ライナーズの先輩でもあるタウファ統悦さんに打診されて「はい」と即答した。
「SHが足りないんだ。協力してくれないか」
5月中旬のことだった。先輩は、トンガ・サムライXVのFWコーチ兼チームマネージャーを務めている。
6月7日、トンガ・サムライXVのメンバーに入った人羅奎太郎（ひとら・けいたろう／花園近鉄ライナーズ）が報道陣のインタビューを受けた。同チームは6月11日にエマージング・ブロッサムズ（ナショナル・デベロップメント・スコッドの選手たちで構成／日本代表候補）と戦う。
1月に海底火山の大噴火により、甚大な被害を受けたトンガ王国への支援を目的としたチャリティーマッチだ。
シーズンを終えて2週間ほど経っていたが、人羅はトレーニングを継続していた。
「普段では経験できないこと」へ踏み出す決断に時間はかからなかった。
周囲は全員、トンガに由来のある人ばかり。最初は「トンガと関係があるのでは？」と噂された。
「統悦さんに、『ひいおじいちゃんぐらいがトンガ人かな。知らんけど、ってつけとけば大丈夫』とアドバイスをもらいました」と笑う。
「みなさん優しくて、いろいろ教えてもらっています。いい雰囲気に溶け込めています」
いろんな場面で、みんながトンガの歌を歌い出す。お祈りの時間。経験のないことも多く、すべてが興味深い。
知らなかったトンガのカルチャーを学び、人生が豊かになりそうだ。
選手たちが集合したとき、チャリティーマッチの意義について、チームの団長やコーチ陣から話があった。
災害時に届けられた日本からの支援。今回の試合開催へ向けて尽力してくれた人たちのこと。誰か一人でなく、みんなで力を合わせたから試合が実現すること。
「感謝。チームで、その気持ちを示していこう、と。僕も、それを伝えられるようなプレーをしたい」
個人的には、実力をアピールする場にもなる。「チャンスが回ってきたな、と感じます」と言う。
「遠いところにあったジャパンにアピールできるチャンス。（代表候補に）食い込めるようなプレーをしたい」と意欲を見せる。
「パワープレーもできますが、チームはテンポを上げてプレーすることもテーマにしています。そこで自分の役目を果たしたい。いい状況判断もして、ウラのスペースにキックも蹴りたいと思っています」
レメキ ロマノ ラヴァのスペース感覚、ナエアタ ルイのパワーにも注目してほしいと話す。
花園近鉄ライナーズでは、世界的SHのウィル・ゲニア（豪州代表キャップ110）と同じ時間を過ごし、「チャレンジし続ける」ことの大切さを学んだ。
「失敗して、次に思い切ってプレーできなかった時に、ミスしてもいい。仲間がカバーしてくれる。チャレンジを続けることが大事、と言ってくれました。否定することなく、いつも肯定から入る人なので、いろいろと教わっています」と話す。
その成果を、屈強な男たちに囲まれてプレーする試合で発揮したい。
感謝と応援の気持ちが充満する試合を、多くの人たちの記憶に刻まれるものにする。