ラグビーリパブリック

今季本格的にブレイク。中尾隼太が日本代表に入って嬉しい理由。

2022.06.08

日本代表に初選出され宮崎合宿に参加中の中尾隼太(撮影:松本かおり)


 足元を見つめる。

 東芝ブレイブルーパス東京の中尾隼太が日本代表となった。

 5月9日に初めて同代表の候補選手になったのを受け、「まだ始まってもないので、いまやるべきことをやる」。当時はリーグワンのプレーオフに挑んでいた。得られた立場と自己評価とのギャップもあったようで、感想を求められてもこの調子だった。

「僕自身、やらないといけないことがいっぱいあって、(代表候補入りを)素直に喜べるような余裕がなかったというのが(思いの)ひとつです」

 身長175センチ、体重86キロの27歳。異色のキャリアで知られる。

 公立校の雄として知られる長崎北陽台高を卒業後、鹿児島大に進学。多くのエリートが関東、関西の強豪大で揉まれるなか、教師を目指しながら九州学生リーグ1部に参戦していたのだ。

 大学4年時に入った九州学生選抜でのパフォーマンスが関係者の目に留まり、当時のトップリーグ行きを決めた。リーグワン元年にあたる今季は、10番のSO、12番のインサイドCTBといったゲームを動かす位置で実戦17試合中16度、出場した。週の前半には、ジョー・マドック アシスタントコーチ、ティム・ベイトマンと攻撃のプランについて打ち合わせた。その内容を仲間にプレゼンした。

 グラウンド内外での存在感が、徐々に代表サイドへと伝わったのだろうか。ブレイブルーパスの試合の中継で、ちょうど解説を務めていた藤井雄一郎ナショナルチームディレクターにその日の「注目選手」として中尾が紹介されたことがあった。当の本人はこうだ。

「もちろんラグビー選手なので、そこ(日本代表)でプレーしたいという思いはあります。必要なパフォーマンスをすれば自ずと開かれる」

 足元を見失わなかった結果、代表の座についたのだ。5月の候補入りの時点で、たくさんの知り合いから連絡をもらった。「やらないといけないことがいっぱい」と驚きつつ、こうも感じた。

「自分の生きざまで周りの人たちを幸せにできるのは、嬉しいことだなと」

 候補選手の多くは6月3日までに日本代表、ナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)に振り分けられ、それぞれ宮崎、大分で汗を流す。

 SOの位置では、2019年のワールドカップ日本大会でレギュラーだった田村優がNDS側に回り、山沢拓也、李承信、中尾といったキャップ1桁台、もしくはゼロの3選手が日本代表に入っている。

 若手にとっては、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチのおひざ元で爪痕を残すチャンス。興味をひく「生きざま」でその立場をつかんだ中尾は、指揮官に「10、12番ができ、東芝でもいいパフォーマンスをしていて、リーダーとしても素晴らしい。中村(亮土)がけがをした位置(12番)に入る可能性もある」と期待される。

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