ラグビーリパブリック

釜石SWがリーグワン初年度を振り返る。「ここにある理由」を来季も示したい。

2022.06.13

3月12日におこなわれた最初のホストゲーム(撮影:西条佳泰)

 目標は達成できなかったけれど、登壇者は一様に、戦い抜いたこの1年を前向きに捉えていた。

 釜石シーウェイブスは6月3日、リーグワンシーズン終了報告記者会見を開いた。
 桜庭吉彦GM、坂下功正総監督、須田康夫HC、小野航大主将が出席。リーグワン初年度を振り返った。

 当初目標に掲げたのはディビジョン2で3位以上。結果5位に終わった。
 本来であれば下部(ディビジョン3)との入替戦に進む予定も、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪のD3降格と宗像サニックスブルースの休部によって、今季入替戦に進むのは最下位の1チームのみとなった。レギュラーシーズンを終えた時点で、釜石は来季もディビジョン2で戦うことを決めていた。

 小野主将は「なんとか残留を決めることができてほっとしています」と正直な思いを吐露する。
「昨年と違って非常に高いレベルのリーグで戦え抜けたことは、チームとして大きな成長につながりました」

 ほとんどの試合で大差をつけられて敗れた。順位決定戦までに掴んだ勝利はひとつだけ。最下位のスカイアクティブズ広島に30-3で勝った。だが順位決定戦では、その広島に20-21で敗れる。日野レッドドルフィンズとの対戦を残し、入替戦に進むことは濃厚に映った。今季、日野には17-56、7-55と大敗していた。
 だが最後の最後に意地を見せる。22-19で破ったのだ。先へ先へと得点を重ね、ついに逃げ切った。

 須田HCは選手たちを称する。
「苦しい状況は続きましたが、その中でも選手たちはもがいて、もがいて最後に自分たちのあるべき姿を見せてくれました」

 チームは今季、スローガンに「REVIVE(=復活する・よみがえる)」を掲げていた。
「釜石ラグビーの復活という意味も込められています。全員が立ってプレーする、最後まで諦めない。そうした釜石のラグビーの真髄をやり切れたと思っています」(須田HC)

 小野主将はシーズン途中で眼底骨折のケガを負いながら、チームのかじ取りを続けた。
「シーズンを通してチーム力が上がるように、どういう結果でもぶれず、チームがやるべきことをやり続けられるようにと意識していました。最終戦は、ディフェンスで粘れたり、日野よりもリアクションが速かったりと、1年間通してREVIVEがもっとも体現できたゲームでした」

「今まで戦っていたリーグ(トップチャレンジ)とは全然違うコンタクトレベルを経験できたのが大きかった」と話す。
「身体へのダメージもやはり大きく、けが人も多く出してしまった。ただぶつかり合いはラグビーの根本。そこで対等に戦うためにも、そのレベルに慣れることが一番でした。このスタンダードを知った上で来季戦えることをポジティブに考えています」

 首脳陣は来季に向けた準備も進めている。「来季はさらにレベルが上がるリーグになると思う」と小野主将も警戒を強める。

 そんな中、今季限りでチームを退団する選手は17名にものぼった。そこには20代の日本人選手や主力で活躍した海外選手も多く含まれていた。大量に選手が入れ替われば、チームカルチャーの醸成やチーム力の向上は難しい。
 ただし、今回の退団は「個人の事情でチームを去る選手もいる」と桜庭GMは説明。ケガで現役引退を余儀なくされた選手、社業専念を含めたセカンドキャリアを考えた選手が多くいたという。

「長い期間、チームに貢献してくれている選手は大事です。ただ個人の考え方を尊重しつつ、強化、発展するために、どのような形が最適なのかを試行錯誤しながら取り組んでいる。(今回の退団についても)チームを良くするためのチーム編成だと前向きに捉えています」

 補強ポイントとして、坂下総監督は2㍍越えのチャールズ・マシューが抜けたLO、そしてWTBを挙げた。
「スクラムやラインアウトなどFWの強さを出せないと、このリーグでは戦えないと思っています。BKでも得点の取れるフィニッシャーを補強したい。今季を振り返ると、得点パターンが少なかった。ディフェンスの強化もしないといけません」

 再び寒い時期でのチーム強化、そしてリーグの開催が予定されているが、環境面の整備は進んでいる。選手が所属する各企業の配慮によって、温かい日中にトレーニングをおこなうことができているのだ。

 試合運営でいえば、釜石は寒さと雪の影響を考慮して、鵜住居復興スタジアムでのホストゲームを3月以降に5試合開催できた。観客動員数は平均943人と、目標の2000人からは遠ざかったが、ファンクラブの会員数は伸びていると桜庭GMは言う。前年比で20㌫ほど増加し、現在は約2300人が入会しているそうだ。

「県外の方(の入会数)が伸びたのが顕著でした。逆に、釜石市民や岩手県の方々とはコロナの影響でなかなか接点を増やせなかった。今後は地域の方々と一緒に何かに取り組んだり、行事に参加したりと、より身近な存在でありたい。それがファンクラブの増加につながり、集客にもつながると考えています」

 リーグワン加盟チームで唯一、東北に居を構える。
 小野主将もそのことを強く意識する。

「このチームがここ(釜石)にある理由がシーウェイブスにとってすごく大事なこと。岩手で戦って東北を元気にしたい。このベースをしっかりと新しく来る選手にも伝えていきたい」