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関東高校大会、流経大柏が國栃に逆転勝利ほか、1日目全14試合をリポート

2022.06.05

國學院栃木を破り、喜ぶ流経大柏(撮影:福島宏治)

 関東1都7県の上位校が集い7ブロックに分かれて戦う、関東高校大会の1回戦が6月4日に行われた(25分ハーフ、5日に決勝と3決/場所は非公開)。全14試合の模様を、ショートリポートと写真でお届けする。

PHOTOS◎福島宏治

Gブロック➀
明大中野 66-0 勝田工

 東京6位の明大中野は、序盤からコンタクト局面で勝田工(茨城3位)を圧倒。1分にカウンターアタックから崩したSO長橋駿主将③のトライを皮切りに、前半だけで6トライ。村上友基は幾度もボールキャリーで前進し、チャンスを作り続けた(25分、後半4分には自らトライ)。後半も4トライを加え、WTB平野凌大②はハットトリックを達成。CTB佐藤大斗②ら控え選手も好プレーを連発した。勝田工は24年ぶり出場も、なかなか好機を見出すことができなかった。

明大中野
勝田工業

Gブロック②
東海大浦安 30-0 作新学院

 開始2分でDGを挙げた東海大浦安が、9分のラインアウトモールからのトライなどを足がかりに、着実にスコアを積み上げた。東海大浦安は創部4年目、初出場ながら着実なチームづくりを伺わせた。初めての大舞台に臨むため、先発にはタックルの得意な選手を起用するなど、「25分ハーフと時間も短い中、チームの実力が発揮できるように」(西川壮一監督)戦術も工夫。入念な準備が、開始からの思い切ったプレーにつながった。名門・作新学院は、関東大会出場は15年ぶりだった。一人ひとりのキャリーは力強く、なんとか突破口を見出そうと奮闘した。ブレイクダウンの強さ、技術が届かず相手にボールを奪われるシーンが悔やまれる。

東海大浦安
作新学院

Fブロック➀
東海大甲府 14-5 佐野日大

 50分間、拮抗した展開となった。先制トライは9分、東海大甲府。CTB相川将唯③が防御網を破り、インゴールに入った。対する佐野日大は反則こそ重ねたが、出足鋭いディフェンスで粘る。FL大川哲眞主将③はゴール前でジャッカルを決めるなど要所で光った。13分にはモールから1本返し、前半を5-7で折り返す。後半も一進一退の攻防は続いたが、じわじわとアタックを重ねた東海大甲府が13分、ついに追加点。これが決勝点となった。NO8渡邉文太③は攻守に存在感。一方の佐野日大はFB佐川大樹③がキック処理やランで奮闘するも、勝利を手繰り寄せることはできなかった。

東海大甲府
佐野日大

Fブロック②
早稲田実 22-7 深谷

 早実は、明大中野などを破って東京都5位で出場、関東の舞台で力のあるところを見せた。メンバーリングは3年生の先発5人の若い編成。HB団は宮下②、山口①がコントロール。FB池本晴人主将③らがバックアップし、後半にリズムを掴んで一気に得点を重ねた。早実は後半半ばまでの時間帯にさらに1年生を3人投入するなど、フレッシュな戦力起用を貫いた。一方の深谷は、前半からしっかりと体を当てていく真面目さが目を引いた。後半23分には連続攻撃からCTB野口彰太③がインゴールを越えて一矢、最後に7点を返した。他校同様、学級閉鎖などが続いてチームづくりは遅れたが、個々のコンタクトと前に出続けるディフェンスでは成果を感じさせた。

早稲田実
深谷

Eブロック➀
明和県央 17-3 清真学園

 明和県央が序盤からコンタクト力のあるFWを主体にしてペースを掌握。敵陣深くでのラインアウトでミスを重ねるなど、なかなかスコアを奪えなかったが、12分、19分に連続トライで前半を10-0で折り返す。一方の清真学園は3年生がタイトファイブの5人のみと若い布陣も、後半の序盤は敵陣で深くで相手を釘付けにする。ただ、父が和田健一監督のSO和田健太郎②らを中心に攻撃を組み立てたが、11分のPGで差を縮めたのが最後のスコア。直後に、体の強さを見せていた明和県央のNO8、笹本友輪主将③が2トライを挙げて勝負を決めた。

明和県央
清真学園

Eブロック②
法政二 22-7 成城学園

 個性的なチームの激突で、会場が熱気に包まれた。法政二が後半20分にPGを沈め、15点差に突き放すまではまったく予断を許さない勝負。法政二の意図的なBKアタックと、FWの運動量で最後に違いを見せた。法政二は後半に入ってフロントローがより活発にボールに絡んでいったのが印象的。勝負どころの場面で、自陣ディフェンスから切り返し、取り切ったトライは鮮やかだった。192㌢のFB平野仁③などタレントも光る。成城学園も184㌢のCTB吉田有佑③、NO8舩越乙夢(とむ)③ら、サイズと機動力を兼備した好選手が躍動。潜在能力の高さを感じさせた。

法政二
成城学園

Dブロック➀
目黒学院 24-19 慶應

 和田康二新監督率いる慶應が、先制トライこそ許すも、ほとんどの時間を自分たちのペースで戦った。前半22分にはCTB脇龍之介②のトライで点差を縮め、後半4分に12-7と逆転。一度は追いつかれるも、PR恩田優一郎主将③のトライで再び引き離した。だが最後に勝ち星を挙げたのは目黒学院だった。先制トライのモールで自信をつけ、後半の3トライも数少ないチャンスをすべてモールでものにした。終盤は中盤エリアからでも前進し、チャンスメイク。後半23分には22㍍線外側からモールで走り切って逆転トライを奪った。

目黒学院
慶應

Dブロック②
日大明誠 17-7 熊谷工

 日大明誠が名門を撃破、地元・山梨私学勢の底力を見せた。日大明誠は35年ぶり4回目の出場で、「初出場のようなもの。この舞台では、とにかく自信をつけてほしかった」と金田真幸監督。金田監督は社会科の先生で、自身は陸上競技中長距離出身、ラグビー経験はない。部員47人(うちマネージャー11人)の明誠は身体能力の高い熊谷工にもフィジカルで奮闘し、後半2トライ1Gを挙げ逆転勝利を収めた。集中力あるアタックが後半に実ったが、起点はディフェンスだ。後半11分に15-7(G成功で17-7に)と突き放したトライも、自陣で守り粘ったターンオーバーからの一撃、FB柏崎竜希③が走り切った。

日大明誠
熊谷工

Cブロック➀
東京 34-14 専大松戸

 東京は序盤にミスを重ねて先制トライこそ奪われるも、一つひとつの接点を制し、前半だけで3トライ逆転。スクラムで圧倒し、幾度も力強いボールキャリーを見せた左PRの清水栞太③(本職は右PR)は、後半4分にトライも挙げるなど活躍した。後半、さらに3トライを追加して勝負を決めた。敗れた専大松戸は、前半4分にSH奥野裕次郎③がラックサイドに仕掛けて先制。後半はゴール前で粘るディフェンスも見せ、後半22分にはSH奥野がスクラムからのラインブレイクでスコアを縮めるなど一矢報いた。

東京
専大松戸

Cブロック②
桐蔭学園 63-0 川越東

 2年生6人、1年生2人を先発起用した桐蔭学園は、7分、9分、12分と着実に加点して早々に勝負を決めた。HB団は後藤、丹羽の1年生コンビ。後半もSH、FLに1年生を入れてチームの経験値を蓄えた。桐蔭学園は、一人ひとりのコンタクト際の動作が強く、しなやか。もはや伝統の域にある個人戦術が試合の安定感を生んでいる。展開し、取り切る場面でのパスの長さ、走り込むスピードなど、仕留めの場面にもスキはなく、全国上位レベルの片鱗をうかがわせた。「1年生、がんばってましたね」とは試合後の藤原秀之監督。1年時からのエースである矢崎由高③ら抜きでクオリティを見せつけた。川越東も、1対1のディフェンスの局面では、簡単に弾かれず、足がよく前に出ていた。相手攻撃を寸断し自陣深くで相手の反則を引き出す場面もあった。「2人目、3人目の動きの質に違いがある」と望月雅之監督。

桐蔭学園
川越東

Bブロック➀
茗溪学園 45-10 昌平

 選抜大会を欠場した茗溪学園にとっては、貴重な公式戦の機会。だが立ち上がりにはキックチャージに遭い、モールからCTB平岡勝凱③にトライも奪われた。直後にキックチャージでお返しするも、直後のキックオフをノックオン。ピンチを何とか防ぎ、20分にようやくCTB田村優太郎②が中盤から走り切って逆転した。24分にはカウンターラックからの速攻でトライを奪うなど、リズムを取り戻した。後半はCTB田村が2トライ目を挙げるなど、茗溪の持ち味であるハンドリングラグビーがさく裂。4トライで突き放した。昌平は後半、序盤にPGで差を縮めることしかできなかった。

茗溪学園
昌平

Bブロック②
日川 27-5 桐生第一

「ここから0-0のつもりでいくよ。走るよ日川!」。日川12-5桐生第一で迎えたハーフタイムに主将・SH飯沼暖③の声が響く。言葉通りに後半15得点を加えた日川が、群馬1位の実力校に完勝した。前半はシーソーゲーム。10分に日川が、17分に桐生第一が一つずつトライを奪い、20分には飯沼主将がFWの勢いを生かし中央へのトライで勝ち越し、12-5に。後半は無失点で駆け抜けた。日川は主将以外にも、PR岸本侑也③(180㌢、103㌔)らがよく喋り、チームのエナジーを最後まで保った。桐生第一は、群馬県大会では決勝で明和県央を破って、春の県大会では初優勝でこの関東大会に出場している。

日川
桐生第一

Aブロック➀
東海大相模 15-14 國學院久我山

 県大会で桐蔭学園と引き分け、抽選でAブロックを勝ち取った東海大相模がドラマチックな展開をものにした。相模は1分、キックチャージからFL高橋尚大③が先制トライ。4分にもモールで、幸先よく2トライを奪った。一方の國學院久我山はキックゲームに持ち込まれるも、SO袖山遼平ゲーム主将③が互角以上に対応。好機を作り出すまではいかなかったが、前半終了間際に再三のゲインを見せていたFB阿部太一③がトライを呼ぶ(7-12)。
 後半も一進一退の攻防は続いたが、20分にようやくスコアが動く。久我山のWTB、中野竜之介②がインターセプトから値千金のトライ。Gも決まって14-12と逆転した。だが直後のキックオフでまさかのノックオン。その後のアタックでアドバンテージを得た相模は、22㍍線内右でPGを選択。野口柊③がこれを沈め、1点差勝利をものにした。

東海大相模
國學院久我山

Aブロック②
流経大柏 22-20 國學院栃木

「事情が違った、気迫が違った」。敗れた國學院栃木の吉岡肇監督がライバルを称えた。後半の後半は、互いの意地がぶつかり合う死闘。この日一番となった熱戦は、流経大柏が僅差で制した。前回花園3回戦と同じカード、その戦いを乗り越えた國學院栃木は全国準優勝を成し遂げた。流経大柏にとっては前回の関東大会A決勝(1年前)でも敗れている相手だけに、ハングリーさでは上回った。前半は、SO伊藤龍之介主将③がタクト振る国栃が支配したゲーム。前半は国栃17-8流経大柏で折り返したが、そこからが勝負だった。「自陣からラグビーをやりすぎていた」(相亮太監督)という流経大柏は冷静に、気持ちを抑えて、後半はシンプルに前進。リスクを避け、まずは敵陣へ入るファイナル戦術に切り替えた。後半3分にPGで12点差とスコアを広げられるが、9分、15分のトライで逆転、流経22-20國栃に。終盤に向かって集中力を高め、最後は中盤でブレイダウンで削り合う肉弾戦となって、これを制した。敗れた国栃は試合後、言葉なく落胆を顕(あらわ)に。「Aブロックに推薦してもらってるんだから、落ち込んでいられない。次に向かわなくちゃ」(吉岡肇監督)。周囲のマークは常に厳しい。國學院栃木は強豪としての試練とも戦っている。

流経大柏
國學院栃木

※大会の詳細リポート、ピックアッププレイヤーなどは6月25日発売の8月号にて掲載予定