有言実行だった。
6月11日、東京・秩父宮ラグビー場。埼玉パナソニックワイルドナイツの竹山晃暉は、トンガ出身者らとの慈善試合に「エマージング ブロッサムズ」のWTBで先発した。
敵陣ゴール前まで攻め込んでいた後半3分、FBの尾崎晟也が防御を攻略。ラストパスを放つ。
受け取ったのは竹山だ。持ち場の右タッチライン際で球を得て、目の前のスペースを通過。自身のトライなどで、スコアを24ー7とした。31-12で勝利後、会見で述べる。
「僕自身、『トライを獲れるチャンスがあったら獲ります』と宣言して試合に臨んでいたので、トライチャンスをものにできたのはよかったところです。ただ前半のチャンスがあるところでボールをもらえないシーンがあった。そこは修正し、次に向けて準備していきたいです」
今度の「エマージング ブロッサムズ」は、ナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)により編まれた。NDSとは日本代表の予備軍。18日に秩父宮であるウルグアイ代表とのテストマッチへも、NDSのメンバーが挑む。竹山はこの日も先発し、代表デビューを飾れる。
かたや本隊の日本代表は目下、宮崎にいる。25日以降にあるウルグアイ代表(第2戦)、フランス代表との計3試合を見据える。18日を経て解散するNDSからも、数名は宮崎組に合流できる。竹山にとって、いまはアピールの絶好機にある。
焦点は空中戦だ。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いる日本代表は、チームが多彩なキックを繰り出す。そのため弾道を追うことの多いWTBの選手には、ハイボールの捕球技術を求める。球の落下地点で相手に競り勝つ技術、身のこなし、バネがある選手は主力入りに近づける。
そのため竹山も、11日の試合では「しっかり(上空で)競り合うことにフォーカスしていました」。海外出身者との空中戦について、こう所感を述べる。
「(さまざまな)ボールの軌道(への対処)、足りないスキルの部分もある。(ハイボールを)獲得できる選手かどうかがジャパンに上がるひとつの要因になると思うので、引き続き準備したいです」
求められる動きを身に付けようとするかたわら、自らの長所もアピールする。
身長175センチ、体重84キロの25歳は、奈良の御所実、帝京大のエースだった折から、「チャンスの時の声かけと、ボールをもらう時のポジショニング」を強みとしていた。
2021年には、当時あったトップリーグ最終年度では6度、ゴールラインを割り、新人賞を獲得した。国内タイトル2連覇に喜んだ今年のリーグワンでも、レギュラーシーズン、プレーオフを通して11トライをマークした。
直近のシーズンで目立ったのはインターセプト。味方防御の立ち位置、投げ手の視線を見て繰り出し、それをスコアにつなげた。「ギャンブルではない」と胸を張る。
際立つ資質にはほかに、コミュニケーション力が挙げられそうだ。
昨年6月12日、欧州遠征を控えた日本代表が「JAPAN XV」と銘打ち壮行試合を実施している。対戦相手となったサンウルブズは、準備期間が約1週間程度という即席チームだった。さらに、そこへ竹山が追加招集されたのはゲームの3日前になってからだった。
ところがサンウルブズのスタッフいわく、竹山は「あっという間にチームになじんだ」。果たして当日、連携攻撃のフィニッシュを飾る。スタンドを沸かせた。
本人はこう話したことがある。
「自分の強みは、コミュニケーションの部分であまり気負いしないことというか。たくさん、いろんな人としゃべる人だと思います! それでチームに溶け込めていたかはわからないですが、サンウルブズは迎え入れてもらった形で楽しかったですし、1試合で学べること、経験できることはありました」
今度のNDSでも、素早くチームの輪に加われた。今回、宮崎組への「昇格」が叶った折も、そのスタンスを貫くだろう。