ラグビーの日本代表としても大きな功績をあげた15人制と7人制のレジェンドが、現役を引退することになった。豊田自動織機シャトルズ愛知が5月13日、2021-22シーズンをもって退団する選手・スタッフを発表。そのなかに、日本代表プロップとして歴代最多の78キャップを誇る畠山健介や、セブンズ日本代表としてオリンピックでも活躍した坂井克行の名前もあった。
プロ選手だった36歳の畠山は引退。33歳の坂井は社業に専念する。
宮城県出身の畠山は、仙台育英高校、早稲田大学を卒業して2008年にサントリーサンゴリアスに加入し、新人賞を受賞するなど1年目から活躍。トップリーグでは4度の優勝に貢献し、ベストフィフティーンには6回選出された。
2008年11月には日本代表デビューを果たし、ワールドカップ2大会出場を含め、通算78キャップを獲得した。これはLO大野均(98)、WTB/FB小野澤宏時(81)、CTB元木由記雄(79)に次ぐ歴代4位の偉大な記録である。2015年のワールドカップでは南アフリカ代表からの金星を含め、歴史的な3勝に貢献した。
畠山は活躍の場を海外にも広げ、2016年にはニューカッスル・ファルコンズに加入してプレミアシップ(イングランド最高峰リーグ)でも奮闘。2019年からはニューイングランド・フリージャックス(アメリカ)の一員として北米プロリーグのメジャーリーグラグビーで2季プレーし、「Flying Yokozuna(空飛ぶ横綱)」と呼ばれた。
そして、2021年に豊田自動織機シャトルズ愛知に加入し、日本ラグビー界に復帰。さまざまなけがも乗り越えた不屈の男は、今年3月6日の中国電力レッドレグリオンズ戦でシャトルズの3番をつけ、ファンを喜ばせていた。
引退を決意した畠山は、「1シーズンという短い時間でしたが、シャトルズの選手のみんなとラグビーができて最高に楽しかったです! 本当に素晴らしい時間を、ありがとうございました。ファンの方からもたくさん温かい応援をいただきまして、本当にありがとうございました!」とコメント。
そして、シャトルズから出されたリリースでは、ラグビーキャリアのなかで苦悩があったことも明かしている。2015年のワールドカップ後にトップリーグ開幕戦を迎えたが、それまで好きだったラグビーが楽しくなくなっていたという。試合に勝っても、タイトルを獲っても、空虚で全く満たされなくなったと振り返る。
「それでもシャトルズの選手のみんなと一緒にラグビーができて、またラグビーを好きになることができました。本当に感謝しています。ありがとうございます。ラグビーを通じて、良いこともそうじゃないことも、素晴らしい景色も涙でにじんだ景色も見れました! ラグビーをしていたからこそ出会えた人たちに感謝です。全てかけがえのない出会い、瞬間、感情、景色でした。本当にありがとうございました!」
そして、7人制ラグビー(セブンズ)のスターだった坂井克行も現役選手生活にピリオドを打った。三重県出身。四日市農芸高校、早稲田大学を卒業し、2011年から11シーズン、シャトルズに在籍していた。
シャトルズのセンター、ウィングとしても活躍した坂井だが、ファンにはセブンズのスペシャリストという印象が強いかもしれない。
セブンズ日本代表として歴代最多の62キャップを獲得し、キャプテンも務めた。世界の強豪と戦うワールドセブンズシリーズでは、通算204試合に出場し、73トライを含む825得点を記録している。得点・トライ数ともセブンズ日本代表歴代最多だ。
ワールドカップ・セブンズにも2大会(2013年、2018年)出場。
そして、偉大なオリンピアンでもある。2016年のリオデジャネイロ・オリンピックに出場し、優勝候補だったニュージーランドなどを倒して4位入賞の快挙を成し遂げ、日本の7人制ラグビーも世界で戦えることを証明した。
引退を発表した坂井は、「11シーズンという長期間にわたり応援していただき、ありがとうございました。振り返ってみると、試合に勝ったことやオリンピック出場などの『嬉しかったこと』よりも、試合に負けたこと、大事な場面でのミス、メンバーから外されたことなどの『悔しかったこと』の方が、より多く頭に浮かんできます。そうした悔しい思いを糧に『次は勝つ。もっとうまくなりたい』という覚悟を持って、現役生活に取り組んでまいりました。『もう一踏ん張り!』という思いもありますが、自分のイメージ通りのプレーができなくなり、引退する運びとなりました。ファンの皆様、職場、家族のサポート無しには、ここまでプレーを続けることはできませんでした。また、けがをしない身体を与えてくれた両親には、感謝の気持ちでいっぱいです。今日まで応援ありがとうございました。今後は、微力ながら、チームを応援してまいります。また、グラウンドでお会いしましょう!!」とコメントした。
そのほか、11年在籍したセンターの河合航(34歳)、8年在籍したセンターの大橋晋(30歳)とウィングの松井謙斗(30歳)、5年在籍したフッカーの磯辺裕太(27歳)、4年在籍したプロップの水野健(27歳)、2年在籍したスタンドオフ/フルバックの立見聡明(24歳)も現役引退し、社業に専念する。
外国出身選手では、ロック/フランカーのジョーダン・スマイラー(36歳)、スタンドオフ/フルバックのロビー・ロビンソン(32歳)、ロックのジャン・デ・クラーク(31歳)、ユーティリティバックのルテル・ラウララ(26歳)も退団することになった。