撃性)を求めているという話をされています。スペースがあれば走るし、スペースがなければ自分が味方のために(仕掛けて)スペースを作り出す」
このほど、司令塔団を組むSOの顔触れが変わった。
2019年のワールドカップに出た田村優、松田力也は、チーム方針やけがのため選外となった。
今回、宮崎入りした3人のキャップ数(テストマッチ出場数)は、山沢拓也が3、李承信、中尾隼太がそれぞれ0。田村の69、松田の29より少ない。
25日の10番は山沢。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチはこうだ。
「選手層を厚くすること、新しい選手が入ることは嬉しく思います。テストマッチの舞台ではプレッシャーがかかる。メディア、ファンからも期待も感じるでしょう。それに対して彼(山沢)はいい準備をしていくと思う」
6キャップの齋藤も、新顔の多いSO勢との関わりについて聞かれる。慎重に言葉を選ぶ。
「アドバイスができる立場ではないですけど、たくさんコミュニケーションを取って、いまのところうまくやれていると思います。(プレー中の)コールとかについて聞かれれば、わかるところは答えています」
7月2日、9日にはそれぞれ愛知・豊田スタジアム、東京・国立競技場で現欧州王者と戦う。世界ランクで8つ上回る2位というフランス代表とのバトルは、2023年のワールドカップ・フランス大会の行方を占う意味でも注目される。
ただしいまの段階において、齋藤はこう話すのみだ。
「まずはウルグアイ代表戦のことを考えています。いまは」
地に足をつけているのだ。ただ、こうも応じた。
「(今年の)シックスネーションズでも優勝した国と戦えるのは楽しみです。経験に勝るものはない。(フランス代表戦のような)高い強度のなかでプレーすることで――何が(得られるか)と言われるとわからないですが――成長することは間違いないです」
日ごろノートの記帳や読書を習慣とする。常に内省を怠らない。主体的にリーダーシップを取るウルグアイ代表戦からも「成長」の種を見つけ、次のバトルへ活かすだろう。