東京都ラグビー協会に加盟する国公立大学のラグビーNO.1を決める「2022年度国公立大学体育大会」。決勝戦が6月11日、東京学芸大グラウンドで行われ、2018年から大会連覇中の王者・東京学芸大と初の決勝進出となった東京都立大が対戦した。
試合は後半43分、都立大がサヨナラドロップゴール(DG)を決めて19-17で栄冠を勝ち取った。学芸大はこの大会での試合の連勝記録は7で途絶えた(2018年、19年と連覇。2020年はコロナ禍で中止。昨年は交流戦のみ実施)。
試合は後半17分から動いた。前半を学芸大が2つのトライで14-13と1点差リードで折り返していた。
就任3年目の都立大・藤森啓介ヘッドコーチは、ハーフタイムの円陣で「前半はキックチェイスが緩かった。みんなが優勝したいなら、言われているポイントをひたむきにやれるかだね」と送り出した。
エリア取りのキック合戦が続く。都立大がキックを蹴り込み、ボールを持った学芸大FBでゲームキャプテンを務めていた岡田喬一(3年、桐蔭学園高)にからんだ。ノットリリースの反則を得た。このペナルティゴール(PG)を都立大FB松本岳人(大学院1年、所沢北高)が左足で冷静に蹴り込み、成功。16-14と逆転した。
岡田は語る。「相手を分析した時にキックチェイスがないとわかっていた。カウンターを狙った」。
次に動かしたのはその岡田だ。37分、都立大陣で攻めると、都立大のCTB松川拓矢(4年、桐光学園高)がオフサイド。キッカーを担う岡田も冷静だった。約30メートルのPGを成功。17-16と再び1点差のリードへ。残り時間は5分、両チームベンチから声がかかる。
学芸大キッカーは「50:22キック」の新ルールで都立大陣へ入りラインアウトを得ようとキックを蹴り込む。しかし、反対に敵陣でラインアウトを奪ったのが都立大。蹴り込んだボールが学芸大バックスの間に落ち、処理ミスで都立大ボールになった。
41分、都立大はラインアウトからモールでゴール前5メートル手前まで進むも、モール内で反則。学芸大スクラムに変わる。学芸大バックスから「攻めよう」という声がかかる。ゴール前で回す。都立大SH齊藤遼(4年、八王子学園八王子高)がタックル。ラックになり今度は学芸大がノックオンしてしまった。43分、都立大のスクラム。スクラムを押しペナルティをもらう。スクラムからボールを受けたCTB松川がDGを狙った。低い弾道のキックはバーを越えた。19-17、後半3度目の逆転で都立大に歓喜の時間が訪れた。
殊勲の松川は話す。「岳人さんが蹴る予定が僕のところに来た。アドバンテージが出ていたので外しても大丈夫。蹴りました。入りました。自分のオフサイドで3点を取られたので取り返そうと思っていました。まさかチャンスが来るかと」。笑顔だった。
前半開始直後は学芸大がビッグチャンスを作りそうな勢いだった。ボールを持ったランナーたちが個々の能力でラン、都立大のディフェンスを振り切っていた。ラインアウトも学芸大は2019年度全国高校大会(花園)で優勝した桐蔭学園出身の190センチLO安達航洋(3年)と、兄で大学院1年の187センチLO拓海のツインタワーで圧倒を狙っていた。しかし、都立大は愚直に昨年から取り組んでいるタックルを繰り返して守る。ラインアウトも敵ボールを奪う。学芸陣へ入るとからんで3分にノットリリースの反則、12分は学芸大のラインオフサイドを誘発し、松本が2本のPGを決めて6-0とした。ここから学芸大も反攻する。16分、自陣でルーズボールを拾ったCTB片岡正太(1年、都青山高)が走り切り左中間へトライ、岡田のコンバージョン成功で7-6と逆転した。38分には都立大が自陣ゴール前のマイボールスクラムで反則。学芸大はタップして左へ攻めると、左PR宮崎怜嗣(1年、県川和高)が仕留めた。コンバージョン成功、14-6で前半を折り返すと思われた。
しかし、都立大が粘る。「自分たちの勝っているところはスクラム、ラインアウトモール、エリア取り。シンプルに勝っている土俵に相手を連れてくるかが勝負のポイント」と予想した藤森HC。43分、敵陣右ラインアウトをモールで押し込み、HO高尾龍太(4年、府高津高)がインゴールへ置いた。結果的に前半を14-13で終えたのが後半につながった。
この試合、学芸大のFB岡田は「(後半の最後で)1点差を守り切れなかった自分たちの気持ちの部分。準備の段階で細かいところまで詰めていれば圧倒できる試合だったと思う」と悔やむ。
両校とも学生が主体で部活に取り組んでいる。学芸大の岩本悠希監督は「プレーヤーの一人ひとりは、負けないと思っていた。しかし『勝ちたい気持ち』が無かったのかも」と選手の心を分析していた。「都立大がディフェンス、アタックと自分たちの強みをいかそうとやってきた。受けてしまった」。
都立大主将のCTB青木紳悟(4年、県川和高)は「フォワードがスクラム、ラインアウト、モールとすべて有利に進めてくれた。後半はできるだけ自陣でボールを持つ時間を少なくすることにフォーカスしました。自分として初めての決勝戦、初めての優勝に気持ちが追いつかない」と仲間に感謝、気持ちは正直だ。支えている4年生マネージャー大沢こころさんは「4年は春、部を残すために新入生勧誘がメインだった。ラグビーに集中できない環境だったと思います。(優勝は)形に残せるものを同期に作れて良かった」。
連覇を逸した学芸大。今秋は全国地区対抗の関東1区で続く優勝を守り正月、全国大会へ臨む。そして2019年度以来、3季ぶりの全国制覇を目指す。
「ボールキャリアーの1人が簡単に抜けてしまうのでそこに頼っているところがある。もっと組織で崩せるように、組織で相手のアタックを止めることができるようにする」(岩本監督)。課題は見えている。
【お知らせ】
東京学芸大が新入部員を募集しています。学芸大で楕円球に触れたい新1年生の皆さんはラグビー部HPから連絡をお願いします。
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