ラグビーリパブリック

日本代表がいよいよ始動! 来年に迫ったW杯フランス大会へ向け、ウルグアイ&フランスとのテストシリーズに挑む。【J SPORTSで全試合生中継&LIVE配信!】

2022.06.02

昨秋のオーストラリア戦で初キャップを獲得したCTBディラン・ライリー。今季はさらなる飛躍が期待される(撮影/松本かおり)

 5カ月にわたり開催されたリーグワンもフィナーレを迎え、いよいよ2022年度の日本代表が決定した。ラグビーワールドカップフランス大会の1年前となる今シーズンの活動は、チームにとっても選手にとっても重要な意味を持つ。この夏のテストシリーズで対峙するのは、ワールドカップアメリカ地区予選を1位で通過した南米の実力者・ウルグアイと、本年のシックスネーションズで全勝優勝のグランドスラムを達成した世界有数の強豪フランスだ。リーグワンの熱闘を経て編成された今回のジャパンの注目ポイントと、6月末から7月にかけて行われるテストマッチ4連戦の見どころを紹介する。

堀江翔太が久々に代表復帰。10番とフィニッシャー争いにも注目

 5月31日に発表された日本代表の目玉といえば、何といっても2019年のワールドカップ日本大会以来2年8か月ぶりにスコッド入りを果たしたHO堀江翔太だろう。今年で36歳という年齢をふまえ、ここ2年はコンディショニングを優先して代表活動から離れていたが、リーグワンで初代MVPに選出されるなど卓越した活躍を見せ、満を持してのジャパン復帰となった。藤井雄一郎ナショナルチームディレクターも「彼は別格」と全幅の信頼を寄せており、久々に袖を通す桜のジャージーで、ワールドクラスのパフォーマンスを披露することが期待される。

 ポジション争いが楽しみなのは、ゲームコントロールを担うSOだ。昨秋の欧州遠征で先発を務めた松田力也が負傷によりメンバーを外れ、2019年大会の主軸である田村優もナショナル・ディベロップメントスコッドに回ったことで、ユース時代から将来を嘱望されてきた山沢拓也と、国立の鹿児島大学出身で攻守にバランスのいい中尾隼太、リーグワンで高いポテンシャルを示した21歳の李承信にチャンスが巡ってきた。それぞれタイプが異なる特別な才能を有する3人だけに、誰に10番を託すかはチームの進路を左右する重要な決断となる。

 もうひとつの激戦区は、国内有数のフィニッシャーがひしめくWTBだ。昨年すべてのテストマッチで11番を背負ったシオサイア・フィフィタを筆頭に、能力が高く複数ポジションをこなすゲラード・ファンデンヒーファー、リーグワンの最多トライゲッターに輝いた山下楽平、爆発的なスピードを誇るジョネ・ナイカブラ、トライの嗅覚とハイボールの強さが持ち味の髙橋汰地と多士済々で、先発の座をかけて熾烈な競争が繰り広げられるだろう。引退した福岡堅樹氏の後を継ぐ新しい切り札の誕生を、楽しみに待ちたい。

 戦術・戦略の面で注目されるのは、今季より新たに加わったジョン・ミッチェルディフェンスコーチの存在だ。ニュージーランド代表オールブラックスのヘッドコーチとして2003年のワールドカップに出場したほか、2018年から2021年まではエディー・ジョーンズ監督のもとでイングランド代表のディフェンスコーチも務めており、豊富な国際経験と確かな手腕に対する評価は高い。世界と戦う上で組織防御の整備はジャパンの生命線となるだけに、チーム力を次のレベルへと引き上げることが期待されている。
なお、キャプテンはHO坂手淳史とSH流大の2人が共同で務める。

2022年テストシリーズ幕開けの相手は、RWC2019で鮮烈な印象を残したウルグアイ

近年躍進を続けるウルグアイ。2019年のワールドカップではフィジーを破った
(撮影/山口高明)

 次に、今夏のテストシリーズの相手となる2国をチェックしていこう。まずは6月18日に秩父宮ラグビー場で第1戦、6月25日にミクニワールドスタジアム北九州で第2戦(ともに15時キックオフ)が行われるウルグアイから。

『ロス・テロス(国鳥のナンベイタゲリの意)』の愛称を持つウルグアイ代表といえば、思い出されるのは2019年のラグビーワールドカップ日本大会における釜石鵜住居復興スタジアムでのフィジー戦だ。171センチ、93キロの闘将FLフアン・マヌエル・ガミナラが率いるチームは、欧州の強豪クラブで活躍する名手をずらりと並べたフィジーに対し、迷いのないアタックとスピリットを感じさせるタックルで大奮闘。30-27の歴史的勝利を挙げ、大会序盤の一大トピックとなった。

 ワールドカップは過去1999年、2003年、2015年、2019年の4大会に出場し、通算成績は3勝12敗。来年のフランス大会は初めてアメリカ地区予選1位で出場を決めており、昨秋の欧州遠征でも敵地でルーマニアに14-29、イタリアに10-17と健闘してさらなるチーム力向上をアピールした。ちなみに日本代表の対戦成績は2勝1敗で、2005年4月のモンテビデオでの初顔合わせは18-24で敗れたものの、2015年のワールドカップ直前のテストマッチでは30-8、40-0とジャパンが連勝している。

 2019年のワールドカップ当時はメンバーの半数以上がアマチュアという構成だったが、現在はフランスやイタリア、アメリカのクラブでプロとしてプレーする選手が増加。スタイルはグラウンドいっぱいにボールを散らしてスピードとキレで勝負するラグビーを志向し、気迫に満ちたタックルと巧みなキックを大きな武器とする。ワールドラグビーの世界ランキングは19位で同10位のジャパンとは開きがあるが、決して侮れない相手であり、シーズン最初のテストマッチとして格好の試金石になるだろう。

いま世界でもっとも勢いがあるフランスとの2戦は、来年に向けての重要なゲームに

2019年大会はベスト8だったフランス。ホスト国として迎える来年のワールドカップに向け、順調に強化が進む(撮影/髙塩隆)

 そして7月2日に豊田スタジアム(15時キックオフ)、7月9日に国立競技場(14時50分キックオフ)で2テストを戦うのが、2022年のシックスネーションズ王者、フランスだ。これまでワールドカップで3度決勝に進出した国際ラグビー界のトップ国で、現在の世界ランキングは2位。来年に迫った自国開催のワールドカップに向け順調に強化が進んでおり、昨秋はニュージーランドから40-25の完勝を収めるなど、いまもっとも勢いのあるチームといえる。

 愛称『レ・ブルー』の最大の魅力は、シャンパンの泡にもたとえられる華麗なランニングラグビー。選手一人ひとりのひらめきをベースに、湧き出るようなサポートで次々とスペースへパスがつながるスタイルは、日本でも人気を博してきた。一方で国内リーグ『トップ14』のコンタクトの激しさはヨーロッパ随一と評され、世界屈指のスクラム強国としても知られる。かつては調子の波が大きいムラっ気のあるチームだったが、元代表主将のファビアン・ガルティエヘッドコーチ(HC)が就任した2020年以降は高い次元で安定してパフォーマンスを発揮し、好成績を残している。

 今回はトップ14の決勝(6月24日)が終わった直後の来日となり、長いシーズンの最終盤で疲労が蓄積しているプレーヤーも多いことから、ガルティエHCはコンディションのいい選手や若い選手を主体とした布陣で臨むことを明かしている。とはいえ現在のフランスラグビー界には才能ある若い選手が各ポジションで貪欲にチャンスをうかがっており、どんなメンバー構成になったとしても強力な相手であることは間違いない。ジャパンにとっては困難なチャレンジになるだろう。

 過去の対戦成績は10戦してジャパンの9敗1引き分け。まだ勝利はないものの、唯一のドロー(23-23)は直近の対戦となる2017年秋のヨーロッパ遠征時のゲームで、ジャパンのハイテンポの連続攻撃と出足鋭いシャローディフェンスの前にフランスは持ち味を発揮できず、ジャパンにすれば限りなく勝利に近い内容だった。

 もちろん現在のフランスは簡単な相手ではありえないが、ワールドカップで前回達成したベスト8以上のステージへ進むためには、このクラスのチームが具体的なターゲットになる。1年後の大舞台に向け弾みをつける上で、この2連戦の持つ意味は大きい。桜の勇士たちがトリコロールの猛者を振り回す痛快なゲームを期待しよう。

6、7月のラグビー日本代表戦 J SPORTSで全試合生中継・LIVE配信!https://www.jsports.co.jp/rugby/japan/

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